「銀行では増えないから運用しよう…」という考えは危ない! 「投資信託」が初心者向きではない理由

なぜ資産運用をしようと思うのでしょう。

老後が心配だから…

銀行に預けていてもお金が増えないから…

退職金が出て、運用資金が確保できたから…

人それぞれ運用を始める動機は違うでしょうが、これらの「思い」だけで運用をはじめるのは非常に危険です。

運用の本質を理解せずに、「思い」だけで資産を形成できるほど、運用は簡単のものではありません。

なぜ資産運用をしようと思うのでしょう。

個人投資家」という言葉を耳にすることがあると思います。

でも投資家という資格があるわけではなく、投資家になるのに一定期間の研修も必要なく、今すぐにでも誰でも投資家を名乗ることができます。

医者(ドクター)になるには、大学医学部入試という難関を突破し、6年間の勉強の後、医療機関での研修(インターン)を経て、初めて医者として患者さんを診ることができます。

弁護士になるには、大学やロースクールという教育機関を経て、難関である国家資格を取得して、はじめて弁護士を名乗ることができます。

人の命や人生にかかわる仕事だからこそ、医者や弁護士は、高度な教育や一定期間の研修を必要とし、訓練を課すことを義務としているのです。

また、進化する技術や法律改定など時代の変化に敏感に対応し、常にスキルアップや知識のブラッシュアップを心がけることで、瞬時の判断を間違わないように努力しています。

個人投資家には、これらの義務は一切ありません。

「大切なお金」を運用するにも拘らず…です。

(投資顧問業を営む場合を除く。)

運用を始めるには「覚悟」が必要

運用を始めるには「覚悟」が必要

投資初心者は「含み損」への耐性が非常に弱いことが考えられます。

投資初心者には、損失を抱えると運用そのものをあきらめてしまう人が多いように見られます。

一度の損失だけで、二度と運用の世界には戻ってこない人もたくさんいるのではないでしょうか。

資産運用をする際には「含み損を受け入れる」という覚悟は必要になってきます。

「含み損」はあくまでも評価上の損失で、たとえば運用商品を解約しない限り、損失額は確定しません。

ただ損失を確定したくないという思いから、含み損をそのまま長期間放置している人もいます。

この状態を、悲哀を込めて「塩漬け」と呼ばれていますね。

銀行に預けていてもお金が増えないなどの理由から、含み損に耐える覚悟も持たずに高利回りを求めて運用の世界に入ってくると、ただ利益ばかりに固執して「塩漬け」状態になる人が多いように思えます。

含み損を受け入れる覚悟をすると言っても、それは闇雲に損失を受け入れることではありません。

事前に「含み損」を抱えることを想定しているかどうかが重要なのです。

運用で重要なのは「環境認識」

運用を始めるにあたってもっとも重要なのは「環境認識」です。

運用で重要なのは「環境認識」

投資初心者の方は「買い」手法がほとんどなので、その場合、利益が出るときは「安値」で買って「高値」で売るときになります。

この逆は損失になりますね。

この当たり前のことを、多くの人はほとんど理解していないでいるようです。

たとえば投資信託は「買い」手法しかできません。

投資信託購入時の基準価格よりも「高く」なったときに売って初めて儲かる商品です。

単に銀行からお金を引き出して投資信託を買えば儲かるといった商品ではなく、ましてや長く持ち続けることに意味がある商品でもありません。

投資信託は、「安値」で買って「高値」で売ることで、はじめて利益が出るのです。

では「買い」手法においての環境認識とは、どういう状況なのでしょう。

「買い」手法の環境認識とは、これから自分が買おうとしている金融商品の価格が上がっていきやすい環境になっているのかどうか、自分が運用しようとする市場(マーケット)は今後好調に推移するのかどうかを見極めることです。

