今年からの相続増税によってTVや週刊誌等で「生前贈与」という単語を良く見かけるようになりました。相続税の基礎控除減額分の相続税の課税価格を下げるべく手段として生前に贈与で次世代に承継しようというものです。暦年贈与の基礎控除額110万円を活用するのと贈与税と相続税の超過累進税率の違いを見据えての対策です。

 例えば年間200万円を一人の子供に贈与すると200万円-110万円×10%=9万円の贈与税が発生します。

 この贈与を10年間実施すると合計90万円の贈与税の負担となってきます。そして相続税ではこの効果はどうなるかというと10年間で2000万円の相続財産が減ったことになりますので、この2000万円が減ったあとの相続税の超過累進税率が10%超の対象となる場合は、それだけで節税効果が表れることとなってきます。

相続税対策としての貸家建築の注意点

 また生前贈与の贈与税の特例として、住宅取得資金、教育資金、結婚資金等、の特例があります。ここで、注意したいのは、やはり、ブームともいうべき流れでしょうか。

 相続増税時代の到来といった流れで、地主さんの間では相続税対策としての貸家建築がブームとなっているようです。建築業者の貸家建築=相続税対策といった営業攻勢でその気になってしまうようです。

 建築業者が相続財産の全体を把握して遺産分割や納税方法まで包括しての貸家建築の提案で有ればよろしいのですが、どちらというと、その建築地単体での節税効果や資金収支上の建築計画であることがほとんどです。

 相続税がいくら軽減できる効果が得られますとはいうものの、そもそも論として相続税がいくらかかってくるかは把握していない状況であったりしますので、具体的にいくら下がってくるのか、又、全体的に見た資金収支上のメリットがどの程度得られるのかは不明瞭なケースが殆どでしょう。

 この全体としてのメリットとリスクの許容の判断は、いずれにしても自己責任となる訳ですが、それでもメリットばかりの話が多く借入リスクなどのデメリットの話は少ないような気がしています。

生前贈与関連商品の注意点

 このことと似ていることは相続対策と言っては生前贈与を謳い文句に生前贈与を利用した生命保険や教育資金の信託等の加入をすすめてくるケースが思い当ります。

 確かに、遺産分割対策や相続税の節税対策にも有効な手段となり得るものではあります。ここで、注意したいのは、やはりリスクやデメリットのお話をせずに奨められるケースが多いことです。

 生前贈与のリスクやデメリットにもいろいろありますが、むしろ税務上のリスクである名義預金などについては、実に慎重に対応されています。

 贈与契約書は締結してくださいとか、お子様が通常使用されている預金通帳に振り込んで下さいとか、毎年、同じ日付けは避けて下さいとか、毎年同じ金額で振り込まないでくださいとか、この辺りの対応はきちんと説明されています。

 注意したいのは、むしろ老後の生活設計について、きちんとお話をしているかです。

 老後の介護の問題、住居の問題(2世帯の同居を前提に考えていたものの、結局別々に暮らす等)、趣味や趣向(旅行やロングステイの夢等)など、これからの暮し方によってのお金の使い方を確認しているかです。

 この辺りは、余計なお世話的の面もありますので、触れればよいという訳ではないでしょうが、生前贈与で子や孫にいくらずつ渡しておきたいと相談されたときに、老後の暮らし方とお金の話はさせていただくべきと考えています。

 相続財産を多く遺してしまうと相続税での税負担が多くなってしまうとうことはありますが、老後の生活資金はそれとなく多めに残しておきたいところです。

 いろいろなパターンで相続税と贈与税の税金負担のシミュレーションを重ねて、どの程度の生前贈与額としておくべきかは、ご自身で良く考えてみるべきと思います。くれぐれも、保険や信託確保を目的としたセールストークで判断しないでください

「教育資金の一括贈与の非課税制度」を正しく理解しよう

 そして、流行りの教育資金の一括贈与の非課税の特例。一昨年の4月に税制改正で導入されたわけですが、実際には教育資金の贈与ということで何でもこの非課税の申請をする方が多かったようです

 この非課税制度は、あくまでも、将来に向けた教育資金を今のうちに一括贈与するものが対象です。

 例えば、5歳の孫にこれからの小学校、中学校、高等学校、大学、大学院の資金としてMAX1500万円が非課税してもらえるものです。そして、教育資金を学校に支払った都度、その領収書を教育資金管理契約を締結した取扱金融機関に提出することとなります。これで適正に教育資金として使われているかが確認できるようになっているわけです。

 学校の入学の都度におじいちゃんかんから、入学資金や学資の贈与を受けた場合には、上記の非課税申請ではなく、もともとの贈与税の非課税の規定でことたりることとなります。今回の教育資金の一括贈与の非課税は、あくまでも一括贈与した場合で、その都度の贈与の場合は従来の贈与の非課税が適用されます

 いま、生前贈与を検討されているかたは多いものと思います。生前贈与の場合は、以上の点を気にかけてみてください。(執筆者:荒木 達也)