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麻生さん、やっぱり2000万円足りないと思います。国の正式資料をみて考えました。

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麻生さん、やっぱり2000万円足りないと思います。国の正式資料をみて考えました。

金融庁の「老後資金2,000万円」は本当?

金融庁で「老後資金は2,000万円必要」という報告書を、麻生大臣が「受け取らない」とした「老後資金2,000万円不足問題」は、今後の選挙にも影響しそうな感じです。

新聞報道によると経済産業省の計算でも「老後資金は2,895万円必要」という独自試算を出していたことがわかり、「省庁が異なっても認識は同じ」とはっきりわかりました。

「国民の不安が明確に数値化された」と言えるでしょう。

総務省調査から試算、老後の赤字額は約1,700万円

高齢者の収支の赤字 

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≪画像元:総務省 平成30年家計調査(家計収支編) 19ページ(pdf)≫

総務省による平成30年の家計調査(家計収支編)によれば、高齢無職夫婦(夫65 歳以上、妻60 歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均消費支出は、月額23万5,615円です。

そして収入は手取り(可処分所得)の平均が月額19万3,743円で赤字が月額4万1,872円(23万5,615円-19万3,743円)です。

夫85歳、妻80歳までの20年間で約1,005万円(1年間50万2,464円 × 20年)貯蓄を取り崩すこととなります。

また、同じく上記から高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の手取り(可処分所得)は月額11万933円 で消費支出は月額14万9,603円なので、赤字は月額3万8,670円(14万9,603-11万933円)です。

妻が単身で95歳まで生きた場合、貯蓄を696万600円(1年間46万4040円 × 15年)取り崩すのです。

つまり老後夫婦で過ごす20年間と妻だけで過ごす15年間、貯蓄を崩す額が合計約1,701万円です。

老夫婦の悩み

あながちウソじゃない、「老後資金2,000万円不足」

こうして見ると、「老後資金2,000万円不足」は決して「ウソ」とはいい切れません。

上記の消費支出は全国平均なので、もっと消費支出が高い地域もあります

ちなみに、総務省の平成26年全国消費実態調査によれば、消費支出額(高齢無職世帯に限らない)は都道府県によっても異なり、最高の神奈川県で月額約34万7,000円、最低の沖縄で月額約23万5,000円と月額約11万2,000円も差があります

この消費支出額は高齢無職世帯とは限らないので、高齢無職世帯ならもっと低額と考えられますが、上記の家計調査による消費支出月額23万5,615円より多い高齢夫婦もいると思われます。

もし同じ手取り(夫婦で月額19万3,743円、妻だけで月額11万933円)なのに、夫婦で月額27万円(赤字毎月7万6,257円)、単身で月額17万円(赤字毎月5万9,067円)支出していれば、老後夫婦で過ごす20年間(貯蓄取り崩し1,830万1,680円)と妻だけで過ごす15年間(貯蓄取り崩し1,063万2,060円)、貯蓄を崩す額が合計約2,894万円にもなるのですから…。

貯蓄額

≪画像元:平成30年家計調査(貯蓄・負債編)25ページ(pdf)≫

平成30年家計調査(貯蓄・負債編)での上記表を見ると、高齢者の貯蓄平均値が2,284万円ですが、お金持ちが平均値を引き上げている可能性が高く、実態を示すのは中央値の1,515万円です。

夫が85歳、妻が95歳まで長生きした場合は、やや心許なく感じる金額ではあります。

個人的には麻生大臣に、報告書を受け取った上で内容まで突っ込んで説明し、

「貯蓄の平均値は2,284万円あるし、全員が平均額を使うとは限らないし、全員が長生きするとは限らない、大丈夫。」

など、ご意見を聞いてみたかったような気がします。

生活費の個人差は考慮する必要あり

もっとも、生活費については個人差があります。

先ほどの平成30年家計調査(家計収支編)の表から、高齢無職夫婦と単身者の収入と消費支出の内訳を見てみましょう。

収支の内訳 

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≪画像元:総務省 平成30年家計調査(家計収支編)19ページ(pdf)≫

例えば食費については、野菜を作ったり、もらったりできるような所に住んでいれば6万5,000円もかからず、4万円以下で済むこともあるでしょうし、逆に外食が多ければ月8万円超えるかも知れません。

他には交際費などが節約できる項目になるでしょうか。

外食をせず、お付き合いは親しい人だけに絞り、自宅に招きあってお茶や食事をする等です。

携帯電話やスマホは一番安いプランに切り替えたり、格安スマホにしたり、通信費を抑えることも可能です。

「この項目は譲れない。」部分もあるでしょうから、夫婦で何が大事な項目か話し合うことも必要でしょう。

老後の生活費を左右する2つのカギ

2本のカギ

老後に生活費がどのくらいかかってくるかは、2つ項目が大きく影響します。

1. 住居費 ~持ち家か賃貸か~

平成30年の家計調査(家計収支編)によれば、高齢無職世帯の持ち家率は9割超に及びます。

そのせいか、住居費は夫婦で月額約1万4,000円、単身(妻)月額約1万8,000円で済んでいますが、賃貸の人はもっと住居費が高くなるでしょう。

また同じ調査から、年間収入が250万円か300万円の層(無職高齢世帯の月収入23万3,000円 × 12か月を目安)では、持ち家世帯の住居費は月額約1万8,000円でしたが、賃貸(民営)世帯の住居費は月額約4万7,000円です。

