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老後の不安を解消するために知っておきたい「保険に関する10のQ&A」

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老後の不安を解消するために知っておきたい「保険に関する10のQ&A」

 2015年も早くも1か月が過ぎ、2月になりました。先月1月は「生命保険」の保険数理学の理論構成に大きく貢献したエドモンド・ハレー(Edmond Halley。1656年10月29日 英国で生誕、1742年1月14日死没(満85歳没))が273年前に亡くなった月でもあります。一般的に彼は「ハレー彗星」を発見した天文学者として有名ですが、実は保険数理学の基礎である「大数の法則」が人間の寿命にもあてはまることを実証したのも彼でした。

目次

前置き:保険数理学の基礎である「大数の法則」とは

 「大数の法則」とは、例えばサイコロを振った場合、1回振っただけでは1の目がでるのか、2の目がでるのか、あるいはどの目がでるのかは定かではありません。しかし、何万回、何十万回と数多く振った場合、1から6までのそれぞれの目がそれぞれ6分の1ずつの割合で平均して出てきます。数少ない経験では何の法則がないことでも、数多くの経験を集めるとある決まった法則や傾向が表出します。少数では不確定なことも、大数では一定の法則がある。これを「大数の法則」と言います

 話は約300年前の英国に遡ります。1660年に設立されたイギリス王立協会は、当時全ヨーロッパの自然科学者の交流場となっていました。1680年、王立協会は数学的手法により人間の生命・寿命について研究をすることを決めました。その研究を任されたのがハレーでした。


≪エドモンド・ハレー(Edmond Halley)≫

 そこで、彼は、住民の死亡記録を詳細に残していることで知られていたドイツ(現ポーランド)のブレスラウ市の記録を詳細に調べ、死亡年齢の統計的解析を行ないました。ブレスラウ市はヨーロッパの中央に位置するこじんまりとした都市で人口の転出入が比較的少なく、人間の寿命を統計的に調べるのには適していました。

 たくさんの人間の出生や死亡の記録を集めていくと、ひとりひとりでは分からなかった人間の寿命が、大勢の人の調査からある法則性があることが分かってきました。死亡率が年齢とともに急激に上昇曲線を描いていくことも判明しました。

 結果、「大数の法則」がサイコロだけでなく、人間の寿命にもあてはまることが実証できました。この研究をまとめたものが、1693年に発表された彼の「哲学論叢」のなかの「ハレーの死亡表に関する論文」で、そのなかの表が「ハレーの死亡表」と言われています。

 今では毎年当たり前のように公表されている「寿命」ですが、当時は人間が何歳まで生きるのかは定かではなかったんですね

 ハレーはこの研究に基づき、終身年金に関する論文を発表し、これによってイギリス政府は加入者の年齢に応じた適切な保険料で年金サービスを供給することができるようになりました。ちなみに現在、民間の個人年金保険の加入保険金額が最大の国は、日本ではなくアメリカでもなくイギリスです。

 一方、ハレーのこの研究は保険数理学の発展に強い影響を及ぼし、今日では人口統計学上、重要な出来事と見なされています。

 当時の生命保険は、加入年齢が45歳までと年齢制限があったり、面談による印象など、根拠の薄い理由で加入を断るなど、非常に原始的なものでした。46歳になった英国の数学者ジェームズ・ドドソン(1710~1757)は、そろそろ年だから生命保険への加入を希望しましたが、「アミカブル・ソサイエティ」(今で言う「共済」的組織)で年齢を理由に加入を断られてしまいました。

 それに不満を感じたドドソンが上述のエドモンド・ハレーの死亡表を活用して近代生命保険の基礎ともいえる理論を生み出します。そして、彼は生命保険会社の設立を企図しますが、皮肉なことに志半ば47歳で病気で死んでしまいます。

 しかし、彼の努力が近代生命保険の発祥に繋がり、1762年にイギリス・ロンドンにThe Equitable Life Assurance Society(英国・エクイタブル生命)が設立され、ドドソンによって考えられた近代生命保険の根幹とも呼べる理論によって運営されました。

 以上、ハレーの話から近代生命保険発祥までと、前置きが長くなりましたが、今月のコラム・タイトルは、「老後の不安を少しでも解消するために知っておきたい保険に関する10のQ&A」です。

 多少なりとも、多くの人が年齢が上がると同時に老後に不安があるようで、生命保険についての問い合わせが増えてきます。260年前に生きた数学者ドトソンと一緒で、人間の不安は昔も今も変わらないようです。

 年をとってから、今まで生命保険に加入してなかった人が、加入しよう考えたり、定年間近に現在加入中の生命保険がどういう内容なのか気になり始めたりするようです。そこで今回はQ&A形式で「生命保険」と「老後」にまつわる皆様の不安を少しでも解消したいと思います。

