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割引現在価値を計算する割引率の問題

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割引現在価値を計算する割引率の問題
割引現在価値を計算する割引率の問題

  最初に野口先生の日本の年金の計算間違いの話からスタートしようと思います。この記事を読んだ当時は、私には先生の意見を奇異なものとして捉えていたことを思い出します。必要保険料を最初から過小評価してしまったという話なのです。今は、私は年金給付額や保険料と補助金の割引現在価値を計算することの意味がわかるので、先生の主張の意図がよくわかるのです。

  ここでの問題点は割引現在価値を算出する時の割引率の想定の失敗なのです。金融電卓では『i』というキーを叩く前に入力する数値の問題です。もっと高い割引率で保険料を算出しなかったために必要保険料を過小評価してしまった計算間違いだという話なのです。

  ここでの問題のキーポイントは『i』の数値であることがすぐにわかります。実際に、金融電卓の5つのキーの数値を変えながら計算してみることです。『i』への入力を6.9と20では年金『PMT』の数値が大きく食い違うのです。先生の言わんとしていることが理解できるのであって、厚生省が日本の年金制度を計算間違いでスタートさせたという主張は理にかなったものなのです。

  次に、高橋洋一教授の「我が国の日銀の金融政策の失敗」という主張も、先程のものにも勝るとも劣らないほど強烈な主張なのですが、現在進行中の「アベノミクス」の理論的支柱を提供しておられる先生の正に原点というべき論点です。ここでの良し悪しを論じるだけの能力を持ち合わせていない筆者なので、深入りはしないのですが、ここでも金融電卓を取り出して考えてみましょう。

  先生は『i』という金利の問題を日銀は間違って捉えているのではないかということを述べられているのです。確かに、『i』への入力を実質金利と名目金利という異なる数値を代入すると、違いが明確に出ます。実質金利がプラスの事態をマイナスに変えることが可能なら、当然、現在価値や将来価値の見方は大きく食い違ってしまうのです。

  「アベノミクス」の経済政策としての成否を論じるつもりはありませんが、ここで私が強調したいのは『i』をどうとらえるかという推論をしてみることなのです。

  代入する数値によって大きく異なる結果を生み出すこと、この認識こそ重要なことなのです。この2つの事例を用いて表現してみました。

  「パーソナルファイナンス」の中心的主張である割引現在価値を計算して『モノゴト』の価値を比較検討しようという基本姿勢は私が最も伝えたいことです。有名経済学者の主張もそれなりに捉えることができるし、もっと大事なことをいうと「パーソナルファイナンス」という言葉を使った意味は私たち自身の生活設計にも大いに役に立つものだということを解かって欲しいからです。

  金融電卓を机上に置いて疑問があれば電卓を叩いてみてはどうでしょうか。数値によって『モノゴト』を理解するというクセがないので、私たちにはどうしても苦手なものなのですが、それを補ってくれるものが金融電卓なのです。

  5つのキーを叩きながら思考に耽るのもいいかもしれません。

  最後に、今年お亡くなりになられました日本FP協会前理事長加藤寛先生の言辞を最後にお伝えしたいと思います。「個人が独立の気力をもって、生計を律し、国難に立ち向かう、そのために必要なのが『パーソナルファイナンス』である。」

《岩永 充》
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岩永 充

岩永 充

岩永FP事務所 代表 学習院大学経済学部経済学科昭和54年卒。金融畑を歩んできた経験を活かし、「金融リテラシー」の普及活動を実践中。 <保有資格>:CFP認定者、宅地建物取引士、統計士 寄稿者にメッセージを送る

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