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贈与税申告に特例税率が創設 対象及び申告時の必要書類と注意点

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贈与税申告に特例税率が創設 対象及び申告時の必要書類と注意点

平成27年の相続税法の改正により相続税の対象者が大幅に増加し、将来の相続に向けて様々な相続対策を考えている方も多いと思います。


そんな相続対策の中でも単純ですが有効な手段のひとつとして、生前の「贈与」という方法があります。

生前贈与は、これまで相続税よりも税率が高いのが難点でしたが、平成27年の税制改正により、贈与税の特例税率という制度ができました

これは、直系尊属(祖父母や父母など)が、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)へ贈与をした場合に、特例税率が適用され負担が軽減されるというものです。

具体的なケースとしては、祖父から孫への贈与、父から子への贈与した場合が該当します。

贈与税の特例税率の創設は、相続税の対象者が増加する中で生前の贈与を促し、若い世代に財産を移転して経済を活性化したい、という意向がうかがえます。

(1) 贈与税の特例税率の対象とは

そもそも贈与税とは、個人から財産をもらった時にかかる税金です。(会社や法人から財産をもらった時は贈与税はかかりませんが、所得税がかかります)

贈与は、直系尊属(祖父母や父母など)の他にも、直系尊属ではない親族(配偶者の父など)やその他の人から贈与を受ける、といったように同じ年に複数人から贈与を受けることも当然考えられますが、その場合は贈与財産ごとに計算することになります。

平成27年1月1日以降の贈与から、20歳以上の子または孫が直系尊属から受けた贈与財産(特例贈与財産)と、それ以外の財産(一般贈与財産)の2つに区分して贈与税を計算することとなります。

例えば、祖父と父と配偶者の父の3人からお年玉をもらった場合、祖父と父は直系親族になるため特例税率を使用しますが、配偶者の父は直系親族ではない親族となるため、一般税率を使用して贈与税を計算することになります。

(2) 特例税率の影響


この特例税率ができたことにより、いくら以上贈与すると影響が出てくるのでしょうか。


まず贈与税の一般的な計算として、20歳の孫が贈与額300万円をお年玉として祖父からもらった場合の贈与税の計算の流れは以下のとおりとなります。

・祖父から孫への贈与ということは直系親族に該当し、贈与を受ける人が20歳以上であるため、特例税率が適用される。

・贈与額300万円から基礎控除額110万円を差し引く。

・基礎控除を引いた課税価格の金額を速算表に当てはめると、特例税率の200万円以下となるため、課税価格190万円×10%=19万円を贈与税として孫が納税する。(贈与税の速算表は、国税庁のホームページをご覧ください)

この場合は特例税率を使用していますが、仮に他人からのお年玉であったとしても税率は10%であるため、贈与額に違いはありません。

そこでいくら以上の贈与額から一般税率と特定税率に差が出てくるかを考えてみますと、基礎控除後の課税価格が300万円まで、すなわち410万円までは一般税率でも特例税率でも差がありませんが、これを超える411万円から差が出始めます

例えば、500万円を贈与した場合の差額は下記のとおりです。

・特例税率で計算した場合
(500万円-110万円)×15%-10万円=48万5,000円

・一般税率で計算した場合
(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円

すなわち500万円を贈与した場合で比較すると、贈与税額で4万5,000円の差となります。

(3) 贈与税の特例税率の対象財産

贈与税の特例税率の対象財産は現金預金のみならず、土地、家屋、株式、ゴルフ会員権、金・銀など、特に制限はありません。

(4) 申告時の必要書類と注意点


特例税率を使って贈与税を計算した場合は、

申告者の戸籍謄本又は戸籍抄本

(生年月日や贈与した人とされた人の関係を証明するためのもの)が必要となります。


ただし、110万円の基礎控除額を差し引いた後の残額が300万円以下のときは、添付する必要はありません。

また、特例制度の創設により、平成27年分贈与税の申告書の様式が大きく変わっています。最寄りの税務署で申告書用紙を先に入手するか、国税庁ホームページでひな型を確認してください。

第1表では、特例税率を使う財産と一般税率を使う財産とを区別して記載するようになっています。なお贈与税の申告期限は、今までと同じ2月1日から3月15日です。

(5) 贈与の事実を明らかにする

最後に注意点として、相続税対策として生前贈与を金銭で行う場合、「名義預金」にならないように贈与することが大切です。

名義預金とは、「口座の名義人」と「実際に口座を管理している人」が違う預金口座のことです。

例えば口座の名義は子だが、実際には父親が管理しているような預金口座のことです。

このような名義預金は、税務上の取扱いも父親の財産として扱われますので、金銭を贈与する場合には、名義預金にならないような贈与をする必要があります。

贈与契約は口頭でも成立しますが、念のため契約書を作成しておけば、贈与契約があったことを証明できます。

また贈与契約書を作成して贈与を実行する際のポイントは、「相手の預金口座に送金する」ということです。相手の預金口座に送金すれば、確実に贈与が実行されたことを通帳で証明することができます。

贈与する場合は、贈与をする相手方の本人が管理している預金口座に送金します。また預金口座を新しく作る場合には、口座の開設手続きは必ず贈与された本人が行い、通帳や印鑑も本人が所有します。

贈与された本人の収入や支出によって本人が管理支配していることが明らかな預金口座に送金することで、贈与が成立していることが証明されます。

以上ですが、生前贈与を含めた相続対策はどうあるべきか、というのはその家庭の状況によって異なり、非常に難しい問題ですので、まずはじっくりとご家族で検討していただきたいと思います。(執筆者:馬場 英輝)

《馬場 英輝》
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馬場 英輝

馬場 英輝

馬場税理士事務所 代表 1973年埼玉県生まれ。立教大学大学院経済学研究科修了。会計システムの開発販売会社に就職、営業活動をとおして中小企業の経営を支援する。2008年税理士試験合格、資産税件数全国トップクラスの税理士法人にて100件以上の相続の現場を経験する。その後独立開業、不動産経営のお客様を中心に、わかりやすい説明をこころがけている。 <保有資格>:税理士 寄稿者にメッセージを送る

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