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遺族年金の改正で、家計の生命保険料が安くなる!?

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遺族年金の改正で、家計の生命保険料が安くなる!?
今年4月から、遺族基礎年金制度の一部が改正されます。これまでは夫が亡くなった場合には手厚い遺族年金も、妻が亡くなった場合には機能していませんでした。それがいよいよ改正されるというのです。どのように改正されるのか? 今年もかわらず、会話形式で考えてみたいと思います。

【会話の登場人物】
お金に詳しい先生
勉強嫌いだけど“お得”に敏感な女子生徒さん


生徒さん 「先生、あけましておめでとうございます!! 本年もよろしくお願いいたします!!」

先生 「おめでとう。今年こそは真面目に授業を受けてくれよ」

生徒さん 「いきなり牽制ですか? まさか出塁するなり、ボールが飛んでくるとは思いませんでした」

先生 「あはは。まあ、学年度末テストも近いんだし、少しは真面目に勉強してくれよ」

生徒さん 「わかりましたよ~。じゃあ、真面目な質問してもいいですか?」

先生 「いいよ。年末に何かわからないことがあったのかい?」

生徒さん 「はい。実はですね、お正月なんで親戚同士集まったんですが、そこで保険に関する話題が出たんですが、それがよくわからなくて…」

先生 「どんな話だったんだい?」

生徒さん 「なんでも遺族年金の一部が見直されるとかで、生命保険料を安くできるかもみたいな話だったんですけど…いったいどういうことなんですか?」

先生 「なるほどね。おそらくそれは現行、主婦にかけている生命保険料を少し下げられるかもしれないという話だったんだと思うよ。今まで主婦は万一に備え、自分で保障を準備するしかなかったからね

生徒さん 「?? …いったい、どういうことですか?」

先生 「それじゃ、遺族年金の基礎から簡単に見ていこうか」

先生 「遺族年金というのは大きく分けると、遺族基礎年金遺族厚生(あるいは共済)年金に分かれているのは知っているかな?」

生徒さん 「確か…国民全員が加入しているのが、基礎年金で、働いている人が加入しているのが厚生(共済)年金でしたよね。その遺族バージョンって感じですか?」

先生 「そうだね。ただ、普通の年金と違って、「二階建て」とは純然と言えない部分がある。それは条件に寄っては遺族基礎年金がもらえなくても、遺族厚生年金がもらえるというしくみの部分がそれだ」

生徒さん 「え、遺族基礎年金って、国民全員が亡くなったらもらえるもんじゃないんですか?

先生 「残念ながら今まではそうじゃなかった。それが今回の改正で変わることになったんだよ。そうした意味では今回の改正はとても重要だと言える」

生徒さん 「それって、具体的にどう変わったんですか?」

 遺族基礎年金は、次のいずれかの要件に当てはまる場合に、死亡した方によって生計を維持されていた「子のある妻」または「子」が受給できる。

(1) 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
(2) 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
(3) 老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき
(4) 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方が死亡したとき

※なお、「子」というのは18歳になった後の最初の3月31日まで、または1級または2級の障害の状態にある20歳未満の子が対象(死亡当時、胎児であった子も出生以後にその対象となります)。また、婚姻している子は対象となりません。
          (日本年金機構 平成25年10月版資料より抜粋)

先生 「今まではこのような要件だったんだ」

生徒さん 「あ、『子のある妻』または『子』が受給できるって明記してある。夫…旦那様は関係なかったんですね?」

先生 「そうなんだ。今までこの遺族基礎年金は父子家庭を除外していた。まあ、元々男性に扶養されている女性を守るための制度だったんだから、仕方ない部分もあったんだろうけれど、女性の社会進出が目覚ましい昨今においては、制度として立ち遅れていたといえるだろうね。今回はこの部分をどこまで改善できるかが焦点だったんだよ」

生徒さん 「どこまで改善できるか? それって、どういうことですか?」

先生 「政府としては、第一号、第二号被保険者をこの対象にしようと考えていたんだ。そして、第三号被保険者を対象外にしようとしていた」

生徒さん 「先生! 暗号を使われてもよくわかりません。ちゃんと日本語で教えてください」

先生 「いや、これも立派な日本語なんだけど…。こほん。まず、第一号被保険者というのは、自営業の人や学生なんかがこれに該当する。20歳を過ぎたら、国民にはこの国民年金保険の納税義務が発生する。つまり第一号被保険者に自動的になるわけだ」

生徒さん 「なるほど。最初は第一号被保険者になるわけですね」

先生 「いや。必ずしもそうなるわけじゃない。その例外が第二、三号の被保険者だ。

 第二号被保険者というのは、民間の会社や公務員として働いている人達が該当する。高校卒業後に就職する人がいるだろう。働いている以上、この第二号被保険者に該当する。だから例え18歳でも働いて納税していれば、この第二号被保険者に分類されるんだ。さっき、働いている人が厚生年金をもらえるって自分で言ってたけど、この働いている人が第二号被保険者というわけだね」

