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私立の小中高にある「寄付のお願い」

入学式後、郵送か直接親御さんに配られる封筒があります。
中身は、学校で題名が若干異なりますが、
という手紙です。
意外なお願いにびっくりされる親御さんは多いです。
筆者自身、子どもを私立の中高一貫校へ入学させて、入学式の時に受け取った「入学祝記念寄付金のお願い」という手紙の内容に、寄付するべきかどうか迷いました。
寄付金や学校債のお願いが来るのはいつ?
寄付金や学校債のお願いが学校から来るのは、
・ 学校の創立記念事業
などです。
最近では、開成中・高が創立150周年事業の一貫で高校の新校舎建設のための寄付金を卒業生や保護者などにお願いしています。
最高金額と平均金額
少し資料は古くなりますが、「プレジデントFamily」2012年11月号で、首都圏の寄付金と学校債の募集ランキングを発表しています。
入学寄付金のみで50万円、入学寄付金と学校債両方を求められて合計80万円と高額なところはあります。
この資料では、入学寄付金の平均は「20万円」と発表されています。
地域差や調査年を考えると、寄付金もしくは学校債の募集金額は10〜20万円です。
寄付金と学校債の違い
寄付金というのは、学校経営の助けになればと金銭的・財産的余裕のある家庭の方から善意でなおかつ任意で行うというのが本来の姿です。
学校債も本来は任意で行うものとされていて、親御さんから預かったお金を
という性質のものです。
学校債は卒業時に親御さんが入学時に学校へ渡した金額そのまま返金されるケースがほとんどですが、寄付金は返還されることはありません。
寄付金と学校債を集めてからの使い方
寄付金や学校債への出金依頼は、入学時が一番お願いしやすいのですが、周年記念事業でお願いする場合もあります。
さて、集めたお金は何に使われるのでしょうか?
学校によっては、PTA総会資料やホームページで公表する学校が多くなりました。
入学時に集められた寄付金は、学校にとっては微々たる金額です。
収入は入学金や授業料などの学費納付金がほとんどで、寄付金は5%未満だそうです。
学校債についても、資金運用で収益はあるものの大きな収益には結びつきません。
学校としては、
という考えです。
使い道としては、学費納付金にも設備費は含まれていますが、校舎の大きな修繕費用などはのぞいて、「設備費」として寄付金を計上しています。
「一号基本金」
寄付金を「設備費」に充てるかというと文部科学省が定めている「一号基本金」といって、私立学校が永続的に学校運営を維持するために資金を確保しておく決まりがあるからです。
寄付金や学校債運用で得た利益は「一号基本金」として確保する必要はあるのですが、今の学校側としては設備費として運用しかないのでしょう。
「新校舎建て替え」の寄付も、一号基本金として扱われることはできますね。
寄付金・学校債の扱い

「進学」や「進級」のたびにお願いされる
私立小学校に入学する場合も、寄付金・学校債のお願いはきますが、中学・高校へ進学する時にもお願いは必ずやってきます。
寄付金や学校債は小学校の方が若干高めです。
と思っていると、中学そして高校へと進級してから「寄付金・学校債のお願い」をされて驚きます。
慶應義塾は入学時だけでなく、学年進級時にも寄付金のお願いが来ることで有名です。
昔は入学金を取らなかった学校が多かった中高一貫校でも、今は中学から高校へ進学する時に、寄付金はもちろん、入学金を取られるという学校が多いです。
「寄付金・学校債はとらないし、やらない」という学校もあり
首都圏だけで見ると、2012年の段階では、寄付金や学校債の募集を行っている学校は4割程度です。
また地域により「寄付金・学校債は当たり前」というところもあり、高額な寄付金額を入試説明会で話す学校も存在します。
その中で
という学校もあり、学校ごとで取り組み方に差が出てきています。
首都圏で有名な麻布中学は入学時の寄付金は20万円です。
有名な進学校でも、ほぼ標準的な金額提示をする学校もあります。
「任意」の解釈
筆者の知り合いで、寄付金を払っていない人は
と言います。
お願い状の中で「任意」という一言があれば、「強制ではなく、個人の自由」という解釈はできます。
ですが、まれにお願い状では「任意」と書いているはずなのに、学校の事務所から督促状をかけられるケースはあります。
その際は学校側との話し合いになりますが、最終的には学校側から折れてくれることがほとんどです。
「任意」であれば、支払いを拒否することはできます。
しかし快適な学校生活を送らせたいと願うので、支払わずに
と心配するよりは、支払ってしまった方がスッキリするのも事実です。
無理をして通えなくなってしまうのも、親として避けたいことです。
私立の学校を選択するときには、「寄付金」や「学校債」が通っている間でいくらかかるかを調べておくことが大切です。

寄付金・学校債の新しい使い方はあるのだろうか?
現在のところは、設備の充実や大改装・新築に使われることが多いです。
最近は優秀な成績を修めている生徒さんに「学費免除制度」が行われています。
大学進学時の「奨学金制度」は社会人になってからの返済問題がクローズアップされています。
「利子なしの奨学金制度」が寄付金や学校債で設備以外の余剰金で出せれるようになればいいと思います。
学校への寄付金についての税金優遇措置
2016年から始まっていて、創立周年記念事業でこの制度を使う方は多いです。
税金優遇措置は、学校のホームページで掲載される場合もあります。
入学寄付金額次第では、確定申告をして微々たるお金しか戻らないということもあります。
入学寄付金・学校債は、「将来の夢の足し」と考えてみてはいかがでしょう。
我が子や他の子の、「ちょっとした夢へのお手伝い」という考え方が一番いいのかもしれません。(執筆者:笹倉 奈緒美)