住居費で約3万円も開きがある分、賃貸世帯では食費などが抑えられています。

2. 教育費

子供を育てる場合には、当然、教育費がかかります。

以下の表で学費の概算を見てみましょう。

高校までの子供の教育費

≪画像元:文部科学省 28年学習費調査(pdf)≫

しかも大学になると上記に加え、大学の学費、自宅から通えない場合、家賃も親が負担する必要があります。

平成31年日本政策金融公庫の調べによれば、私立大学4年間で約716万円かかります。

高額な学費をかけた子供が就職に失敗する可能性がないともいえず、その場合生活費が余計にかかってくるかもしれません。

家計調査によれば、高齢無職世帯(夫婦2人)の消費支出は月額で23万5,615円ですが、平均人員2.98人(世帯主の平均年齢59.3歳)世帯の消費支出は,1世帯当たり1か月平均28万7,315円でした。

ほぼ1人分の生活費をざっくり月額5万1,700円(28万7,315円マイナス23万5,615円)として、子供が22歳で卒業後、10年就職が決まらず引きこもった場合、子供のアルバイト収入等によっても異なりますが、親の貯金が最高620万4,000円も減ってしまう計算になります。

老後資金が本当に足りなくなったら?

「いろいろ考えてお金を使ったつもりだけど、貯金しようと思ったけど…。

老後の貯金100万円未満、足りないよね、老後資金。」

そんな時、どうしたらいいか対策を考えてみましょう。

働く

もう一度、平成30年家計調査(貯蓄・負債編)の表を見てみると、貯金が100万円未満の高齢無職世帯が8.3%もあります。

貯蓄額のグラフ

≪画像元:平成29年内閣府 高齢社会白書

老後資金が足りなかったら、65歳過ぎても働くことは現実的な選択肢です。

下の図を見ると、65歳から69歳の年齢層で男性は53%、女性は33.3%が何らかの形で働いています。

70歳から74歳までの年齢層で男性は32.5%、女性は18.8%が働いています。

高齢者の労働状況

画像元:≪平成29年内閣府 高齢社会白書

節約する

平成27年の家計調査によれば、手取り(可処分所得)月額18万1537円で、消費支出が月額24万3,864円だったので、毎月6万2,327円も赤字になり、これが25年続くと貯金が約1,870万円必要という計算でした。

この毎月の赤字額、平成30年には月額4万7,455円と2万円も減っています

高齢無職世帯で節約する人が増えたのでしょう。

いざとなれば、収入の範囲内で消費をする「節約」は、誰でも試しやすい方法ですし、実行する高齢者が多いのでしょう。

親族の支援は期待しないのが無難

では親族は当てになるのでしょうか?

少し前のデータですが、総務省の調べによれば、別居している親への仕送りよりも別居する子どもへの仕送りをする割合が高い傾向があります。

参照:平成22年国民生活基礎調査 経済状況に関する調査より

健康状態が悪く経済状態が良好な高齢者世帯で、親から子供へは5.1%が仕送りしています。

子供から親への仕送りは健康状態も経済状態も良い親に対して、1.5%に過ぎません

データからは

「結婚すると親と子供はそれぞれが精一杯。実質別財布になるので、それぞれ頑張る必要がある。」

ということがわかるでしょう。


結構甘くはないようです。

投資の失敗を挽回するのは難しい

「年金じゃ足りないから、老後資金を若いときから投資しよう」そんな宣伝のために、金融庁も「老後資金2,000万円不足」を表に出そうとしたのでしょうか。

投資信託協会で「長期間投資ほど収益のフレが小さくなり、安定的な収益が見込める」というデータがあります。

過去40年間について東証1部上場銘柄全体の投資収益(年当たり)を投資期間別に見たのが下記の表です。

1966年から2005年までの東証1部上場銘柄の加重平均より

≪画像元:一般社団法人 投資信託協会≫

平成31年間の日経平均株を見ても平成元年に3万8,000円超えていたのに、平成15年の平均株価は7,600円です。

このことから、平成元年から15年間積み立て投資していた人なら損をしていた可能性がとても高いです。

これは日本の株価だけのデータですが、リスク分散のために世界株や世界債権を持っていたとしても、世界同時株安なら、持っている株や投資信託はすべて暴落しているかもしれません。

「iDeCo」や「積み立てNISA」は個別株ではなく投資信託が主(iDeCoは定期預金・生命保険も含む)ですが、世界同時株安なら影響を受けるでしょう。

運悪く、自分が60歳または65歳になったタイミングで投資した資産(「iDeCo」や「積み立てNISA」)が暴落している可能性もあるのですが、投資の失敗を取り返すことはできるでしょうか?

株や投資信託を売り元本割れをした場合、売却損を他の売却利益と相殺し、売却益にかかった所得税を返金してもらうことを「損益通算」といいますが、老後資金運用のためと宣伝されている「iDeCo」や「積み立てNISA」には使えません

損を取り返すには「70歳誕生日の2日前まで、ひたすら値上がりを待つ」もしくは「他の投資で利益を出す」しか方法はなさそうです。

生きている限り支給される予定の「年金」を大切に使いましょう。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)

《拝野 洋子》
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拝野 洋子

年金相談員、保険・家計アドバイザー ファイナンシャル・プランナー(上級資格のうちライフ、保険、タックス、相続、金融を科目合格) 大手地方銀行にて外国為替、内国為替に携わる。税理士事務所等にて、社会保険、助成金申請代行、損保代理店業務、行政書士補助、記帳代行などの業務に携わる。400件以上の電話年金相談に対応。東京都中央区で算定相談員、川崎市で街頭相談員、社団法人の労働施策アドバイザーを経験。趣味はクラリネット演奏 音楽鑑賞 読書。平成25年4月よりオールアバウトガイド 平成29年4月より年金相談員 <保有資格> 社会保険労務士、FP技能士2級、AFP、日商簿記2級 寄稿者にメッセージを送る

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