※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

倒産で賃金を払わないブラックバイトなら「未払賃金の立替払制度」

ライフ 社会保障
倒産で賃金を払わないブラックバイトなら「未払賃金の立替払制度」

労働基準法などの労働法に違反する、劣悪な環境で労働者を働かせ、最後は使い捨てにする「ブラック企業」については、すでに多くの方が知っていると思います。


しかし最近はこれよりも「ブラックバイト」の方が、世間を騒がしているようです。

労働基準法などの労働法に違反する、劣悪な環境で労働者を働かせるという面では、ブラック企業もブラックバイトも変わりがありません。

ただアルバイトをしているのは学生が多いため、ブラックバイトでは例えば長時間労働により、授業に出席できなくなるなどの問題が発生しており、これがブラック企業とブラックバイトの違いのようです。

厚生労働省はこういった事態を受け、大学生、大学院生、短大生、専門学校生など計1000人を対象にして初めて、ブラックバイトの実態調査を行い、その集計結果を平成27年11月9日に公表しました。

この調査により学生の6割程度がバイト先で、何らかのトラブルを経験していたとわかり、厚生労働省は業界団体への要望など、ブラックバイトの対策を強化する方針のようです。

また学生の側でも労働組合を結成し、会社に団体交渉を求めたり、学生からの相談にのったりするという、ブラックバイトに対抗する活動が、首都圏を中心に広がりを見せているようです。

実効性と即効性のある「労働審判制度」


このような労働組合だけでなく、全国各地にある「総合労働相談コーナー」でも、労働問題の相談にのってくれます。


またお近くの市区町村でも、弁護士や社会保険労務士など専門の相談員を呼んで、労働問題の相談にのっている場合があります。

ただこれらの相談先は原則的に、労働者の相談にのった後に、解決のためのアドバイスをするだけですので、問題の解決は自分で行なう必要があるのです。

そのため、誰かの力を借りたいならば、裁判外紛争解決手段(ADR)や労働審判制度を活用します

例えば労働審判は、裁判官である労働審判官1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名が組織する「労働審判委員会」が、労働問題の解決を手助けしてくれるのです。

また原則3回以内の審理で、労働問題の解決を目指し、もし解決できなかった場合には労働審判委員会が、事件の内容に即した解決案を提示しますので、即効性と共に実効性もあります。

しかし労働審判の相手方である事業主が、未払の賃金を払うと約束したとしても、すでに会社が倒産しており、それを払うだけの資金を、すぐに用意できない場合があります

また例えば労働審判委員会が、労働者に賃金を払うべきだという解決案を提示したとしても、労働審判の相手方である事業主が倒産した後に、会社のお金を持って夜逃げしてしまい、未払の賃金の回収に難航する場合もあります。

これではせっかくの解決案が、絵に描いた餅に終わってしまうと共に、当面の生活費に困ってしまいますが、こういった場合はどうすれば良いのでしょうか?

政府が立替払を行う「未払賃金の立替払制度」


会社が倒産したり、個人事業が廃業したりして、賃金が払われないまま退職してしまった場合、政府が未払賃金の一定額を、立替払してくれる制度があります


これは「未払賃金の立替払制度」と呼ばれており、独立行政法人労働者健康福祉機構が実施しております。

立替払制度の対象となるのは退職日の6カ月前から、労働者健康福祉機構に対して立替払を請求する日の前日までに、支払日が到来している未払賃金の8割程度です。

ただ退職日における年齢により上限がありますので、未払賃金の金額が多い場合には、必ずその8割程度を受け取れるわけではありません

また立替払制度の対象となる未払賃金は毎月1回以上、一定の期日を決めて払われる「定期賃金」となり、例えば月給や日給だけでなく、残業手当、休日手当、深夜手当などの手当も含みます。

なお「退職手当」いわゆる退職金も、立替払制度の対象になりますが、「賞与」など臨時的に払われる賃金などは含みません。

制度の具体的な内容については、労働者健康福祉機構のサイトの中にある、次のようなページを参照していただきたいと思います。

 未払賃金の立替払制度
 http://www.rofuku.go.jp/chinginengo/miharai/tabid/417/Default.aspx

この中で特に注意してほしいのは、裁判所の破産等の決定または労働基準監督署長の倒産の認定があった日の、翌日から起算して2年が経過してしまうと、立替払を受けられなくなるという点です。

なぜ2年なのか考えてみますと、未払賃金の請求権は2年で消滅すると労働基準法に記載されており、おそらくこれに合わせているからだと思うのです。

いずれにしろ行動するのが遅くなるほど、不利になるのは間違いありませんので、倒産で賃金を払わないブラックバイトに泣き寝入りしたくないのなら、行動を先延ばしにしてはいけません。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
この記事は役に立ちましたか?
+0

関連タグ

木村 公司

執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集