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「会社を買いたい」会社が急増中 経営者は業界再編に備えよ

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「会社を買いたい」会社が急増中 経営者は業界再編に備えよ

 7月9日水曜日、国際展示場にて「経営者の為のM&Aセミナー」が行われ、500名以上の経営者が会場に集まった。主催したのは株式会社日本M&Aセンター(東証1部)、日本のM&Aのリーディングカンパニーだ。同セミナーは年に3回全国各地で開催されるが、近年参加者が急増しており、最近では毎回全国で2000名以上の参加者があるという。同社の業績も右肩上がりで2013年度は創業以来の最高益を達成した。(売上高105億円、経常利益54億円)

 なぜ今、日本中の経営者がM&Aに高い関心を寄せているのか、M&Aの現実や企業経営者が知っておくべきポイントは何か、セミナー終了直後に代表取締役の三宅卓氏に聞いてみた。


≪セミナー当日の様子≫

「会社を買いたい」会社が急増している

― 本日のセミナーは大盛況で会場は活気に溢れていました。若い経営者や覇気のある経営者が多い印象でした。なぜ今、参加者が増えているのでしょうか?


株式会社日本M&Aセンター 代表取締役社長 三宅卓氏

三宅氏:本日セミナーに参加頂いた経営者は4:1ぐらいで「会社を買いたい」という経営者が多いです。最近特に買いたいと考えている経営者が増えています。ただ、「買いたい」と考えている経営者のなかにも大きく2通りあります。1つは会社の業績も見通しも良く、更に発展するために買いたいと考えている経営者です。もう1つは逼迫した現状を打破するために買いたいと考えている経営者です。後者の参加者が多いです。


 旧来のビジネスモデルでやっていたのでは、10年先、15年先、大きく成長できないという閉そく感から、今のうちに新しい化学反応が起こせるような会社を買って会社を強くしたいとか、営業力のある会社を買いたい、製造力のある会社を買いたい、というような考えを持っている経営者が増えている事がセミナー参加者の増加している背景ではないでしょうか。

 また会社を売りたいと考える理由のトップは後継者不足です。現在、中小企業の66%は後継者がおらず、深刻な問題となっています。また子供がいても子供が継がないケースや、子供に適性がなく継がせられないケースもあります。

これからM&Aのニーズが高いのは「再編業界」

― どんな業界でM&Aのニーズが高まっていますか?

三宅氏:業界で再編が進んでいる「再編業界」です。具体的には、調剤薬局や病院、クリニック、ヘルスケア関連、塾や学校、食品や食品卸、自動車部品、郵送、ソフトウェアや建築関連です。調剤薬局は今がピークです。売りたい会社があれば直ぐに売れる可能性が高いです。

 「業界再編」と言えば聞こえが良いですが、業界再編=覇権主義ですから、業界は数社に集約されていきます。集約競争に負けると他社に吸収されるという事を意味しますので、陣取り合戦に負けないよう必死にならざるをえません。

 日本は就業者人口が半分になります。全ての業種が売上半分になるので、あらゆる業界で「再編」が起きています。昨年ぐらいまでは後継者不在によるM&Aを考える経営者が増加し、これからピークを迎えますが、既に準備を終えた企業も増えてきています。現在は「再編」に備えるためにM&Aを選択する経営者が増えてきています。その次に来るのが「海外」です。

買われた側の「社員が解雇されるのでは?」は杞憂

― 「M&A」と聞くと敵対的買収のようなダーティなものを想像する方が多いと思いますが、貴社の行うM&Aはどのようなものですか?

三宅氏:弊社が取り扱うのは中堅・中小企業の存続と発展のための「友好的M&A」のみです。買った会社は事業が更に発展しますし、売った会社は後継者問題や先行き不安が解消され、社員に新しいビジョンが開け、社長も創業者利得を取得でき、みんながハッピーになります。

 M&Aは上場企業と中堅・中小の場合とでは全く意味が違います。中堅・中小企業の場合は、敵対的M&Aはやろうと思ってもできません。なぜなら株式を公開していないからです。また、譲渡制限があって勝手に売れません。お金がいくらあっても相手の合意なしには会社は買えないため、友好的買収しかありえません。新聞には上場企業のM&Aしかでませんから敵対的M&Aの印象が強いのではないかと思います。

 大企業のM&Aの場合リストラがつきものですが、中小企業のM&Aは全く逆です。他業種や隣接職種への買収がメインなので、「社員が解雇されるのでは?」と心配される方もいますが、社員は殆ど辞めることはありません。むしろ厳しいところでは「社員1人も辞めさせないようにしてください。1人辞めたら罰則金をもらいます」という条件こともあります。全員雇用が中小企業のM&Aの大原則です。

― 会社のキーとなる重要なノウハウや技術をもった社員を辞めさせない工夫を教えてください。

三宅氏:一番大事なことは、譲渡企業の社員に不安を与えない事です。「買わせて頂きましたが、いまで通り何も変えないでください。従業員の仕事にも一切口出ししません。」と言って安心感を与えることが大切です。

