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超格差社会の行方 アベノミクスの行き先は映画「TIME/タイム」と同じ世界

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超格差社会の行方 アベノミクスの行き先は映画「TIME/タイム」と同じ世界

 昨夜は子供のリクエストで「TIME / タイム」という2012年に公開されたSF映画のBlu-rayを見ることにした。この映画をはじめて観た私は非常にショックを感じ、観終わってからしばらく呆然としてしまった。

 遺伝子操作によって25歳で成長が止まり、「時間」が通貨の代わりに流通する社会で、人々は「余命」を稼ぐために経済活動を行わなければならない。しかも、一般庶民は残一日以下のきわどい余命のなかで毎日暮らしており、道端には「時間切れ」で死んだ人間があちこち転がっており、道行く人もとりたて気にする風ではない。一方で余命が数百年という時間億万長者がおり、とてつもない「時間貧富」の格差が生じている社会なのである。

 でもこれって、今アメリカが突っ走っている「1%の人が70%とも80%とも言われる大きな富を保有している超格差社会」の行きつく先だし、実は日本も着々とその後を追っている。

 例えば11/16の朝日新聞で「大手6割 予定通り増税を 中小企業や世論は否定的」の記事を読めばわかる。日本の大企業や大組織(中央官僚)で勤めている人達の賃金は上昇しているのに、中小企業や自営業者の可処分所得は各種の増税や円安による生活コスト上昇により下がるばかりだ。

 実際、庶民から増税により搾取し、大企業や投資家にそれを回したのが「アベノミクス」だ。日銀の量的緩和によってマネーの流通量は増加しているのに、大企業や投資家にしか回らず、庶民へはほとんど回ってないのだ。

 ちなみに日本のサラリーマンで1000万以上の年収がある人は全労働者の5%以下だ。でも1000万程度ではリッチとはいえない。アメリカで言うサラリーマンのリッチは3000万以上であるし、実はそれでもたいしたことない。世界中に大邸宅を数軒持っており、その行き来にプライベート・ジェットを使い、フェラーリやランボルギーニ程度の車ではなく、マイバッハやロールスロイスを何台も保有している人達をリッチと呼んでいる。汗をかくのはテニスやゴルフをするときぐらいで、金はほっといても殖えていくのだから、働く必要が無い。

 なぜ、政府は物価をあげようとするのか。物価があがれば、金利も上がる。庶民は毎日の暮らしのコスト増大で生かさず殺さず状態の労働力として使われ、実質は経済的奴隷に陥るはめになる。

 国が住宅ローン控除で国民に家を買うことを奨励しているのも同じ道理だ。家を買ってしまえば、ほとんどの庶民は一生真面目に働かなくてはならなくなる。政治活動なんか考える余裕を与えないように経済活動しかできない状態に追い込まれる。

 また金利が上がれば、小金持ちは金を消費に回さずさらに貯蓄に励み、銀行はその金をさらに回し、投資家をさらに潤す。富者はさらに富を集め、巨大寡占化し、貧者はさらに貧者になる。大衆からの搾取による資本家を描いた「マルクスの資本論」そのものだ。

 グローバリゼーションという名の下で新自由主義が世界中で推し進められている。しかし、これは経済格差や貧困を世界的に拡大させており、資本主義そのものの耐用年数が既に尽きているのではないかとも指摘されている。そろそろ資本主義に代わる新しい経済体制が世界のどこかででてきてもおかしくないのだ。

 この映画のおそろしいことは、主人公たちがとる行動やラスト・シーンが、資本主義を崩壊させる方法を明確に提示していることだ。文学や映画は実際の世の中のことをフィクションの世界におきかえて物語とし、今の世の中や体制へ批判を投げかけることができる。この映画は金を時間に置き換えているからそれができるが、でなければ上映禁止ものの内容だろう。もちろん映画を深読みしなければ、単なるSFアクションとして人々の記憶に隅に沈んでいくだろう。(執筆者:伊藤 克己)

《伊藤 克己》
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伊藤 克己

ゆうゆうFP事務所 代表FP(現在閉鎖) 電機・半導体メーカー退社後、外資系生保と乗合代理店で実務を学び、独立系FP事務所を開業。リスク・ファイナンシングを現場実践している「実践派FP」として顧客利益優先に活動。 寄稿者にメッセージを送る

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