この見極めに関しては、あくまでも想定や見立ての範囲にはなりますが、私たちが運用で利益を上げるためには、その精度をあげていく必要があります。

そのために私たちは運用の勉強をするのです。

運用の勉強では、市場(マーケット)の特性を知ることがとても重要になってきます。

そのポイントは、概ね次のように整理されると考えます。

1. マーケット変動要因を知る

2. その変動要因が今はどうなっているかを知る

3. そこから想定される未来予想図を知る

4. マーケットを動かす要因の賞味期限(影響力は短期か長期か)を知る

これを難しいと敬遠したり、面倒だと避けたりしているようでは、とても運用で勝つことはできないということを自覚しておきましょう。

私たちは運用の勉強をする

投資初心者や、まだ環境認識を考えたことがない方は、新聞経済欄に目を通すのも良し、経済番番組をチェックするも良し、マーケット解説セミナーに参加するのも良し、学び方は自分のやりやすい方法で、これら4つの項目を知ることから始めてみてください。

知るポイントは上記4項目、ここを重点的に追いかけてください。

環境認識から見える「損失を覚悟する」とは…

例えば株式投資をする際、「日本市場は上昇する」というシナリオを立てて、株式投資信託を購入した場合、たとえ含み損が出ていても、日本の株価は上がるという予想を立てた前提条件に変更がなければ、そのまま持ち続けるという選択ができます。

損失に十分に耐えることができます。

これが「損失を受け入れる」ことです。

これから景気は悪くなると言われているときに

「銀行に預けていてもお金が増えない」からと、何も考えずに勧められるままに投資信託を買うのは「愚の骨頂」であること

を、心の底から理解してください。

このときに生じた「含み損」を我慢することが「損失を受け入れること」ではありません。

この「環境認識」をきちんとすることができるかどうかで、運用が成功するかどうかが決まるといっても過言ではありません。

「環境認識」が老後資金を作り、資産を殖やしてくれるのです。

特に投資信託投資は個別銘柄投資ではないので、投資対象全体の動きを把握することが大事になってきます。

日本市場が運用市場(マーケット)の株式投資信託なら、日本市場の動向を読み解くことが重要になってきます。

市場(マーケット)の特性を知ることがとても重要

「投資信託」は投資初心者専用商品ではない

投資信託は個別銘柄投資ではないので、市場(マーケット)全体の把握が必要となることから、どちらかというと投資初心者には扱いづらい金融商品と言えます。

それゆえ、一般の個人投資家の間では個別銘柄投資を行っている人が多く、投資信託運用をしている人は少ないようです。

しかし、特にいままで運用したことがない人が、最初に出会う金融商品が「投資信託」という人が多いように思えます。

その理由には、投資初心者が相談する金融機関が、証券会社でなく銀行や郵便局であり、そこで扱ってる商品が個別株式ではなく投資信託しかないことが挙げられるのかもしれません。

またファイナンシャル・プランナーに資産運用相談した際、必ずと言っていいほど勧められる金融商品が投資信託であることも考えられます。

さらには、確定拠出年金制度が採用する運用商品が投資信託であることも影響しているのかもしれません。

投資初心者の、投資に対するイメージも関係しているとも考えられます。

投資初心者は、個別銘柄を選別することにかなりの高い壁を感じているようで、それが「一般の株式投資(個別銘柄投資)を拒み、個別銘柄選別を伴わない投資信託のほうが受け入れやすい」というイメージを持っているのではないでしょうか。

投資をアドバイスする側も、多くの人を資産運用に誘導することを優先するあまり、投資に対し抵抗感を和らげるために、投資信託を「個別銘柄選択不要の投資初心者に馴染みやすい商品」と説明をしているように思われます。

