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フィンランドがトリプルAから格下げ 試練の続く欧州経済

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フィンランドがトリプルAから格下げ 試練の続く欧州経済

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、フィンランドを格下げしました。フィンランドは最上級のAAAを保持していましたが、今回1段階格下げのAA+となりました。他の格付け会社については、ムーディーズのAaaおよびフィッチ・レーティングスのAAAと最上級格付けは変わりません。

 フィンランドの格下げは、「社債投資まとめ!」でもおなじみの、フィンランド地方金融公社が発行する個人向け社債にも影響が出る可能性があります。

フィンランドの経済情勢

 S&Pによる格下げの理由は長引く景気低迷の一点に尽きます。フィンランドの経済成長率は2012年からマイナス成長を続けています。長引く景気低迷の結果として、政府債務残高の対GDPも2009年の33.9%を底に57.0%まで拡大してしまっています。

 こうした経済成長の停滞に苦しんでいることもあってか、フィンランドの中央銀行であるフィンランド銀行のエリッキ・リーカネン総裁は、欧州中央銀行による金融緩和政策に対して積極的な発言を続けています。

フィンランド中銀総裁の欧州経済政策に対するスタンス

 ここ数か月のリーカネン総裁の発言をまとめると以下のような政策スタンスを主張しています。

政策金利は長期にわたって低水準にとどまる。政策金利が下限に達したことで他の選択肢が排除されるわけではない。低インフレが過度に長期化するのであれば、追加の非伝統的手段を活用すべき。

 欧州中央銀行(ECB)の中では、非伝統的手段も含めた追加刺激策に前向きなドラギ総裁に対して、中央銀行のバランスシートをリスクから守り政府の財政需要から徹底して分離すべきというスタンスをとるドイツ連邦銀行バイトマン総裁が真っ向から反対姿勢をとるなど、とても一枚岩とは言えない状況が継続しています。

 フィンランドのようにマイナス成長が継続する状況の中では、金融緩和を積極的に進めて景気刺激策をとりたいところでしょうが、欧州統合の中で金融政策を欧州中央銀行に一元化しているために、単独での行動には限界があるのが実態です。金融政策に頼らない景気刺激策を打ち出すことができるのか、フィンランド政府としては大きな難題につきあたっています。

個人向け社債への影響は?

 今回S&Pは、フィンランドを一段階格下げするとともに、フランスの格付け見通しをネガティブに引き下げました。フィンランド/フランスにとどまらず、欧州経済全体に対する懸念を示したものと言えます。

 欧州の経済成長に対する懸念は、欧州市場におけるリスク資産から安全資産への資金逃避を招く可能性が高く、ドイツ国債の利回り低下につながると考えられます。そうなれば、個人向け社債の中で発行件数は多くありませんが、ユーロ建て個人向け社債の利回りは低下することになるでしょうか。

 一方で、フィンランドの信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップス(CDS)はそれほど上昇していませんが、今後信用リスクが高まる可能性はあります。そうなると、フィンランド地方金融公社が発行する個人向け社債(特に外国債券が多いですが)の利率は相対的に上昇する可能性があります。ただし、あくまでフィンランドの信用リスクが上昇し、それに伴ってスプレッド(国債利回りに対する上乗せ金利)が拡大するだけであるということを認識しておく必要があります。

 社債投資の観点からは、世界経済が復調して歴史的な低金利から各国が脱しない限り、個人向け社債・外国債券の利率も上昇しません。米国経済は利上げの議論もされるほど経済が復調してきましたが、欧州経済の復調にはまだまだ時間がかかりそうです。(提供:社債投資まとめ!)

《社債投資まとめ!》
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