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インフレ対応と資産の目減り防止が急務 今後取るべき資金運用戦略

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インフレ対応と資産の目減り防止が急務 今後取るべき資金運用戦略

 以前、本サイトのコラムにて、筆者は教育費準備のための資金運用先として、個人向け国債(10年物変動金利)をお勧めした。お子さんの学資を準備するという性格上、原則リスクを避けた投資対象として個人向け国債の安全性とインフレ対応力を重視したためだ。

 今回は、足もとのインフレ状況すなわち、物価動向について考えた上で、これから取るべき資金運用方法について考えてみたい。

今後の見通し 安易な株価上昇は期待できない

 一昨年の暮れ頃から、もてはやされているアベノミクスであるが、年初から息切れ感が目立ってきており、特に外国の機関投資家の間では、「アベノミクス相場はすでに終わった。日本経済成長のための構造改革が実現される見込みが全くみえない。円安になっても、輸出企業の業績は思ったほど上がらない。低迷している株価の上昇には、日本銀行のさらなる追加金融緩和が求められるが、期待薄だ!」等々、ほとんど日本市場に対し失望に近い声に聞こえてくる。

 これまでに実施されたアベノミクスの経済政策と現状を振り返ってみよう。アベノミクス基本3政策すなわち、(1) 大胆な金融政策(2) 機動的な財政出動(3) 成長戦略の内、実際に政策が実行され、効果があったのは、はっきり申し上げて(1) 大胆な金融政策だけである。

 誤解を恐れずにいえば、1000兆円を超える政府債務のあるわが国で、たとえ2020年東京オリンピック開催を控えているとはいえ、公共投資中心の財政出動は難しい。

 また成長戦略にしても、規制緩和により、経済活動活性化と投資を促進することを目的に、国家戦略特区や法人税減税、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直し等々の議論が行われているが、減税にともなう財源問題はいまだ議論がつくされておらず、他の政策にていても、具体化と実施段階までの道のりは長いといえるだろう。

 本コラム執筆時は、安倍政権から成長戦略第2弾の発表がされていない段階であるが、少なくとも、当面は、成長戦略を背景とした日本経済の活性化と企業利益の拡大、そしてそれらを踏まえた株価上昇を安易に期待しないことが無難である。

 現時点では、日本銀行による大胆な量的金融政策のみが効果を発揮しており、一昨年秋頃の1ドル80円を割る過度な円高が修正された。それによって、輸出企業の業績は昨年大幅に改善され、大手を中心に過去最高利益を計上する決算発表も続出した。

 しかし、今年度はどうだろう? 1ドル100~103円水準の為替レートがさらにドル高円安水準に向かうとみる向きは少なく、たとえもう少し円安が進んだとしても輸出企業の売り上げ増加(厳密にいうと販売台数等の売上数量の増加)は見込みにくく、むしろ円安による輸入金額の増加基調継続の方が懸念されようか。

 2011年起こった東日本大震災による福島原発事故は記憶に新しいところだが、事実上、原発稼働ゼロの我が国は、火力発電に頼ることとなり、その燃料となる天然ガスの輸入は増加の一途だ。過去1年半に及ぶ、円高修正すなわち円安進行によって、海外からの資源購入にともなう輸入金額はさらに増加している。

逼迫する国民の生活

 そこで、私たち個人の生活に目を向けてみると、ガソリン価格はいうに及ばず、石油関連製品の価格は軒並み上昇している。輸送コストが上がることで、各種物流コストがあがって、日用品から食料品全般にわたり価格が上がっている。さらに、4月実施の消費税増税が消費者にさらなる負担増を強いているのである。

 一方、一般生活者にとっての収入すなわち給与所得はほとんど伸びていないのが現状である。一部の大手企業では、ベースアップ等により今年4月からの給与が増えているという報道はあるが、業績向上による従業員への利益還元は、賞与・ボーナスの増加が中心であり、生活費にあてるべき毎月の給与が目に見えて増加しているとは言い難い。少なくとも、物価上昇ペースと同水準以上で給与が増加しているケースはほぼ皆無といってもよいだろう。

 過去15年以上にわたり、デフレが続いた日本経済であるが、今後は物価が上がるということを真剣に捉え、それに対応したお金の預け先・運用先を考えるべき時が来たということである。デフレ時代の感覚のままで、金融資産の大半を現金・銀行預金で保有することは、資産の実質的価値を目減りさせてしまうことに気付いてほしい。仮に年率2%の物価上昇が5年間続けば、現預金の実質的価値が約10%目減りする、つまりお金の購買力が減ってしまうのである。

私達が今後取るべき資金運用戦略

 では、具体的にお金の預け先・運用先をどうしたらよいのか?

