「株式投資」は経済が低成長でも儲かる その理由は「株価形成の原理」にあり

数年前まで、

「日本経済は、人口が減少して低成長なので、日本株に投資しても儲かるはずがない」

という意見をよく耳にした。

株式投資は高成長でなければもうからない?

その後、株価が上昇したのでこうした声を聞かなくなったが、近年は、外国株への投資を正当化する意見として、

「新興国をはじめとして世界の経済は成長するから、国際分散投資は儲かるはずだ」

という声を聞く。

どれの意見も、「株式投資は高成長でなければ儲からない」という前提で述べられているようなのだが、この認識は正しくない

株式投資は、利益成長が小さい(あるいはマイナスの)企業に投資しても十分儲かるし、従って、低成長な国の株式を買っても儲かるはずなので、安心して欲しい。

その理由は、株価形成の原理にある

手短に結論を言うと、

予想される将来の利益が高成長でも低成長でも、現在の株価が形成される時に予想が株価に反映する。

だからその株価で投資した時に期待されるリターンは、リスクに見合ったものになるはずだということなのだ

株式投資は低成長でも儲かる

具体的な例で説明する。

一株当たりの利益が100円で利益成長率0%の予想の場合

例えば、現在の一株当たりの利益が100円で、将来の予想としてこれがずっと続く(利益成長率0%)としよう。

一株当たり利益とは、税金を払った後の純利益を発行株数で割って求める数字で、例えば純利益が100億円で、発行株数が1億株の会社であれば、一株当たり利益は100円だ。

株式に投資する投資家は、将来得られる結果が不確実なので、確実に結果が得られる利回りよりも高い利回りを期待する

確実に得られる金利(リスクフリー・レート)に何らかの追加的な利回りを求めるが、これを「リスク・プレミアム」と呼ぶ。

株式に投資する場合のリスク・プレミアムは、諸説あるが、現在年金基金などの機関投資家が使っている数字は大凡5%だ。

現在の金利を0%として、リスク・プレミアムが5%だとすると、株式投資家が株式に要求する利回りは5%なので、現在の株価で投資した時に将来の利益を得ることで5%の利回りが得られるように、現在の株価が形成されることになる

将来ずっと続く100円の一株当たり利益を得ることで年率5%の利回りを獲得するために適当な現在の株価は、将来の利益を利回り5%で割り引いた割引現在価値の合計として求めることができる。

これは、高校2年生の数学で出てくる「等比数列の和」の公式で簡単に求めることができて(忘れた方は、お子様に聞くか、ネットで検索するか、してください)2,000円が答えだ。

2,000円で投資できるなら、期待できる収益率が年率5%になる

ここで、今期末には100円の利益が、将来毎年3%のペースで永続的に成長すると仮定しよう。

先ほどと同じ前提で株価の理論値を求めると、5,000円になる。

利益成長率は高いが、投資する金額も大きいので、この場合の投資収益率の期待値はやはり年率5%になる

100円の利益が毎年マイナス3%のペースで減っていく場合

さらに別の例として、100円の利益が毎年マイナス3%のペースで減っていくとしよう。

マイナス成長だとしても、この利益を得るための株価はゼロではなく、先ほどと同様に計算すると、理論株価は1,250円になる。

1,250円で投資した場合に期待できる投資収益率は同じく年率5%だ。

≪割引率5%で評価した時の今期一株利益100円の株式の理論株価≫

日本企業の利益成長率は日本経済の成長率の影響を受ける

日本企業の利益成長率は日本経済の成長率の影響を受けるだろう。

また、日本経済の成長率は、今後、あまり高くはないかもしれない

しかし、このことは、多かれ少なかれ、多くの人が知っていることだ。

現在の日本の株価が将来の日本経済の成長率、ひいては日本企業の利益成長率を過大評価したものなのか、過小評価したものなのかは、正確には分からない。

しかし、高成長な国の経済と株価も、低成長な国の経済と株価も、おおむね適正に評価されているとするなら、それぞれの株価で投資する時の期待収益率はリスクのない資産で得られる金利にリスク・プレミアムを足したものになる

今の株価が、先ほどの設例でいう2,000円的な状況なのか、1,250円的な状況なのか、あるいは5,000円的な状況なのかは分からないが、将来の成長率が株価に適正に反映しているとするなら、今の株価に投資すると、「金利 + リスク・プレミアム」が得られると期待できるのだ。

なお、念のため申し上げておくが、将来の投資収益に利益成長率の変化が無関係だと申し上げたいのではない

将来の投資収益に利益成長率の変化が無関係ではない

利益成長率の予想が0%に上方修正される場合

例えば、先ほどの「利益がマイナス3%成長で、株価が1,250円」だった状況にあって、利益成長率の予想が0%に上方修正されると、株価は2,000円になって大きなリターンが発生して、その後にも年率5%の収益が期待できる

もちろん、逆のケースが発生することもある。

いわゆるバブルの結果1989年末に日経平均で3万8,915円を付けた日本の株価は、その後大きく低迷したが、先の例では、経済と企業利益の成長予想が悲観的に修正されて、株価5,000円のケースが2,000円、1,250円に向かって動くような事態が起こったのだと考えると大筋では納得できよう

現在の日本の株価が将来の日本経済の低成長を十分反映したものであるなら、現在の株価での投資は十分儲かっていい。

最後に

少しは安心してもらえただろうか。

もっとも、株価は将来を過小評価するもあれば過大評価することもあるし、経済や企業利益の成長率の予想が外れることもあるので、「必ず儲かる」とまで言えるものではない。(執筆者:山崎 元)

この記事を書いた人

山崎 元 山崎 元»筆者の記事一覧 (12)

経済評論家
株式会社マイベンチマーク 代表取締役
1958年北海道生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、野村投信、住友生命保険、住友信託銀行、シュローダー投信、NBインベストメントテクノロジー、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、第一勧業朝日投信投資顧問、明治生命保険、UFJ総合研究所に勤務。楽天証券経済研究所客員研究員、国家公務員共済組合連合会資産運用委員会委員。1994年東洋経済高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。2005年1月に株式会社マイベンチマークを設立し代表取締役に就任。
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