老後の不安を解消する保険に関する10のQ&A


Q1 「私は40歳独身男性です。老後が心配なので最近生命保険のことを調べ始めましたが、何に加入したら良いか分かりません」

A1 「今後も結婚の予定がないようでしたら、死亡保険の保険金額は多くとる必要はありません。葬式代ぐらいの300万円程度の終身保険(できたら、インフレリスク対応型が望ましい)、病気による長期療養リスクや特定疾病リスクをヘッジするための最新の医療保険、そして重要なのが老後生活資金をそろそろ計画的に用意していかないといけないということです。

 老後生活が始まるまで残り25年程度しかないことになります。公的年金だけでは暮らしていけないのは既にご承知だと思います。老後年金資金を自己責任で用意しなければならない割合は年々増えていきます。今から個人でも年金保険をかけるようにしましょう。今なら定額個人年金保険と変額個人年金保険を組み合わせるプランが最適でしょう」

Q2 「会社に来る生保レディから加入した保険ですが、数年毎に言われるままに保険を転換(加入中の保険を下取りし、新しい保険に加入し直すこと)してきましたが、定年間近になって保険料が倍になると言われました。どうしたらいいでしょうか」

A2 「大手日本社が販売している生命保険は、更新型定期付終身保険かアカウント型生命保険と呼ばれるもので、10年~30年等の間隔で更新することで同じ保障を継続できます。

 但し、更新時にそのときの年齢で保険料が再計算され保険料は上がり、かつ払込期間終了後は、一部の保障が継続できなくなったり、制限が付いたりするすることがあります。安価な保険料で大きな保障がとれたのは若いうちで、年齢とともに同じ保障を継続して得るならば保険料コストは増大していく商品です。

 今現在の自身の健康や家族の状態からこれから必要な保障内容は何か、信頼できそうなFPにコンサルティングしてもらいましょう。その上で現在の保険で残す部分、外す部分、あらたに必要となる保障をどう調達するか、検討すると良いでしょう」

Q3 「数年前に乳がんで手術をしました。今は抗がん剤治療や定期的な検査を受けていますが、再発や転移はしてません。そのとき保険金を受け取りましたが、今後が心配です。特に年金生活になってから再発したらどうしようかと不安です」

A3 「現在生命保険会社が厳しく査定する病気の一つが「がん」です。それは現時点で寛解はできるものの、完治できる治療法がないからです。

 しかし、生命保険のほうも現代のがん治療技術の向上とともに、保険商品を改定・新発売してきてます。貯蓄によるリスクヘッジには限界ありますので、今後の不安に対処するためにも保険を活用したいところでしょう。必ずしも医療保険やがん保険ばかりがソリューションではありません。お金に色はありませんので、加入可能な保険商品をまずリスティングすることから始めたいですね。

 病気入院中以外なら加入できる生命保険もあります(緩和型ばかりではありません)。現在発売されている各社保険商品について商品知識豊富なFPのコンサルティングを受けることをお勧めいたします」

Q4 「65歳男性です。今まで掛け金が同じ共済にずっと加入してきましたが、先日共済から通知が来て、今後5年単位に保障が段階的に削られていくようです。病気による入院で保険金がでなくなったり、死亡保険金も削減されていきます。保障期間末期には怪我による入院や怪我による死亡しか保障しないようです。どうしたらいいでしょうか」

A4 「保険を考える前に、今後必要な保障は何か、まずそれを考えることが大切です。貴方は結婚されて奥様がいますか、それとも独身ですか、または事実婚の場合もありますよね。子供はいるのか、他の家族構成はどうなのか、病気をしたときに貯蓄だけで治療費や入院時付帯費用は賄えるだろうか、亡くなった時の葬式はどうしたいのか、保障設計する前に他にも明らかにしたい点がいくつもあります。それらを明らかにしたうえで必要な保障をどう揃えていっていいか検討したいところです。尚、年齢的に必ずしも生命保険が最適解でない場合もあります」

Q5 「職場に毎日のように来る生保営業のオバサンがウザイ。友人が生命保険会社に勤務した途端、人間が変わったように営業に来る。生命保険は胡散臭い。若い時は無視してきたが、今年結婚することになった。彼女が保険について心配している。どうしたらいいのか」

A5 「他の金融商品と異なり、生命保険はご自身が万が一のときに遺族となった家族を守る商品です。また医療保険やがん保険等、ご自分自身を守る商品もあります。また老後の資産形成に役立つ商品もあります。

 営業マンのなかには、会社からのノルマと自分の営業成績のために働いている人もいるでしょう。しかし、それはどこの業界でも同じことでしょう。商品に罪はありません。それでも嫌なら生命保険は加入しなくてもいいのではないでしょうか。税金や社会保険料と異なり、あくまで任意に加入するものですから」

