[相続物語(3)] あなたは何時までも格好良くいて。妻の言い分。夫の言い分。

 

「深堀君今日はありがとう。今日は二人のおごりだから沢山飲んでくれ。それでは、公正証書遺言に乾杯!」

 と、いつもの居酒屋で飲んでいる。今日は公証人を紹介してくれた深堀へのお礼の飲み会。サンデー毎日の年金たちは暇を持て余しているので、何時でも集まれるがそれなりに飲む理由は必要らしい。

 深堀は、少年野球で二人の一年後輩である。住宅メーカーで営業をしていたが定年の2年前の58歳で早期退職して相続不動産コンサルタントとして起業している。

しげちゃん:
深堀君から公証人を紹介してもらえたので、二人とも公正証書遺言を作成する事が出来たよ。これで、妻も安心してくれたし夫としての責任も果たすことが出来たよ。ありがとう。

あの先生とのお付き合いは長いのか?

深堀:
しげ先輩、中島先輩。今日はごちそうになります。先生は、私がサラリーマン時代からの付き合いで、家を建築していただいたお客さんでもあるんです。起業後も仕事をお願いしています。
しげちゃん:
深堀は先生にどんな仕事を頼んでいるんだ?
深堀:
先生にお願いしているのは、公正証書遺言、成年後見人、法人設立の定款や最近では家族信託についても相談させていただいているんです。
しげちゃん:
相続に関する仕事をしているって聞いていたけど難しそうだな。事務所は、自宅の2階の子供部屋って聞いたけど、お客さんは来るのか?
深堀:
事務所にお客さんが来ることは殆どありません。来てくれるのは、住宅メーカーの営業マンや建築士、不動産業者、税理士といった仕事のパートナーだけです。長女が結婚して空いた子供部屋を事務所にしているので、広さも6畳ぐらいしかないんです。宅地建物取引業も登録しているのですが応接セットを置くスペースもありません。
中島:
深堀は相続の専門家だから聞きたいんだけど、もめている方の相談にものっているのか?

今、友達が争族で悩んでいるんだ。出来たら力になってあげて欲しんだ。ご主人が1月末に亡くなり子供がいなかったので、義兄から法定相続分は相続したいって言われて困っているんだ。

遺言書がないので法定相続分で分けるしかないことは理解しているが、その場合は、家を売って分けるか? 遺してくれた預金からお金を渡すか? なんだけども自分の老後のことを考えて毎晩眠れないそうなんだ。

深堀:
中島先輩。私は、もめている方の相談はお受けしていません。相続トラブルの法律行為は弁護士しか出来ないのです。しかし、先輩のお友達のこととなればご協力はさせて頂きます。その方が希望されれば、一度お会いしましょう。しかし、私が知恵は出しますが、実際に動いていただくのは先輩方にお願い出来ますか?
しげちゃん:
面白そうだな。最近、定年仲間でも“生き甲斐”をなくして鬱になったり、アルコール依存症やギャンブル依存症になったりするやつが増えてきている。俺たちが今までの経験を活かして、役に立つことが出来て喜ばれるならやってみたいよな。

最近、家でごろごろしている事に妻は不満なんだそうだ。俺にももっとちゃんとしてほしいって言うんだ。まぁ俺だって言いたいことはあるんだけどな。

妻の言い分としてはこうなんだ。
・一日中パジャマでいないで
・仕事を見つけてみたら
・ごろごろしてないで趣味をつくって
・何時までも格好よくいて

俺だって夫として言いたいことがある。
夫の言い分
・今までストレス社会で生きてきたのだからのんびりさせて
・仕事をしたいと思っても俺に出来る仕事はない
・仕事一筋に生きてきたので今更趣味なんて持てない

中島、俺たちでも社会に役立つことが出来れば妻のことも見返してやれるよな。

中島:
しげちゃん。俺も同感だけど何からはじめればいいかわからない。それに助けてあげられる方法はあるのか?

コバの希望としては「家を売りたくないし預金も減らしたくない」。それでもご兄弟の相続分は用意しなければならない。どう考えてもむりだよな。

深堀:
自宅を売らずに預金も減らさない方法は提案できると思います。

まずは、相続税評価額の把握をする事です。まずやってほしいのは先輩方のところにも固定資産税の支払い通知が来ますよね。その通知をコバさんから預かってきてください。そして、先輩方に調べていただきたい事があります。

しげ先輩は、元JAの人脈を活かして「リバースモーゲージ」を調べてきてください。そして、この辺の一戸建て貸家の家賃相場についても調べてきてください。中島先輩は、元保険会社の経験と人脈で養子縁組を調べてきてください。そして、遺産分割協議書についても調査をお願いします。

それでは、一週間後に私の事務所でお会いする事でよろしいですか? これを機会に相続の基本についても理解してください。

 二人は、次の日から人脈を頼って調査を始めた。夫々の奥様は夫が珍しくスーツを着て出掛けるものだからビックリしたそうです。しかし、最初は浮気じゃないかと心配していた奥様方も理由を聞いて応援団になってくれたそうです。

 つづく(執筆者:岩宗 繁樹)

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この記事を書いた人

岩宗 繁樹 岩宗 繁樹»筆者の記事一覧 (17) http://www.teisyaku.net/

全国定期借地借家権推進機構連合会の調査研究 理事
埼玉県定期借地借家権推進機構 事務局長
一般財団法人 相続土地活用研究会 代表
1954年11月宮崎県生まれ。都内の大学を卒業 平成24年に積水ハウス株式会社を早期退職して株式会社ライフステージらしくを設立。サラリーマン時代に300棟以上の賃貸住宅や住まいの建築のお手伝いをしてきた経験を活かして、地主さんの相続対策、土地活用のコンサルタント、ユーザーの為の持家作戦のサポートをしている。平成6年に日本初となる本格的定期借地権分譲事業である、さいたま市(旧大宮市)の14区画を担当したことで定期借地権事業の実務家の第一人者として業界では認識されている。最近は、「地主さんの相続対策」「家族信託と定期借地権」「無借金の土地活用」「目からウロコの持ち家取得」etcとして、JA・住宅メーカー・実務家向けにセミナー講師をし、分かりやすくて面白いという評判を得ている。還暦で電子書籍を出版しましたので、「あなたにも電子書籍が簡単に出版できる方法」のセミナーを準備中です。
埼玉県定期借地借家権推進機構のホームページhttp://www.teisyaku.net/

<保有資格>
不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、FP技能士2級、上級定借アドバイザー
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