※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

改善の進まない「日本年金機構と老後資金の準備」

税金 年金
改善の進まない「日本年金機構と老後資金の準備」

横浜市の大型マンションが施行不良で傾いた問題が、世間を騒がせております。これは建物を支える70本のくいのデータが偽装され、一部は必要な深さまで達していなかったことが、主な原因になっているようです。

このニュースを聞いた方の多くは、2005年11月に発覚した「耐震偽装事件」を思い出すと共に、改善の進まない建設業界に、不安を感じたと思います。

改善の進まない「日本年金機構」


改善が進まないといえば日本年金機構も同様で、今年の6月に職員端末がサイバー攻撃を受け個人情報が流出した問題で、世間を騒がせたと思ったら、また問題を発生させてしまいました。


それは2015年10月15日に支払われた、8月分と9月分の年金に関して、約400人分の金額が間違っていたというものです。

6月に発生した個人情報の流出を受け、約96万人の基礎年金番号を変更しましたが、その際にデータが更新されないというミスがあり、それが原因になっているようです。

この解決策として日本年金機構は、「職員が戸別に訪問して謝罪と説明を行なったうえ、不足額は早急に支払い、金額が多かった場合には、12月15日に支払われる10月分と11月分の年金から、差し引く」と発表しました。

個人情報が流出した際には、オペレーターの増員やお詫び文書の送付のため、約50億円の税金または保険料が使われると、日刊ゲンダイに記載されておりました。今回は職員が戸別に訪問するのですから、その人件費がかかるはずですし、説明文書の印刷代も当然にかかります。

その金額はいくらになるかわかりませんが、こういったことを繰り返していては、日本年金機構の信頼回復は遠い未来になりそうです。

改善の進まない「老後資金の準備」


フィデリティ退職・投資教育研究所という機関が2010年に、サラリーマン1万人に対して、老後の生活資金の準備などについて、アンケートを行いました。


このアンケートで一番驚いたのは、「退職後の生活資金として用意できている金額」という質問に対して、44.3%が0円と回答した点になります。

こういった方は公的年金を信頼しているので、何もしていないのかと思いますが、「公的年金制度の安心度」という質問に対して、「あまり安心できない」または「不安」と回答した方を併せると、89.0%にも達しました。

つまり公的年金はあてにできないと、9割くらいの方が考えているけれども、それを補うような行動をしていない方が、4割もいるということになります。

フィデリティ退職・投資教育研究所は、サラリーマン1万人に対して、同じ内容のアンケートを、定期的に実施しております。しかしその結果にあまり大きな変化はなく、退職後の生活資金として用意できている金額は0円と回答した方は、2013年は40.3%、2014年は40.8%、2015年は40.8%と、ほとんど変化はありません。


≪老後資金ゼロの人(グラフ下)の割合はあまり変わっていない。逆に1000万円以上ある人は確実に増えている。 引用元:フィデリティ退職・投資教育研究所 https://www.fidelity.co.jp/retirement/pdf/20150729.pdf≫

公的年金の信頼度は景気回復を受け、若干の改善を見せておりますが、数パーセントの違いであり、依然として9割くらいの方は安心できない、または不安と回答しております。

アンケートの行なわれた2010年から2015年を振り返ってみると、2013年10月からの物価スライド特例水準の解消や、2015年4月のマクロ経済スライドの発動により、前例のない年金額の削減が行なわれました。

そしてこの削減に耐えられない年金受給者は全国各地で、年金額の削減を差し止めるための、裁判を起こしております。

また2014年あたりからテレビや雑誌などに、「老後破産」や「下流老人」などといった、老後の貧困を表現する用語が、頻繁に登場するようになりました。

こういったニュースや用語は、多くの方の耳に入っていると思うのですが、老後の生活資金の準備はアンケートが行なわれた5年を通じて、全く改善していないのです。

”資金”の問題というより”意識”の問題


まとまった資金が無いから投資はしないという方がおりますが、個人型の確定拠出年金であれば、毎月5,000円から始められるのです。


またネット専業の証券会社であれば、毎月500円や1,000円といった低額で、投資信託の積み立てができ、この積み立てをNISA口座で行なえば、一定額まで非課税になります。

そもそもフィデリティ退職・投資教育研究所がアンケートの対象にしたのは、定期的な収入がある会社員や公務員であり、収入の不安的なフリーターや無職者などは、含まれていないのです。

そのため老後の生活資金の準備が進まないのは、資金の問題というよりも、意識の問題だと思うのです。

老後の生活資金を準備しなくても、すぐに困ることは起きませんので、何かしなければいけないと思っていても、ついつい先送りにしてしまうのです。

日本年金機構は国民からの信頼を回復するため、変わる必要があると思いますが、それと同じように老後の生活資金の準備に対する意識も、変わる必要があると思います。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
この記事は役に立ちましたか?
+0

関連タグ

木村 公司

執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集