Q6 「公的年金が今後あまり期待できないと言われてます。老後を考えて資産形成したいが、生命保険を活用することができるのか」

A6 「活用できますが、加入年齢次第で選択する商品は異なります。若い方の場合は積立期間を長くとれますが、老齢の方はそういう訳にはいかないからです。主に貯蓄性がある保険商品である個人年金保険か終身死亡保険を選択することになるでしょう。

 養老保険は現在低金利のため商品性が著しく悪く選択枝にいれるのは難しいでしょう。円建商品もあれば外貨建商品もあり、また元本確保型の定額保険もあれば、元本保証がないハイリスク・ハイリターン型の変額保険もあります。月払や年払商品もあれば、一時払商品もあります。自身のリスク許容度にあわせて商品選択していきましょう」

Q7 「現在、お一人様を満喫中の30代女性です。唯一の不安は老後です。当然私が死ぬ頃には両親も他界しているでしょう。兄弟姉妹はいません。私が孤独死した場合どうなるんでしょうか」

A7 「持家か賃貸で暮らしてるかによって、その後が異なってくると思います。賃貸については、孤独死が発生した場合、その部屋の残置物処理や原状回復費、空室発生及び家賃下落による慰謝料等の損害賠償費が発生します。親族がまったくいない場合や相続放棄をしている場合は、家裁に相続財産管理人の選任を要求する必要があり、その費用も家主や管理会社にかかってきます。

 昨今全国的に孤独死が増えてきたことにより、家主や管理会社が契約者となる孤独死保険が数社より発売されています。原状回復費や未収家賃などを補償してくれる保険です。身元保証人が生きているとも限らないですから、入居者が万が一のときの緊急連絡先や身元引受人を常に把握しておくことが、これからの家主や管理会社には求められるでしょう。尚、持家の場合はこの手の保険はまだありません」

Q8 「45歳男性です。今年念願かなって結婚することになりました。彼女は30代前半の女性です。子供を欲しがっています。もし子供ができたら、その子が大学生になる頃に私は定年を迎えることになります。こういうケースの場合、生命保険は何に入っておけばいいのでしょうか」

A8 「まず、FPのコンサルティングを受け、夫婦で今後のライフプランニング(人生設計)やキャッシュフロー(生涯収支予想表)をつくってください。

 住宅を買うのかどうか(住宅ローンをかかえるのかどうか)、子供を何人欲しているのか、その子たちの教育進路の希望は何か、今後の世帯収入や退職金はいくらぐらいを予想できるのか、自営業なのかサラリーマンなのか(公的保障が異なる)、等、これらが明確になった上で、どんなリスクが潜在的にあるか明確にしましょう。その上でリスクヘッジである保障設計をするといいでしょう。まず商品ありきではありません」

Q9 「私は生活に不自由はしないぐらいの資産を持っている70代の男性です。保険も今まで加入すら検討したことがありませんでしたが、年をとってからお守り代わりに加入してみようかなと考えています。何がお勧めですか」

A9 「生命保険は自由意志による助け合いの制度です。自身でリスク所有が可能な資産があるのであれば、生命保険に加入する必要性はありません。但し、相続対策として生命保険が有効策の一つだと言うことも頭の隅に置いておきましょう」

Q10 「保険料が上がっていくので困っています。このままあがっていったら年をとってからいくらになるか不安です。35歳男性で家族持ちです」

A10 「商品によっては保険料が一定ではないものがあります。例えば外貨建保険。そのときの為替レートで外貨を買い、それで保険を購入する仕組みですから、円安が進行している昨今のような状況では、毎月の円建保険料は上がっていきます。

 しかし、円高のときはその逆に保険料は下がります。また、更新型定期保険やアカウント型保険というのがあります。これは主に大手日本社が販売しているもので、更新年齢があらかじめ定められていてます。その更新年齢が来るとそのときの年齢で保険料が再計算され保険料が上がります。貴方がどのタイプの保険に加入しているのかどうか、まず調べてみてください」

 最後になりましたが、「まず商品ありきで考えるのではなく、今後自分にはどんな保障が必要なのか」から考えていきましょう。それを親身にコンサルティングするのがプロのFPの仕事ということになります。(執筆者:伊藤 克己)

参考文献:「生命保険物語-助け合いの歴史」(財団法人 生命保険文化センター)、「生命保険 wiki」

《伊藤 克己》
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伊藤 克己

伊藤 克己

ゆうゆうFP事務所 代表FP(現在閉鎖) 電機・半導体メーカー退社後、外資系生保と乗合代理店で実務を学び、独立系FP事務所を開業。リスク・ファイナンシングを現場実践している「実践派FP」として顧客利益優先に活動。 寄稿者にメッセージを送る

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