 次は将来のビジョンを語る事です。「私達とせっかく一緒になったのだから、双方の強みを掛け合わせて、もっと新しく面白い事をやろう!」とワクワクする気持ちを共有することです。そうすると社員も新しいビジョンが開けたと感じるので辞めません。

 それでも不安であればプラスアルファを付け加えます。営業マンであればインセンティブが効果的な事が多いです。エンジニアやプログラマにはハイスペックのPC等高度な開発環境を用意することです。この機械を触れるのであれば、ここにいたいと考える方が多いです。管理系の人間に辞めて欲しくない時は、昇進が有効です。課長を部長にする。部長を執行役員にしてあげるのも一つの手段です。それぞれの人の特性を活かしたインセンティブを与えると辞めません。誰を辞めさせたくないのかという事を考えなくてはなりません。

最大の山場は「社内発表(ディスクロ―ジャー)」

― 最大の山場は「社内発表(ディスクロ―ジャー)」と聞きました。なぜですか?

三宅氏:引き返せないからです。社員ディスクローズに失敗して、社員がそっぽ向いてしまうとM&Aによる相乗効果は出せず失敗となります。弊社に相談にくる社長さんにも絶対に周囲に言わないようにしてくださいと伝えています。もし言う場合は私達に相談してもらった上で、言い方や順番も良く考える必要があります。M&Aは秘密保持に始まって、秘密保持に終わります。

 以前、こんなことがありました。和菓子屋さんの案件で良い買い手が見つかり当事者間では譲渡の合意ができていました。しかし、話がまとまった安堵感から社長が中心となって働いてくれている和菓子職人に譲渡の事をポロっともらしてしまったのです。

 十分な説明もなく譲渡の事だけを聞いた職人は「この社長に付いてきたのに…」という思いが強かったこともあり、裏切られたという気持ちが残ってしまいました。この職人は私達が発表する前にメインバンクに駆け込み、銀行役員に譲渡の話が進んでいる事を話して計画を止めて欲しいと頼みこんだのです。結局、一度はまとまった話も社員とメインバンクの反対から全てが水の泡になり、数年後会社の業績が悪化して倒産してしまいました。


10年で変わったM&Aに対する世間の認識

― M&Aの草分けとして23年間ご尽力されてきました。M&Aに対する想いを聞かせてください。

三宅氏:私は23年間、中堅・中小企業のM&Aに携わってきました。買い手企業は現状打破ができて大きく成長できるし、売り手企業はたたむ以外なかったり、たたむ事もできなかった企業が従業員の雇用も守られて、会社も存続して涙を流して喜んで頂いたのを見ていると、もっともっと広めなければならないと感じます。今の日本にM&Aは仕事抜きに本当に必要だと思います。

 日本はまだ「M&A後進国」ですので私達の果たす役割は大きいと思っています。10年前、20年前とは世間の認識も大きく変わってきています。

 例えば会社を売ることになった場合、10年前は経営者仲間から「先代から譲り受けた会社を売るとは何ごとだ!」と言われとても後ろめたい気持ちになりました。しかし現在は、会社を売ると「上手い事やったな。俺にも教えてくれ。」と祝福されます。今後M&Aに対する考え方も更に変わってくると思います。

 また、中堅・中小企業も困っていますが、パパママストアや町工場等の零細企業はもっと困っています。全国の個人商店でもM&Aという経営の選択肢を提供できるよう準備を進めています。

中堅・中小企業社長の一番の資産は「自社株」

― 会社を売却した社長は、その後の人生をどのように過ごされているのですか?

三宅氏:リタイア型の場合、時間に余裕ができるので奥さん孝行のために世界一周や、ヨーロッパ一周に行かれる方もいます。また、地域での活動に取り組み、地元の花火大会のスポンサーになったり、郷土資料館の設立に携わったりする方もおられます。

 一方、グループにとどまり、経営者として引き続き采配を振るったり、経営からは離れて職人として活躍されたり、商品の新規開発に専念するケースもあります。

― 「マネーの達人」はお金に関心の高い経営者も見ていますが、経営者がお金の面で注意しておくべきポイントは何でしょうか?

三宅氏:中堅・中小企業社長にとっての一番の資産は何かというと、「自社株」です。これが個人のバランスシートの中で圧倒的に大きいです。

 例えば全資産が5億あるとして、現預金が1億として、4億が自社株とすると、自社株を現金化して5億にできるのか、それとも病気になって自社株がゼロになったり、その間、現預金も会社に貸し付けてなくなったりするのかとでは明暗が大きく分かれます。もしも倒産にでもなったら連帯保証していますから、現預金から自宅から全部なくなってしまう。という事を考えると自社株をどういうふうに持って行くかということが一番の資産運用なのです。

 また、反対に会社を売って譲渡した経営者で自己破産をしている人もいます。理由は持ち慣れていない大金を持ったからです。現金を7億、8億持つと、みんなが寄ってたかって金融商品を売り込んで来ます。慣れない投資に手を出して損をすると、損を取り戻す為に余計ハイリスクなものに投資します。そして最終的に自己破産します。「マネーの達人」の寄稿者はFPが多いと聞きました。経営者に対して譲渡後のポートフォリオを作ってあげるのもFPに代表される資産運用の専門家が活躍できる分野ではと思います。

成功のポイントは「文化の共有」

― M&A成功のポイントは?