投資信託は投資初心者専用商品ではない

多くの投資初心者が購入する「投資信託」を考える

いろんなところで紹介されている投資信託を、各方面で説明している内容に整理してみました。

1. 最低購入金額が1万円

2. プロが運用

3. 投資しづらい国や地域に投資できる

4. 分散投資ができる

これらは決して投資信託で利益を得るための「メリット」ではありません。

さらに「メリット」は何に対してのものなのかをよく考えてみてください。

「運用する側のメリット」とするなら、上記4つの項目は、下記の言葉に置き換えられます。

(1) 楽

(2) わずらわしくない

(3) 面倒でない

(4) おまかせ

これらの言葉の中に、投資初心者が投資信託を選ぶ理由が隠されているような気がしますね。

投資信託を説明している4つの項目をよく見れば、投資信託という商品造成上の特性を表わしているのは(1)と(2)です。

(3)と(4)は、その特性から想定される特長を表現しているにすぎません。

「少額投資可能」という表現も、「1万円から購入可能」という特性を特長に換えているようです。

「楽」、「わずらわしくない」、「面倒でない」という理由だけで投資信託を購入するのは、運用の本質から考えると、非常に危うさを感じてしまいます。

多くの投資初心者が購入する「投資信託」を考える

投資信託は「安値」で買って「高値」で売るリスク商品です。

だいたい、投資信託は「初心者向け金融商品」ではありません。

そもそもリスク商品(元本保証でない商品)に初心者向けなどという分類はありません。

投資できる金額やリスクの程度の違いはありますが、それが初心者用とか熟練者用といった区別につながるものではありません。

投資信託の商品特性に「プロが運用」というのがあります。

それが、投資信託を初心者向けのイメージに繋がっているのかもしれません。

「運用を人に任せることが一番のリスク」と考える一般の個人投資家では、投資手段として投資信託を選ぶ人は少ないようです。

投資信託は「買い」手法しかできませんので、マーケット下落時に「売り」で対処することはできません。

極端な表現ですが、株式投資信託で運用する場合は、これから景気が良くなり、経済が上向いて株式市場が活気をおびるときにしか利益を得られないということになります。

マーケット下落を想定して、「株式投資信託」と「債券投資信託」の商品を組み合わせることで総資産額の目減りを和らげる方法もあります。

しかし、「分散投資」はリスク軽減が目的で、収益を伸ばすものではなく、また「株式」と「債券」では価格変動幅が異なりますので、リスク分散するにおいても、大きな収益を求めるにしても、資金量調整が難しくなってきます。

急激な相場変動のときは、トリプル安と呼ばれる、株安・債券安・為替安といった状況も見られます。

繰り返しますが、投資信託は「安値」で買って「高値」で売るリスク商品です。

従って、投資対象のマーケットが上昇していくことが期待できるときに有効な商品と言えます。

「株式投資信託」と「債券投資信託」を利用してリスク分散する際にも、環境認識を通じて、資金配分を調整する必要があります。

「買い」手法しかできない投資信託投資においては特に、これからマーケットはどうなっていくかの「環境認識」がとても重要になってくることを、ご理解いただけましたでしょうか。

投資信託は「安値」で買って「高値」で売るリスク商品です。

「投資信託」は長期投資専用商品ではない

投資信託は「安値」で買い、「高値」で売ってはじめて儲かる商品です。

だから、買うタイミングによっては、同じ投資信託でも利益が出ている人と損失が出ている人がいるわけです。

このことは当たり前の話で、何も投資信託に限った話ではありません。

長期投資だから買いタイミングは関係ないといわれますが、今後マーケットが上昇すると判断して、それが実現した人と、実現しなかった人では、投資に対する印象は異なります。

長期投資を決め込んでいても、大切なお金を投じるので、利益が出ない期間が長くなると状況が気になるものです。

意外と人は、運用結果が出るまでの時間を我慢できないものです。

利益が出るタイミングが目先かずっと先かは時間軸の差でしょうが、後者の場合を「時間価値の損失」と判断できないでしょうか。

数ヶ月も、ましてや1年以上も含み損のままということは、その投資手法や投資商品選択はまちかがっていたと、市場(マーケット)が答えていることに等しいのです。

潤沢に資金があれば、含み損を放置して新しいチャレンジに踏み出せるでしょう。

しかし、投資資金が豊富でない場合、含み損放置により資金がフリーズ(凍結)されていることは、時間ももったいないですし(時間価値の喪失)、新しいチャンスがつかめなくなります。

安易に運用の世界に飛び込むと「投資難民」になる

ここでふたたび、「なぜ資産運用をしようと思ったのか」の問いに戻ります。

老後が心配だから…

銀行に預けていてもお金が増えないから…

退職金が出て、運用資金が確保できたから…

だから、資産を運用しようという思いは良いのですが、何の準備もなく、何も勉強もしないで運用を始めると、資産を減らすことになりかねません。

退職金が出て運用資金が準備できたからといって、何も考えずに、アドバイスのままに運用するのは危険です。

アドバイスも大事ですが、まずは自分で運用を勉強することです。

運用の何たるかを知らないで、アドバイスのまま退職金を運用することは、事前準備もなしに、体を慣らすこともなく、しかも軽装でいきなり険しい山に登るようなものです。

「1万円で投資信託を買うことで運用を意識するようになる。

それが上達の早道…」

というアドバイスを聞くことがありますが、1万円といえども大切な資産であり、しかも勉強の目的を考えずにただ値動きだけを追いかけているようでは何の勉強にもなりません。

