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【読者の質問に回答】 教員は個人事業主になるべきか

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【読者の質問に回答】 教員は個人事業主になるべきか
【読者の質問】
日本に必要な改革についてですが、教育改革が必要と思います。

公務員たる教職員を完全廃止し、個人事業主化させ自由競争させるべきでは? と思いますが、いかがでしょうか?

こういう意見が寄せられました。今の教員のあり方に疑問をお持ちの意見のようで、教員としてのモラルやモチベーションを、公務員という立場と関係付けてのご意見かと思われます。

話を幾つかに分けて整理して考えたいと思います。

公務員の評価やモチベーション


まずは公務員という立場です。公務員にも国家公務員と地方公務員があり、勤務内容によっても、モチベーションの高め方は異なります。


共通して言えるのは、公務員は営利は生まず、営利活動ではないところにやりがいを感じていることです。

警察官や消防士、教員の人たちのモチベーションの対象は地域です。いわゆる官僚と呼ばれる霞が関の人たちのモチベーションの対象は天下国家です。

公務員は営利を生みませんが、お金に興味がないのかと問われれば、それは違います。正当にお金への興味を叶えるのが「出世」です。特に官僚の世界は出世のための戦争が激しく、同期は仲間ではなく、まさに敵なのです。

もちろん、みんながみんな同じというわけではありません。一括りにするのは良くないことは理解しています。あくまでも職種の性格として捉えてください。

それゆえ、出世レースから外れると、自ずと生涯賃金は決まってきます。失敗をして収入が下がることはあっても、上がることはありません。

それゆえ、先が見えた人たちのモチベーションを維持するのはかなり大変です。不祥事や不正はそういう心の隙間に生まれるのでしょうね。

公務員にとっての成果、評価が、民間企業のように、会社にいくら貢献したかという数字がはっきりしているわけではなく、その時の上司の判断に委ねられるのが、出世競争を泥臭くしているのでしょう。

また、公務員の人たちのなかには、このような評価制度に不満を持っている人もいるのでしょう。

辛い立場にある教員


ここで冒頭にあった、公務員としての教員という立場を、現場の先生の意見を交えて考えてみます。


ある若い教員の方に聞いたのですが、校長や副校長という管理職を望まなければ、ある程度、生涯賃金は決まってくるそうです。

それは日々の努力で増やせるものではなく、野球選手のような出来高制度もありません。この環境下でモチベーションを維持するのは結構きついと言っていました。

今は保護者の学校への要求が厳しく、児童や生徒に向かう姿勢は管理されているので、複雑な家庭も多く、現場の先生は、保護者と教育委員会との板挟みだそうです。

純粋に教科を教えるということだけに集中できない状況でもあるそうです。

「ブラック部活」という言葉があるそうです。

子供達側からのブラックとは理不尽な体罰などを指し、大阪の高校での自殺者を出したような事件を意味しますが、一方、先生側からのブラックは、まさにブラック企業という時に使う意味で、サービス残業のことです。

授業が終わった後の時間や毎週土日の部活が、一個人としての精神的限界を超えているようです。

出来高や成果報酬ではないので全て無給、子供達のためという思いだけが、教員を支えているのです

保護者も部活に人間育成を求めていますし、強ければ上を目指す夢を託してきます。でも教員にとっては、部活は本来の業務外なのです。

教員が個人事業主になるとどうなるか


ご指摘の、教員を公務員ではなく個人事業主とすればどうなるでしょう。


報酬は、ある成果を達成してはじめて発生することになります。当然、成果により報酬額は異なります。

ではその成果とは何でしょう。分かりやすい数字でなければなりません。進学校合格率でしょうか。落ちこぼれ阻止率でしょうか。模擬試験平均点数でしょうか。

どれを成果対象としても、より多くの報酬を得るには効率性を求めてくるでしょう。子供を育て教えるというところに効率性を求めるとどうなるでしょう。

このコラムは、教育論や政治を語る場所ではないので、話の方向を変えますが、これからの一般社会は、まさに一人一人の給与所得者を個人事業主にする社会になっていくのです。

会社依存ではなく、目に見えた数字を求められます。

数字を生み出さない業務は機械が、コンピューターが、ロボットが取って代わります。収益を生むための作業は、新興国の労働者が担います。

必要とされる労働力は「付加価値を生み出せる」人材です。

新興国の人たちもグローバル化に備え、より高い付加価値をつけるために勉強して日本にやってきます。勉強しない日本人はまさに排除されるのです。

そういう意味で、これからの日本にとって、教育は非常に重要になってくるのです。高価値を生み出せる人材を育てなければならないのです。それが、「教育が国力」なのでしょう。

人は、モラルを高めるにはそれなりの見返りが必要です。それが人間の欲というものです。欲がモチベーションを高めると言ってもいいでしょう。

その欲が、お金を含めた物欲なのか、精神的な充足感なのか、そこが問題なのでしょう。おそらく両方必要なのでしょうね。

真の資本主義とは競争を容認することです。「チャンスは平等、結果は不平等」それが資本主義です。これから私たちは、それをリアルに実感していくことになります。それが格差社会なのです。

だからこそ、チャンスを与える場は平等でなければならないと思います。格差社会であっても、平等の概念を守らなければならないところが「医療」と「教育」だと思います

言い換えれば、この二つの分野以外は全て競争なのです。成果から得られる報酬は「おのれ次第」ということです。

私たちが税金を納めることで、公務員を支えています。だから彼らは、国家運営、国民の安全と生活を守る義務があるのです。私たちが、いろんな意味で公務員を支えなければなりません。

教育においては、学校運営をお手伝いする気持ちも大事です。子供達は、学校が教え、保護者学校が見守り、地域が育てるものです。それが教育です。子供たちは日本の大切な「未来」なのですからね…(執筆者:原 彰宏)

《原 彰宏》
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原 彰宏

原 彰宏

株式会社アイウイッシュ 代表取締役 関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。 <保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP 寄稿者にメッセージを送る

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