生徒さん 「なるほど。じゃあ、第三号はダレですか?」

先生 「第三号は第二号被保険者の配偶者が該当する。年齢は20歳~60歳が対象で、第三号被保険者が直接納税することはないよ。第二号被保険者全員で、この第三号の保険料を分担して納税しているようなイメージだね」

生徒さん 「なるほど。ところで、なぜ政府はそんな第三号被保険者を対象外にしようとしていたんですか?」

先生 「さっきも言ったように、遺族年金は“死亡した方によって生計を維持されていた家庭を救済する”のが目的だ。主たる稼ぎ手でない第三号はこの条件を満たさない。財政的にも苦しい年金制度、これ以上の負担増は避けたかったという側面もあったのだろう」

生徒さん 「でも、ですよ。実際に稼ぎはないにしても家事という家の中の仕事があるじゃないですか。それを軽視されちゃうのは同じ女として嫌ですね」

先生 「確かに、そうだね。それに加え、明確に第三号で線引きしてしまうと何らかの理由で一時的に妻の扶養に入っている夫が亡くなった場合でも遺族年金が支払われないという現在との制度矛盾が発生してしまう。

 それで社会保険労務士を中心とした、大きな反対にあったんだ。その結果、政府としては異例のことだけど、法案を変えた。その決定が今月1月10日にあったんだよ」

生徒さん 「本当に土壇場で決まったんですね。それでか、親戚の人がどうなるんだろうって騒いでいたのは」

先生 「おそらくそうだろうね。結果として、この第三号被保険者も遺族基礎年金の対象となった。それに伴い、『子のある妻』が受給できるという文面に『子のある(年収850万円未満の)夫』という文言が付け加えられることになったんだ。

 今までは、妻の万一に備えた遺族保障はなかった。それで、万一に備え、家庭では民間の保険を利用して、妻の保障を自分で準備するしかなかったんだ。保険会社の勧誘でもこの部分はよく焦点にされていてね。特に小さな子供を持つ家庭では、残された父親だけで子供を育てていくには相当な負担がかかる。そこで、妻の死亡保障を充実させるプランに加入するケースも多いんだよ」

生徒さん 「なるほど。今回の改正で、その保障を見直すことができるってわけですね。確かに月々の保険料が安くなるかもしれませんね」

先生 「そうだね。ただ、今回の改正で父子家庭にも保障の幅は広くなったけれど、それは全部に及んではいない。それが寡婦年金等の女性特有の制度だ。また、この改正が最終決定というわけではなく、厚労省は専業主婦の遺族に対する支給が妥当かどうか、改めて本年度中にも議論し、必要なら法改正を図るという考えも示している」

生徒さん 「なるほど。まだまだ、予断を許さない状況なんですね」

先生 「そういうこと。だけど、時代は変わった。それは夫婦共働きも昔に比べ今は多くなっていることからも明らかだ。昔の制度は確かに今まではちゃんと機能していたかもしれない。しかし、時代が変わればそれに合わせ、変化していく必要もあるだろう。

 “変化に対応できる生き物が生き残る”というのはダーウィンの考え方かもしれないけど、まさにその変化・対応が今の政府には求められているんじゃないのかな」

生徒さん 「なるほど…、変化に対応できた生物が生き残るか。よし!! それじゃ、私も生き残るべく変化に対応しようと思います!!」

先生 「変化に対応? 具体的にどんなことをするんだい?」

生徒さん 「それはですね…。単位が足りないんです、先生!! 単位ください!!」

先生 「泣き落としか。そうだね…、きみに単位を与えることが妥当かどうか、改めて学年度末テストの成績を勘案した上で、必要なら追試という措置を取ることにするよ」

生徒さん 「…なるほど。まだまだ、予断を許さない状況なんですね」

以上(執筆者:石川 肇)

《石川 肇》
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「銀行・保険会社・証券会社」で培った実務経験を活かし、金融商品の多角的な分析・説明を得意としております。金融商品といえば何か難しいイメージがあるかも知れませんが、そんなに身構えることはありません。ただ押さえておくべきポイント、ルールがあるのも事実です。「金融商品はよく判らないのでつい情報を鵜呑みにしてしまう…」そんな方には、そこで一歩立ち止まり思考を広げる、そのためのお手伝いができればと考えております。また、日頃から講演活動にも積極的に取り組み、「正しいことを面白く、そしてわかりやすく伝えること」を目標に研鑽を積んでおります。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士、証券アナリスト検定会員補、証券外務員一種 寄稿者にメッセージを送る

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