真の意味での運用の経験にはなりません。

日本株式市場の変動要因は大きく分けて

・為替
・政策(日銀金融政策や政府経済政策)
・ニューヨークダウ

であることは知っておきましょう。

アメリカ経済を理解することも非常に大事です。

これらがどのように日本株の値動きと関係しているのかを探ることが勉強です。

アドバイスする側も、安易な投資への誘導は、多くの「投資難民」を輩出することに繋がることを理解して欲しいですね。

大事なのは、一般の人を運用に誘導することではなく、運用して実際に資産を殖やすことなのです。

私たちは、収益を上げるためのアドバイスと金融商品のセールス話法とを、区別する必要がありますね。

安易に運用の世界に飛び込むと「投資難民」になる

金融商品選択が重要なのではない

投資を始める動機でもっとも危険なのは

・銀行に預けていても儲からないから投資をしよう…

・退職金で資金ができたから投資を始めよう…

です。

これらの動機は「儲け」にしか目が向いていません。

だからこの動機から運用を考えると、「どの金融商品が利益を上げやすいか」ということに固執してしまいがちになります。

本来あるべき運用のプロセスは

環境認識 → 運用手法の選択 → 運用手段(金融商品等)の選択

となりますが、多くの人は、このプロセスをすっ飛ばして、運用資金が準備できたら、いきなり金融商品選びをしてしまいます。

個別銘柄投資は難しいから、投資信託のほうが楽そう…

投資信託なら私にもやりやすそう…

商品の優劣に重きを置くのではなく、「環境認識」のやり方を学ぶことが大事で、そこから今の環境に適した運用手法を選び、その運用手法を実現するのに最も効率的な金融商品を選ぶのです。

金融商品選びは最後の最後です。

環境認識によって、「株式投資」が良いか「為替投資」が良いか、「日本市場」が良いか「海外が」良いかを選択して、それから金融商品を選ぶのです。

運用は「面倒」で「難しい」ですが、資産を殖やす「最大の武器」でもあります…

誰にでも簡単にできるのであれば、世の中の人みんなが運用で大金持ちになっているはずです。

もっと多くの人が資産運用しているはずです。

実際に運用で資産を殖やしている人は、たくさん勉強して失敗を経験して、それでも逃げずに運用を続けている人なのです。

お金に困らない老後生活を過ごしたいなら、働かずに安定した収益を確保したいなら、運用の本質をよく理解して、しっかりと勉強して、損をしてもくじけずに続けられる強い意志を持って運用に望んでください。

資産を殖やす「最大の武器」

運用で成功するのに必要なことは「逃げずに継続する」ことなのです。

そのためには運用に向き合う自信をつけることで、それにはマーケットの勉強が必要なのです。

まとめ

今回のコラムでは、運用に対する取り組み方を知っていただき、それに沿った運用のプロセスをご紹介しました。

あくまでも運用の世界に誘導することが目的ではなく、運用で資産を構築してもらうためのコラムです。

そして具体的な金融商品として、多くの投資初心者が活用していると思われる「投資信託」という金融商品を、実際に運用する側の立場に立って検証してみました。

このことを通して、運用と真摯に向き合う姿勢をもっていただければ幸いです。

具体的なマーケットの勉強方法は、私のホームページや情報誌で展開していきます。

このコラムで皆さんの運用への取り組む姿勢が変わることで、「勝てる投資家」になっていただくことを願います。

老後難民にならないために、運用の世界に飛び込もうと思われるのなら、投資難民にならないように、運用を味方に武器にしていきましょう。(執筆者:原 彰宏)

この記事を書いた人

原 彰宏 原 彰宏»筆者の記事一覧 (59) http://www.spway369.com/

株式会社アイウイッシュ 代表取締役
関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。
<保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP
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