相続対策…相続対策…と、世間ではまことしやかに騒がれています。相続対策って何でしょうか? とても、とても、一言ではいい現れそうにありません。

 相続といえば、まず、相続税という税金が思いつきます。国が課税する一定の額を超える資産を所有している方が亡くなると課税される税金です。この税金が課される方は、非常に少なく、年間の相続件数のうち、おおよそ4~5%の方が対象となっています。

来年1月1日から相続税の何が変わるの?

 そして、来年1月1日から、相続税のかかってくる一定の額を超える額が改正されます。その一定の額とは、相続税法上、基礎控除額と呼ばれているものです。

 その基礎控除額は、今年までは、5000万円+1000万円×法定相続人の数(相続の放棄があった場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人の数)で計算され、例えば、配偶者である相続人が奥様と子供2人で合計3人の場合は8000万円が基礎子控除額となります。

 その基礎控除額が、来年1月1日から、3000万円+600万円×法定相続人の数に改正となります。すなわち、今までの60%までが控除されることとなるわけです。この改正で従来の4~5%の課税対象者が、倍近くになるのではとも、予想されています。これで、相続対策として相続税という税金を意識せざるを得ない対象者のかたは、相当数、増えてくるでしょう

適切な相続対策は千差万別

 相続対策として、相続税を意識せざるを得ない対象となる方は、その対策はその人によって千差万別、この対策といった決まり切った対策はありません。

 相続税の基礎控除額をどの程度、超えてくるのか…先祖伝来、都市部やその都市近郊で、多くの土地を所有し、多くの土地活用をしている方の相続税の対策、会社経営者のオーナーの方の相続税並びに事業承継の対策、不動産は都心部に広めの戸建住宅のみ所有しているものの基礎控除額の減額により相続税が気になりだした方、等々。その資産の規模や内容によって、その対策は大きく方向性や具体的方策は異なってくることとなってきます。

遺産分割対策の注意点

 この税金対策の前提ともなる共通する大事な相続対策はというと、それは、やはり、遺産分割の準備です。円満とは行かずとも、円滑な手続きが行えるような準備はしておきたいところです。

 この相続税という税金対策の前提として、なぜ、遺産分割が重要かというと、相続税額の計算上、相続税を減額できるいろいろな特例があります。小規模宅地等の相続税の課税価格計算の特例、配偶者の相続税額の軽減、農地や非上場株式の納税猶予、等々。

 このような特例は申告期限までに相続人間で相続財産の分割手続きが完了している場合にその適用が受けられることとなります。

 申告期限までに遺産分割が完了していない場合は、分割の完了していない財産は、各共同相続人及び包括受遺者が民法(寄与分を除く)の規定による相続分または包括遺贈の割合に従って所得したものとして相続税の課税価格を計算するものとしています。そして、相続税の特例の規定の適用は受けられないということになるわけです。

 ただし、申告期限から3年以内に分割されれば、後追いで適用が受けられる特例のあります。代表的なものは、配偶者の相続税額の軽減や小規模宅地等の相続税の課税価格計算に特例などです。

 ちなみに、農地や非上場株式等の納税猶予は、申告期限までに分割が完了していなければ、その適用は受けることはできないこととなります。

遺産分割対策に有効な遺言書

 このように、とにもかくにも、相続が発生したら、円滑に遺産分割が行えるような準備を生前にしておきたいところです。その準備に、効果的なものは、やはり、遺言書を遺しておくことでしょう。それも、安全を考えれば、公正証書遺言がいいかもしれません。

 そして遺産分割を考える時には、相続税の納付の方法まで考えておきたいところです。いくら、かかりそうなのか、かかってきそうな相続税を金融資産で賄えるのか、金融資産で足りない分はどのようにして工面しようか、土地の一部を売却するか、どの土地を納税用の売却対象の土地としようか、等々の大まかな算段は付けておいたほうがよろしいでしょう。

 そして、税金の下げられる方法や少しでもお金の残せる土地活用や、遺産分割や納税、節税に使えそうな生命保険の活用等を考えていくこととなってきます。このような相続対策は、まずは、何をしていくべきか。当たり前のことを当たり前にしておくことだと思います。

 まずは、自分の財産を改めて見直してみる。何が、どの程度、あるのか、全ての不動産を見てくる。時価相場でいくらくらいになるのか。相続税の評価額がいくらくらいになるのか。そして、子供たちへの思いを整理してみる。例えばエンディングノート等を作りながら、気持ちを整理してみる。

 そして、誰に何を遺してあげるかを考えてみる。事業をしている方は、その事業をどのように継承していくかも考えなければなりません。自分自身のことを改めて見直してみる。例えば、財産であれば、紙に書き出してみる、等々、本来、当たり前のことを当たり前にしておくことが一番に重要なことかもしれません。

 ただ、相続対策の場合は、民法や税法及び不動産の知識をフルに活用しますので、その当たり前のことを知ることは、以外に難しく、当たり前のことを当たり前におこなっておくことは、非常に大変です。将来の相続に不安のある方は、早めに準備することこそが賢明な相続対策となるでしょう。(遺言書:荒木 達也)