お子さんが未就学もしくは中学生以下の場合

 本コラムの読者がもし30歳代から40歳代の会社員で、お子さんがまだ未就学もしくは、すくなくとも中学生以下であれば、まずは教育資金を、個人向け国債等で準備することを早期にはじめよう

 次に、もしローンを組んだ住宅取得をしていなければ、住宅取得をできるかぎり先延ばしにして、20年以上の超長期の資金運用を前提に、老後生活資金の準備に着手することを是非お勧めしたい。

 毎月の生活費とボーナス収入の中から使う耐久消費財購入やレジャー費用を除いた余剰資金を、長期で低コストかつ複利運用を念頭に、日本株・海外先進国株・新興国株と3分野に割り当て、それらを投資対象とするインデックスファンドを、1万~2万円の少額でも毎月定額で買い付ける長期の積立投資がいいだろう。


●三菱UFJ投信のeMaxisシリーズ
●三井住友アセットのSMTインデックスシリーズ

 公的年金を補完する老後生活資金は長期にわたる準備期間があり、20年以上の積立投資であれば十分な時間分散効果が期待でき、内外の株式主体の投資であり相応のリスクは取るが、それに見合ったリターンを得られる可能性は十分あると筆者は考えている。

お子さんが高校生以上の場合

 すでに高校生以上のお子さんに対する教育費用がかさみ、住宅ローン返済を抱えている読者であれば、「家計にほとんど余裕はなく、投資へ振り向ける資金はない!」という声も聞こえてきそうだが、そうであるならば、今から家計簿をつける等して、まずは家計管理をしっかり行い、今後のライフプランを見据えた生涯資金収支表(いわゆるキャッシュフロー表)を作成することをお勧めする。

 余程の浪費や無駄遣いをしていなければ、貯蓄に回せるお金や将来に備えた余剰資金は確保できるはずだ。毎月1万円~2万円でも、インフレ対応ができる個人向け国債を継続して購入することから資金運用をはじめてみよう。

 尚、インフレ対応により適した国債として、財務省が来年度から個人向けに「物価連動国債」の発行を計画している様だ。物価連動国債は、インフレにより物価水準が上がると、それに応じて国債元本とその利息が増えるものである。まだ個人向けへの発行条件や購入単位等が明らかになっていないが、投資経験の浅い読者にとって、個人向け国債とともにインフレによる資産の目減りを防ぐためには適した運用商品といえるだろう。

 尚、過去の筆者コラムにて、「住宅はローンを組んで買うもの」という常識を疑うことが大切だと述べた。将来の収入環境が不透明で、ライフプランや老後資金準備をしっかり考えていない段階で、多額の住宅ローンを組んで負債を抱えることは無謀といえるからだ。

 いずれ、両親から住宅資金贈与や遺産相続が期待できるのであれば、それらを最大限利用し、お子さんが成人し独立した後に、住宅を現金購入する、もしくは、ローンを最小限にとどめた住宅購入をすることが賢明なのである。もちろん、生涯賃貸で暮らすという選択肢を真剣に考えてもいいし、現役時代に、あえて無理な住宅購入をせずに、リタイア後、ご夫婦で医療設備・体制が整った高齢者向け住宅へ入居するまで、老後生活資金と合わせて住宅購入資金を温存しておくことも一案である。

 いずれにしても、幸か不幸かインフレ時代がやってきつつある。アベノミクス効果とみる向きもあるが、少なくとも、収入は増えない一方で、物価だけが上がる「悪いインフレ」であると想定した方がいいかもしれない。デフレ時代とは違い、現金・預貯金でお金を置いておくことにより、お金の価値が目減りしていくことを自覚しよう!

 いきなり、株式投資や海外とりわけ新興国へ投資をすべきだ! とアドバイスするつもりはないが、少なくともインフレに対応し、資産価値を保全することは必要なのである。(執筆者:完山 芳男)

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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