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アベノミクスとの付き合い方 一般国民への影響は?

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毎日見かける「アベノミクス」 その背景と実態

  「アベノミクス」という言葉を、連日新聞・ニュース・ネットで見かけることが多くなった。むしろ、なんらかのメディア上で、毎日のようにアベノミクスに関する記事・ニュースに出くわすといってもいいだろう。

  一般的には、昨年11月中旬に、民主党の野田佳彦前首相が衆議院解散を宣言した時点から、現在の円安・株高トレンドが続いているといわれるが、専門家の分析では、安倍政権誕生はたまたまタイミングが良かっただけで、昨年10月頃から、世界的な景気回復期待や欧州債務問題の鎮静化により、円安への転換と株式市場の底打ち傾向が出始めていたという見方もあるようです。

  いずれにしても、安倍政権が掲げる「デフレからの脱却・過度な円高の是正」という政策により、日銀への追加金融緩和の要求すなわち、インフレ目標2%設定(さらには日銀法改正議論の高まり)が、歴史的な円高水準から円安への反転を決定づけ、円安の進行が、輸出企業の業績改善期待を高めることにより、現在に至るまでの日本株式市場の活況につながっていることは疑いの余地はないだろう。

  衆議院解散・総選挙実施が決定した頃より、安倍自民党政権誕生がほぼ確実視されていたことで、日銀による大胆な追加金融緩和を期待して、円安と株高傾向が始まったが、当初はアベノミクスという言葉は使われず、「安倍トレード」「安倍ラリー」といった表現で為替や株式市場の活況を伝えるニュースがメディアを賑わせていた。

  その当時は、現在に至るまでの急速な円安進行と株高を予想した投資家はそれ程多くはなかったと思われ、安倍トレードはそう長くは続かない、円安も1ドル90円水準までは進行しないだろうと予想した向きも少なくなかったはずである。

  実は、筆者も約3か月という短期間でこれ程までの円安進行は想定しておらず、「安倍トレード」には、全く乗り遅れてしまった。相談者や顧客に対しても、最近の「安倍ラリー」には過度な期待はせずに、株式や投信等のリスク資産は、時機を見て徐々に利益確定する様アドバイスをしたくらいである。

学者やエコノミストの間でも分かれる「アベノミクス」に対する見解

  ご存知のように、安倍首相の大胆な金融緩和政策には、アドバイザーすなわち知恵袋がいます。著名な経済学者で、国際金融論の世界的な権威である浜田宏一イェール大学名誉教授である。

  浜田先生の主張は明快で分かり易く、「日本のバブル崩壊後の失われた20年においては、金融政策の失策がその大きな要因である」と言われています。つまり、「日本銀行による誤った金融政策が、日本のデフレ経済の長期化をまねいている」と明言されています。

  浜田先生はじめリフレ派といわれる学者やエコノミストの方たちは、大胆な金融緩和政策を実施して、マネタリーベースを拡大し、デフレから脱却、そして人為的に適度なインフレ状態を起こすことにより、景気浮揚は可能という主張をされています。

  筆者は、国際金融の専門家でも、経済学者でもないが、個人の金融資産設計業務にかかわるFPとして、このリフレ政策が、日本経済のデフレからの脱却に本当に効果的か?ということに大いに興味があります。

  「論より証拠」ということで、今までのところは、円安進行と株高で実績が出ているアベノミクスですが、うがった見方をすれば、大胆な金融緩和期待という期待だけで、これ程までの円安と株高が実現した訳であるから、もし、この期待に対して成長戦略等の実態のある政策実施や、経済実態が伴わない、すなわち実際の企業業績が改善しないということになれば、大きな失望とともに円安トレンドや株高傾向からの大きな調整局面を迎える可能性もあるでしょう。

  また、日本の円安政策は、近隣窮乏化政策を揶揄され、先のG7やG20会合で、名指しこそされなかったが、国際的な非難を浴びていることもあります。

  このリフレ政策に反対の立場をとる専門家の意見も紹介しておきしょう。反リフレ派の先鋒は、早大ファイナンス研究所顧問である野口由紀雄氏や、同志社大学大学院ビジネス研究科教授の浜 矩子氏です。

  野口氏の主張は、「今までに日銀は量的緩和政策を含めて、十分に金融緩和をしているが、消費者物価は上昇しない。すなわち需要不足が常態化している日本では、金融緩和はデフレからの脱却には効果がない。規制緩和や成長戦略を含めた産業構造の転換が必要である。量的金融緩和は麻薬のようなもので、国債消化のための手段(国債の貨幣化)であり、物価は上がらず、そもそも日本経済の再生には繋がらない。また、日銀の独立性を侵す日銀法改正は言語道断である」と主張されている。

  浜氏にいたっては、「リフレ政策すなわちアベノミクスは“浦島太郎の経済学”であり、資本取引や経済活動が高度に国際化した現代経済社会において全くの時代錯誤の経済政策である。つまり、大胆な金融緩和による円安誘導は、60年代から70年代の高度成長期時代における輸出主導の日本経済であれば効果はあるが、製造業の生産活動が国際化した現在では、全くの時代遅れの経済政策である。今起きている株高は、単なる期待に基づくバブルである」とアベノミクスを一刀両断しています。

アベノミクスが私達にもたらす影響は?

  さて、アベノミクスをとりまく専門家の経済論議はさておき、安倍政権の経済政策がある程度の成果を出す、つまり円安・株高状態が今後も続いた場合、一般国民へはどのような影響があるのか?また、アベノミクスにどのように付き合っていくべきかを考えてみましょう。

  まず、株式投資をしている人は、インフレ期待が続く限り株高の恩恵を受けます。また、土地を保有している人もインフレ期待の高まる中では有利です。やはり、資産を持っている人のみにしか恩恵はないのだろうか。インフレが進行するだけで、給与や所得が増えなければ、実質的な収入減であり、生活はより貧しくなります。

  一方で、円安の進行により、エネルギー価格が高騰しています。原発停止を受けて、火力発電所の稼働のため、電力各社は液化天然ガスを高値で大量に輸入しています。また一般の生活者は、最近のガソリン価格上昇に頭を抱えているという状況です。

  「アベノミクス」という安倍政権の経済政策は、長期にわたってデフレに悩む日本経済が立ち直れるかどうかの契機になるかと、世界中から注目を受けています。中国やアセアン諸国の経済成長ばかりに注目が集まるアジアの中で、久しぶりに、日本が世界から関心を集めていることは大いに結構なこと(皮肉をこめて)ですが、一般生活者が豊かになることが、経済政策の目的であるのであれば、アベノミクスを、もろ手を挙げて歓迎することはできないかもしれません。

  「これから、株式投資をしてもまだ間に合う。まだまだ円安は進行するから、外貨投資を始めるべき!」等々とマネー誌の特集記事に謳われているけれど、すでに貿易赤字国となった日本にとって本当に円安はいいことだろうか?

  また、安倍政権は国土強靭化を掲げて、積極的な公共投資計画を決定したが、日本のかかえる巨額の公的債務を考えると、不安にならざるを得ません。アベノミクスが本当に国家国民のためになる経済政策かどうかを、私たち国民は真剣に考える必要があるでしょう。

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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