三宅氏:相乗効果が生み出せるか、そして文化が合うかどうかだと思います。文化や価値観が異なる会社とは一緒に経営はできません。違和感のない価値観を持ったところに売るのが大事です。文化を踏みにじられるという思いになると、相乗効果が生まれません。

― 具体的なマッチングの流れを教えてください。

三宅氏:M&Aは企業同士の“お見合い”です。弊社の特徴は問い合わせを頂いた企業様の要望に叶う企業を100名のコンサルタントと独自のネットワークを活用し、総力で探します。また同時に、どのような企業と一緒になることで更なる成長が望めるのかをお客様と一緒に考える「戦略会議」も行います。ここではお客様自身も気がついていなかった思いがけぬ相性の良い企業様とのお見合いを提案する事もあります。

― 会社を買収するとなると資金が潤沢に必要という印象がありますが?

三宅氏:企業規模によります。小さい会社も沢山あり、1千万円~買える会社も沢山あります。資金的にいくら余裕があるというところから会社を探す事も可能ですし、小さい会社でも大きなテコの効果になった成功事例も沢山あります。

― 成功事例を1つ教えてください。

三宅氏:上記よりも少し金額は上がりますが、分りやすい例を1つお伝えします。愛媛県今治市にタオル製造を行う会社がありました。ブランド力と高い品質力はありますが、中国からの安い製品に押され経営が苦しくなっておりました。一方で大阪府に衣料品・雑貨の卸売りを行う会社がありました。この会社は強力な販売力を持っています。

 この両者の経営統合が行われた事で、双方の強みが噛み合わさって、業績が改善しました。統合後の新社長就任式では「今まで通り品質の高いタオルを作ってください。ただ、強い販売力を持った私達と一緒になったのだから、もっと面白い事をしましょう。パリコレクションに今治のタオルを出したいと思います。もっと品質の良い物を作ってください。」と言いました。


― 買収した後に経営が上手く行くポイントは何ですか?

三宅氏:一言では言えず難しいですが、簡単に言うと売り手と買い手の目標を一致させる事です。急激な融合はせず、徐々に融合して行く事が大事です。役割分担と目標設定はきちっとしておく必要があります。

 相手の事を思いやる事も大事です。買収が完了したあと、私はあともう少しお金を出して、元社長の立派な椅子を買ってあげて欲しいとお願いする事があります。買収した側の社長より良い椅子が理想的です。買収された側の社長のイスが隅に追いやられていたら、取引先の人や社員の人が救済型の買収をされたと思われます。逆にとても立派な椅子で良い位置に座っていたら取引先も社員も尊敬するわけです。相手の顔を立てる事が双方のメリットに繋がります。

成長できる会社にしてから息子さんにバトンタッチを

― マネーの達人読者の中小企業社長にメッセージをお願いします。

三宅氏:ほとんどの企業が自然体で大きく成長できるという時代は終わりました。日本は市場が激減しています。そういう状況の中で成長をしたければ新しい分野へのチャレンジや更に付加価値の高い相乗効果の追求が必要となって来ます。戦略を明確に作ってそれの実現に向かってM&Aしていくというのは中小企業にも必要不可欠です。また買い手企業も大きな会社ばかりではなく、小さい会社も多いです。

 また息子さんがいる会社でも今のまま継いでもらうのでは、10年先、20年先に不幸になる可能性が高いです。息子さんをそうさせない為には戦略をしっかり作って実現させて、10年先、20年先までビジョンが開けて収益が読める状態にしてから息子さんに渡してください。その為にもM&Aが必要です。

 また、逆に後継者がいない会社や先行き不安を感じている会社は一刻も早く決断して頂いて譲渡を考える必要があります。決断して動くのは早い方が良いです。遅くなるほど選択肢はなくなります。売りたいと思う時は売れない時で、売りたくないと思う時が売れる時です。会社は自分が人生をかけて育ててきた子供であり、財産です。この記事を読むまで関心の薄かった人も今一度真剣に考えてもらいたいです。

― M&Aを経営戦略の1つとして考えておくべき時代ですね。ありがとうございました。(聞き手、執筆者:北山秀輝)

≪企業データ≫
社名:株式会社日本M&Aセンター
資本金:10億円(東証一部上場 証券コード:2127)
設立:1991年4月25日
事業内容:M&A仲介 企業評価の実施 MBO支援 企業再生支援 コーポレートアドバイザリー 資本政策・経営計画 コンサルティング
企業再編支援
社員数:130名
拠点:東京、大阪、名古屋、札幌
《編集部》
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執筆者: 編集部 編集部

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