相続税の改正で課税対象者が急増。 税務調査では「申告漏れ」が増加中…追徴前に対策をしよう。

相続税の法律改正で平成27年からは、相続税課税の対象者が約2倍の10万人に急増しています。

毎年約130万人の方がお亡くなりになっていますので、12人に1人が相続税の支払い対象です。

そのうち8人に1人が相続税の税務調査を受け、調査されるとほぼ確実に追徴されています。

一方税務調査は「無申告者の調査」や「簡易な調査」の件数が増加しています。

相続税申告

税務調査の概要

相続税申告は相続発生から10か月以内に提出しますが、税務調査は申告後1年から1年半後に行われることが多く、場合によっては2年後、3年後に税務署から連絡が入ることもあります。

「無申告の調査」では、相続発生から2年以内には連絡があるようです。

税務署の事務年度は「7月始まり、6月末終わり」です。

7月の人事異動後8月頃から、手間のかかりそうな追徴額が多い案件を調査し、年度末の6月頃には、調査数のノルマ達成のために簡単に解決できそうな案件を調査していると言われています。

税務調査

「相続税の申告」「相続税調査」「贈与税の調査」の状況

平成30年12月に国税庁が発表したのは

・平成29年にお亡くなりになった方の「相続税の申告状況」

・平成27年にお亡くなりになった方の「相続調査状況」

・27年度に贈与があった案件の「贈与税の調査状況」

です。

平成29年には134万人(人口の約1%)がお亡くなりになり、その内11万人(約8%)に相続税が発生し、お亡くなりになった方1人に対し2人が相続を受けています

この傾向は、法改正後の平成27年から傾向は変わりありません。

法改正までは相続税納税者の約20%が調査を受け、調査対象の80%が追徴されていましたが、改正後には12%が調査を受け、その85%が追徴されています。

結果的に調査件数、申告漏れ額ともに増加しています。

平成29年度の相続税の申告状況

1人あたりの相続額の平均は1.4億円で課税額は1,800万円です。

平成25年~29年の「相続税の申告状況」を表にまとめてみました。

平成25年~29年の「相続税の申告状況」

続いて、平成25年~27年の「相続税の調査状況」と「贈与税調査状況」を下表にまとめました。

平成25年~27年の「相続税の調査状況」と「贈与税調査状況」

平成29事務年度の調査件数

平成29事務年度の調査件数は、約1万2,500件で 納税者が増加したので調査が間にあわないのか1割に減少しています。

平成27、28事務年度の調査件数は、約1万2,000件 納税者の約2割です。

平成29事務年度は、平成27事務年度と比べると、

追徴税額が約600億円 →約800億円
一人あたり平均追徴額が約2,500万円 →約2,800万円

とそれぞれ増加しています。

相続財産と申告漏れ課税対象の構成比

相続財産の構成比は多い順に 

a. 不動産:43%
b. 現金・貯金:31%
c. 有価証券:15%
d. その他(動産、骨董品等):11% 

 
ですが、

申告漏れ課税対象の構成比は多い順に

改正前(平成28事務年度)
a. その他:44%
b. 現金:31%
c. 不動産:15%
d. 有価証券:10%
改正後(平成29事務年度)
a. その他:37%
b. 不動産:34%
c. 現金:25%
d. 有価証券:4%

改正後(平成29事務年度)は不動産が増加しています。

その他(動産、骨董品等)に申告漏れが多いのは、動産、骨董品はその評価額は議論になりやすく、相続時には想定していない価値に評価されたりしますので、税務調査の対象になりやすいと考えられます。

無申告調査

無申告調査は約1,200件あり、申告漏れ額は約1,000億円、1人当たりの追徴額は約720万円になります。

簡易な接触による調査数

「簡易な接触」とは、実地調査のほか、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正するなどの接触のことです。

平成29事務年度における簡易な接触の件数は約1万1,200件(平成28事務年度は約9,000件)で、10人に1人に接触があります。

このうち申告漏れ等の非違があった件数は約2,700件(平成28事務年度は約2,300件)で、約20%です。

贈与税に係る実地調査数

贈与税の実地調査数約3,800人のうち95%が追徴で、平均約150万円です。

平成28事務年度は駆け込み贈与なのか、10倍の1,900億円が調査漏れの追徴課税になっています。

駆け込みで無理な贈与をしても、税務調査の対象になり追徴されますので適法に処理することが必要です。

相続税対策を考える

相続税対策を考える

自分の財産に相続税がかかるかどうか?

法定相続人が誰になるか調べて、相続税の計算をします。

・資産の評価(現金、有価証券、土地、生命保険、死亡退職金等の、また死亡前3年間の贈与は資産計算)をします。

・課税控除額を計算します。 

課税控除額 = 基礎控除3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)+ 生命保険控除(500万円 × 法定相続人の数)

相続発生前にやっておきたい節税対策

相続発生前に毎年課税枠での贈与、生命保険に加入、課税評価額を下げるなどを行います。

夫婦どちらかが亡くなった場合は1次相続、2人目がなくなると2次相続です。

1次相続の夫から妻への相続の場合は 1.6億円の控除があるので課税額は抑えられますが、そのまま2次相続になってしまうと税額は増額になる場合があります。

孫への贈与

毎年の贈与は、110万円の基礎控除額まで無税。

長期的・計画的に行えば確実な節税対策です。

孫への贈与は一世代飛び越しで資産を移転でき、相続税を1回減らすことにも貢献します。

収益財産を子供に贈与

駐車場、アパートなど収益財産を子供に贈与し、不動産収入を子供に移転できます。

登記費用などの必要経費は必要です。

子供への住宅資金贈与

平成33年末までは、父母や祖父母など直系尊属からの贈与で、自己の居住用の家屋の新築等の「住宅取得等資金」は非課税限度額までの金額贈与は非課税です。

(消費税10%時の特例 平成32年3月末まで 省エネ3,000万円 他2,500万円:年度によって変化)

教育資金の贈与

平成31年3月31日まで、祖父母から孫への教育資金は1,500万円までは非課税となりますが、金融機関への手続きが必要です。

結婚・子育て贈与

平成31年3月31日まで、父母、祖父母などから結婚・子育て資金1,000万円(結婚資金は300万円)が非課税になりますが、金融機関への手続きが必要です。

生命保険金

生命保険金は、非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)が増えます。

所有不動産を賃貸用へ転換

所有不動産を賃貸用へ転換すると、不動産の課税価格を引き下げられます

賃貸用でない不動産を100とすると、賃貸用不動産は70程度の評価です。

この評価差を利用して課税価格を引き下げる効果があります。(執筆者:淺井 敏次)

この記事を書いた人

淺井 敏次 淺井 敏次»筆者の記事一覧 (34) http://fp-office-asai.jimdo.com

FP事務所ASAI 代表
身近なよろず相談。お客様の利益最優先で、独立FPの視点での相談をモットーに活動。ライフプラン、リタイアメントプランニング、資産運用、保険、税金、相続、金融商品、社会保険、住宅ローン、その他の悩みを一緒に考え解決、セカンドオピニオンでも利用してください。ご希望にお答えします。京都大学卒、ビール会社の工場・本社勤務後、独立系事務所設立「FP事務所ASAI」代表。 講演経験、投資経験も豊富:「豊の国 かぼす特命大使」大分県知事任命、「一般社団法人大阪あそ歩委員会」ガイド。
<保有資格>:日本FP協会認定CFP® / 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / ビジネス法務エキスパート / 公害防止管理(水質1、大気1)
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