「相続対策」パートナー選びに失敗すると痛い目に…

 今年は「相続分野」が非常に注目されている年であり、相続対策の三本柱と呼ばれる「(遺産)分割」、「納税」、「節税」の対策について考える方も多いのではないでしょうか。

 これまで「相続するモノなんてない」、「相続はお金持ちだけの問題」、「まだ元気だから相続対策なんて時期尚早」等といって「相続」について真正面から向き合わずに回避されていた方も多少は、向き合わざるをえなくなり始めているのだろうと思います。

誰に相談すればよいのか?

 では、いざ、相続対策を講じようとしたとき、あなたは、誰に相談すればよろしいのでしょうか…? 税金の事なら、税理士? 或いは、とりあえず弁護士? あながち間違ってはいませんが、厳密にいえば、「相続に強い専門家」を選ぶべきです。

 士業と呼ばれる専門家をはじめ、国家資格保持者は、その業務を行うに当たり、テストをはじめ、様々な参入規制をし、いわば、合格者にのみ、その業務における独占業務を認めています。そのため、例えば、厳密に言えば、弁護士でない者が、「他人のために有償で交渉したり」、税理士でない者が「無償でも税金等に纏わる詳細な相談にのること」等は、違法です。

 しかし、だからと言って、これらの有資格者だからといって、必ずしも、その資格分野の全ての事に長けているかというと、そうでもありません。ほとんどの専門資格には、その業務の中にも、さらに細かい専門分野が分かれます。

 弁護士でいえば、「企業法務」、「企業再生」、「金融法務」、「家事事件(相続・離婚)」等、税理士でいえば、「法人顧問」、「企業支援」、「資金調達」、「記帳代行」、「相続」等、司法書士でいえば、「商業登記」、「不動産登記」、「相続」、「成年後見」等、行政書士でいえば、「許認可」、「外国人在留資格」、「知的財産」、「相続」、「成年後見」等…。

 何が言いたいのかといえば、上記の通り、弁護士、税理士、司法書士、行政書士だからといって必ずしも相続を専門的に扱っているわけでないということです。

具体的な事例

 幾つかの具体的なケースを挙げましょう。

 先日の日経新聞にも掲載されていましたが、遺言を作成したいという相談者の方が、司法書士に作成依頼し、公証人もチェックする公正証書遺言を作成した際のお話し…。結果からいえば、司法書士、公証人ともに、相談者からの聞き取り、確認が甘く、遺言書に記載した預金口座が複数あり、それらの金融機関名と口座番号等が入り混じってしまった遺言を作成してしまったようです。

 そして、実際に遺言を執行して口座の名義変更をしようとしたところ、金融機関より、ご記載の遺言では名義変更ができないと断られ、名義変更が出来なかったという大失態。最終的には、裁判に持ち込まれ、第一審で遺言にはご記載があるが、遺言の主旨としては通るとして第一審で確定判決が出たようです。

 これが、普段、相続という業務を主な業務として行っている司法書士であれば、間違いなく、こんな間違いはしないでしょう。

 先日、私のところに来た案件でもこんなケースがありました。

 私が売主様から売却の依頼を受けている中古のコンパクトマンションを購入されたいという方のエージェントより連絡がありました。超大手のCMが流れている不動産業者です。具体的に話を進めたいということで、詳細の打合せを行いました。なんでも、相続税対策の一環で、お子さんの新居として、贈与税の非課税枠をうまく利用して資金援助をしたいとのことでした。

 しかし、打合せをすすめると、幾つかの「?」が出てきました。キーワードは、「マンションの規模」、「契約・引渡しの時期」。購入検討者は、「平成27年1月に契約をし、2月半ばに引渡しを受けたい」ということでした。実は、このお子さんの親御さんは、住宅取得資金に係る贈与の非課税枠を利用したいとのことでしたが、平成27年1月時点では、この贈与の非課税枠となる制度は存在しない為、非課税で贈与することができません。

 また、このマンションの規模にもハードルがあり、適用対象面積に満ちていない為、例え、仮に、この制度が法律として延長等により施行中であったとしても利用できませんでした。

 さらには、他にもこの贈与額も、このマンションの売買代金の半分以上を支援しようとされていましたが、適用となる金額にも乖離がありました。さらには、支援する金額と売買代金の残(差)額は住宅ローンを利用し、「住宅ローン控除」を利用しようとしていましたが、これもまた、面積要件により適用対象面積に満ちていませんでした。

 この案件で驚いたのは、購入検討者の親御さんは、某業界では実業家であり、きちんと顧問税理士にも相談していたという事、さらには、エージェントである不動産業者も資産税に強い税理士法人と一体となった相続支援サービスを提供しているような会社であるにもかかわらず、これらの点を抑えていなかったという点です。

 相続は、人の一生分の財産に係る「承継」であるからこそ、そこで動く「お金」や「権利」は、正に人の「一生」を左右します。だからこそ、そのパートナーとなる専門家選びは非常に大切であり、失敗すると…。実際に依頼する際には、一度や二度、面談の面談だけではなく、色々と質問をしてみたり、ご友人等にも良い専門家がいないかを確認したりしながら選定することをおススメします。(執筆者:佐藤 雄樹)

この記事を書いた人

佐藤 雄樹 佐藤 雄樹»筆者の記事一覧 (41) http://www.tokyoto-souzoku.com/

一般社団法人東京都相続相談センター 理事
学習院大学卒業後、財閥系不動産会社にて6年半勤務。企業をはじめ、地主・富裕層へのコンサルティングに従事。平成19年以降、会社更生・民事再生・破産案件に対して法律事務所と一体となり企業再生業務に従事。平成23年に相続コンサルティングに特化した(株)brandsを設立。平成25年には相続の実務家と(一社)東京都相続相談センターを設立。法律・税金・不動産等の各専門分野における垣根を超えた相続コンサルティングは各士業から絶大な支持を得ている。
<保有資格>:NPO法人相続アドバイザー協議会 上級アドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産証券化協会 認定マスター、AFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、土壌環境リスク管理者、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、終活カウンセラー
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