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年末調整のしくみ(1) 103万円以下なら非課税の理由と落とし穴

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年末調整のしくみ(1) 103万円以下なら非課税の理由と落とし穴

 早いもので2014年も終わりに近づいていますね。さて、この時期になると恒例の行事がやってきますね。そうです! 年末ジャンボ宝くじ、年末バーゲンセール、クリスマス、どれも待ちどうしものばかりです。どうやったら宝くじがあたるのか? それをお教えしたいところなのですが、私は超能力者ではないので分かりません。そして今まで述べたものは一切解説できません!!(笑) 

「年末調整」とは

 では何を解説するのか、年末に行われるのものがもう一つあります。それは「年末調整」です。年末調整とは簡単に言いますと、給与所得者に対して会社等が支払った1月から12月までの一年間の給料及び源泉徴収した所得税を12月の最終支払日に再計算して所得税の過不足を調整することいいます。

 過不足を調整するとは具体的にいいますと・・みなさんは会社から給料を支給されるときに給料明細書をいただくとおもいますが、そのなかに所得税という項目があると思います。つまり、毎月のお給料で所得税は徴収されているということです。

 しかし、この毎月の所得税はあくまでも、概算で徴収しているのです。ですので、1年間分(1月から12月まで)の給料を支払った時点で、もう一度給料等を見直して所得税を正しく計算する必要があるのです。

 ここで、もし今まで月ごとに徴収していた所得税の累計額が、正しく計算された所得税より多かった場合には、その差額分が還付され、逆に少なかった場合にはさらに徴収されるということです。

年末調整の対象者と非対象者

 これが、年末調整です。では、もう少し詳しく見ていきましょう。まず、年末調整の対象者と非対象者をみていきます。

【対象者】
1.1年を通じて勤務している人
2.年の途中で就職し年末まで勤務している人
3.年の途中で退職した人のうち、次の人
a.死亡により退職した人
b.著しい心身障害により退職した人で、本年に再就職ができないと見込まれる人
c.12月中の支給日に給与を受けた後に退職した人
d.パートタイマーなどの人が退職した場合で、その年の給与総額が103万円以下の人
4.年の途中で海外勤務などにより非居住者となった人
【非対象者】
1.その年の主たる給与収入が2,000万円を超える人
2.災害減免法の規定により、その年の給与に対する源泉所得税の徴収猶予または還付を受けた人
3.年の中途で退職した人で上記、年末調整対象者の3に該当しない人
4.2ケ所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与支払者に扶養控除等申告者を提出している人、あるいは扶養控除等申告書を提出していない人
5.非居住者(日本に住所又は1年以上の居所のない人)
6.日雇労働者など源泉徴収税額表の日額表の「丙欄」適用者
7.年末調整を行うまでに扶養控除等申告書を提出していない人

 となります。

 各自、働き方や収入も違いがありますので上記を確認して自分自身が年末調整の対象者なのか、非対象なのかを判断しましょう。年末調整非対象の人はどうなるのかと言いますと、その人達は会社で所得や税金を再計算するのではなく、自分で所得や税金を計算し直し、精算する必要があります。これがよく耳にする「確定申告」というものです。

給与所得とはなにか

 では次に給与所得について説明させていただきます。みなさんは給与所得と聞いて何を想像しますか? 多くの方は、会社からお給料の額をイメージするのではないのでしょうか? 実はそれだと、正解とは言えません。会社からのお給料は、正確には給与収入といいます。

 「年収は、どれくらいですか?」と聞かれることもあると思います。みなさんはそのように質問されると、会社からのお給料の1年間の総額をお答えすると思います。その答え方は正解です。年収とは年間収入の略称であり、もし給与所得が会社からのお給料の額であれば、年収とは呼ばず、年得? もしくは年所? になっちゃいますよね。

 では、給与所得とはいったい何なのかと申し上げますと、

給与所得の金額=収入金額-給与所得控除額

 を言います。

 給与所得の説明も受けていないのに、給与所得控除とかいう新しい言葉がでてきたぞ。とお怒りの言葉がでてきたかも知れませんが、順を追って説明させていただきますのでご了承下さい。

給与所得控除とは

 少し話がとびますが、ある個人事業をしている人がいるとします。ここではイメージがしやすいように、八百屋を経営しているとします。八百屋の1年間の売上が300万円あったします。そして税金を計算する時に、この300万円に対して税率をかけてしまうと少しおかしくありませんか?

 1年が経過して、300万円というお金は手元に残っていますか?残っていませんよね。当然、300万円の売上をあげる為に、ある程度の支出(経費)がかかっていますよね。

 八百屋なので、野菜を仕入れないと野菜は売れません。なので、野菜を仕入れるためのお金が必要です。仮に300万円を売上げた野菜の仕入額が100万円だとすると、残った手元のお金、いわゆる儲けの200万円(300万-100万)に対して税率をかけて税金を算出する方が理にかなっていますよね。このことが、会社のお給料にもあてはまるのです。

 いわゆる給料収入に対しても、一定程度の経費が認められているのです。ただし、経費の額ですが個人によってバラつきがあり何でもかんでも経費と認めてしまうと問題が生じますので、給料収入の額によって経費を所得税法上で定められています。

