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「住宅は取得するもの」という固定観念を疑う 生涯賃貸という選択肢

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「住宅は取得するもの」という固定観念を疑う 生涯賃貸という選択肢

  当方のFP事務所がお受けする相談テーマの中で、住宅取得や住宅ローンに関するものは、資産運用に次いで多い。やはり一般の生活者(現役世代のファミリー層)にとって、住宅取得は生涯のライフイベントの中で、最大の買い物だからであろう。ちなみに、住宅取得に匹敵する大きな支出項目は、教育費と生命保険料と言われている。

  過去10年間でみても、最低水準になる0.6%台の長期金利が、住宅ローン金利低下を促し、直近では、大手銀行の10年固定金利で、”1.4%前後”、固定金利フラット35で返済期間21年以上35年以下の場合で、最低金利は”1.81%”となっており、今はまさに、住宅取得にとって最適な時期・環境であるといえるかもしれない。

  住宅業界や住宅ローンを提供する各種金融機関は、超低金利を大歓迎し、政府は、国民に住宅取得を促し、内需拡大と景気浮揚をねらう。住宅取得の振興はいわば国策といったところか。

  本コラムでは、あえて住宅を購入せず、生涯賃貸住宅に住むことのメリットを考えてみたい。

住宅は本当に資産?「住宅は取得するもの」という固定観念を疑う

  「持ち家派と生涯賃貸派ではどちらが有利か?」と尋ねられることがよくあるが、それは不毛な議論である。なぜなら、どちらも経済的支出の総額はおおむね同じだからである。つまり、支払家賃には、用地取得費やマンション等建物の減価償却費に加えて、借入金利(※)や固定資産税、建物火災保険料等が含まれている。

※賃貸マンションのオーナーは、自己資金がある程度あるにしても、通常、多額の銀行借り入れを行っているため、借入金利負担分が入居者へ請求する月々の家賃に含まれていると考えられる。

  よって、何十年もの間、家賃を払い続けようと、住宅購入した場合と比べて、金銭的な支出にほぼ変わりはないといえよう。

  むしろ、ライフステージの変化に伴って、機動的に住み替えられる賃貸住まいの方が、柔軟性があって良い、多額の負債を抱え、それに縛られた人生を送りたくない、と考える若年層が近年は増えているかもしれない。少なくとも、当方が相談を受ける、20歳代後半から40歳代までの現役層には、最近賃貸派が増えているという実感がある。

  一方、持ち家派の主張はどうだろうか。おそらくは、以下のような感情や社会的体裁に影響された感覚的なものだろうか。

低金利で、35年ローンを組めば、月々の返済額は家賃より少ない
住宅資産を持つことで安心感がえられる、老後に持ち家がないと不安だ
住宅は資産になるが、家賃は払うだけで後に何も残らない
いつまでも賃貸だと世間体が悪い

  住宅は資産であるという考え方は、幾分疑わしい。住宅という不動産は、株や投資信託といった金融資産と違い、流動性が低く、立地や住環境が良くてもすぐには換金できないと考えるべきだ。たとえ売却できたとしても、売値は住宅ローンの残債を下回るケースが多いだろう。また、大規模な地震が発生した場合、完全に住宅の価値を保全する術はない、地震保険の補償範囲は限定的であるからだ。

  もし、一戸建て住宅(万一、地震で建物を失っても土地は残る)を現金一括で購入することができれば、「住宅は資産」と言えるかもしれないが、無理をして、多額の住宅ローンを20年から30年以上の長期にわたって返済し続ける負担の見返りとして、住宅を購入することが本当に良いことなのかどうか・・・・。住宅は新築といえども、購入・取得直後から価値が減価していく。

  ある著名な経済評論家は、「住宅ローンを組んで住宅を取得することは、必ず価格が下がるとわかっている株式へ、信用取引で投資する様なものだ」と住宅取得を評している。あまりにも「言いえて妙だ」とうなずいてしまった。

  念のために申し上げておきますが、当方は、決して住宅取得を否定する立場ではありません。あくまでも、発想の転換を行い、「住宅はあくまで取得するもの」という固定観念から離れ、より豊かでフレキシブルな人生を送るために、住まいという課題に柔軟性を持って向き合ってほしいと考えているのである。住宅を「資産として保有する」ことに重きを置かず、純粋に「住み続ける間の利用価値」として見ることが大切なのである。

  FPに住宅取得や住宅ローンについて相談をされる際、「住宅を購入しない選択肢」もあると、しっかりと助言をしてくれるFPが、本当に信頼できる相談相手なのかもしれません。

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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