 この経費のことを給与所得控除額と言います。

 ちなみこの給与所得控除額は最低でも65万円は認められています。又、給料収入が高くなればなるほど、給与所得控除額も増えていきます。

「人的控除」とは

 税金を計算する上でもう1つ収入から控除できる重要なものがあります。それは、「人的控除」というものです。

 名前の通り、人に対する控除項目です。人によっては、独身で1人で生活している人や、結婚して夫婦2人で生活している人もいれば、父親や母親の生活を支えつつ自分の子供の面倒を見ている人もいます。同じ収入であっても、それぞれ支出の部分で大きく違っています。

 そこで、認められている控除項目として人的控除があります。種類として、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などがあります。

 簡単に説明しますと、自分の収入によって、一定の条件を満たす者を生活させていることが認められれば、所得からさらに一定金額を控除することができるのです。逆に妻がいて、妻も働いていてすごくお金を稼いでいた場合には、その妻に対しては控除対象者とは認められません。

 そして人的控除の中で、誰もが控除することができる項目があり、それは先程の人的控除の種類の中にある基礎控除という項目です。これは収入がある人ならば、誰でも38万円の控除を受けることができるものです。ここで、タイトルの意味が分かった人がいるのではないのでしょうか?

 つまり会社から給与をいただいた場合、65万円の給与所得控除額と基礎控除の38万円は最低でも保証されていることになります。

 よく「収入を103万円以下にしたら税金はかからないよ」と耳にすることが多いと思いますが、これが、その理由なのです。給与所得控除額の65万円と基礎控除38万円と合わせて103万の控除を誰でも受けることができるので収入が103万以下だと所得税がかからないことになるのです。

 税金を払いたくないのであれば、103万円ぎりぎりの収入にしたら良いのか。と思われるでしょう。しかし、それは大きな間違いです。ここで、間違い探しをしてもらいます。2つの文章の間違いをみつけて下さい。

(1) 「103万円以下なら、所得税はかからない」
(2) 「103万円以下なら、税金はかからない」

 このように、比べると間違いがすぐに分かります。実は1つめの文章は正しいことを述べています。しかし、2つの文章は間違ったことを述べています。分かりますでしょうか?どういうことなのか説明しますと、所得に対してかかってくる税金には所得税の他に住民税というものがあります。

 確かに103万以下であれば、所得税はかからないのです。しかし、住民税の場合は税金がかかってくるのです。住民税は年末調整で再計算しません。では、どのようにして計算して、徴収しているのでしょうか?

住民税はこうやって計算されている

 給与明細書を見てみると住民税が控除されている方も多いと思います。しかし、この住民税は所得税と違い、概算で徴収しているわけではないのです。

 結論をいいますと、住民税は前年の所得に対して課税し徴収しているのです。もう少し分かりやすくいいますと、給与明細書の所得税は、今年の所得を概算で見積もって税金を徴収(過不足は年末調整で調整する)し、住民税は去年の所得データーを元に計算して徴収するのです。

 ここで、去年の所得のデーターはどうやって分かるのかと言いますと、まさしく去年の年末調整のデーターを元(年末調整を行っていない場合は確定申告のデーターを元)に算出するのです。今年は2014年ですので、所得税は2014年分の税金を住民税は2012年分の税金を徴収されているとイメージすれば分かりやすいのではないでしょうか。

 会社で年末調整が行なわれれば、源泉徴収票というものが配られると思います。いわゆる1年間の給与や支払った税金等が記載されている証明書みたいなものです。この源泉徴収票は従業員だけでなく、税務署や市区町村にも提出しているので、市区町村はこの源泉徴収票を見て住民税を計算し、それを会社に通知して実際給料から住民税が徴収されているのです。

 このタイムラグがある為、去年の所得のデーターを元に徴収しているのです。

 さて、話が戻りますが住民税の税金の計算方法なのですが、基本的には所得税と一緒なのですが控除項目の金額が違うものがあるのです。先ほど、所得税の控除項目で説明した、給与所得控除と基礎控除ですが、給与所得控除額は同じ金額ですが、基礎控除額は実は所得税と住民税での計算において金額が異なるのです。所得税では38万円の控除額に対して、住民税は33万円なのです。

 又、次回のコラムで説明しようと思います生命保険料控除や地震保険料控除の額も所得税と住民税では控除額が違うのです。では給与収入が103万円で扶養親族がいない人がいると仮定し、数字を入れて計算してみましょう。

所得税の場合
103万円(給与収入)-65万円(給与所得控除額)-38万円(基礎控除額)=0(課税所得)
になるので税金がかかりません。
住民税の場合
103万円(給与収入)-65万円(給与所得控除額)-33万円(基礎控除額)=5万円(課税所得)
になるので税金がかかってきます。

 以上述べたように、所得税と住民税は計算が違うので注意が必要です。

 次回はもう少し深く年末調整のしくみや税金の出し方について解説していこう思います。(執筆者:青田 滋樹)

《青田 滋樹》
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青田 滋樹

青田 滋樹

株式会社DS交通 代表取締役 兵庫県出身1985年生。中京大学体育学部卒業。2009年株式会社DS交通を創設(タクシー会社)、同時に経営者としてさまざまな知識を身につける為、FPの勉強を始める。2012年にCFP認定者として登録。主に高齢者を対象に自分自身にあった、第2のライフステージをより良く迎えられるように年金相談やリタイヤメントプランを提案・アドバイスをしている。 <保有資格>:CFP・1級ファイナンシャルプランニング技能士・高等学校教諭一種免許・中学校教諭一種免許・全商簿記1級、損害保険募集人資格及び運行管理者 寄稿者にメッセージを送る

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