同一の仕事をしている方には、その雇用形態にかかわらず、同一水準の賃金を支払う「同一労働同一賃金」が、大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から開始されます。

これにより契約社員、派遣社員、パートやアルバイトなどの非正規雇用者であっても、正社員と同じ仕事をしている場合には、正社員と同等の給与や福利厚生などを受けられます。

個人的に注目しているのは、現役世代の非正規雇用者に対して、新規にボーナスが支払われる可能性がある点です。

また、定年退職後に再雇用され、その後に再度の退職を迎えた非正規雇用者に対して「第2の退職金」が支払われる可能性がある点です。

受給できる年金額に不安があるため、受け取ったお金を老後資金の準備のために使う方が、けっこう多いのではないかと思います。

そうなると「新規払いのボーナス」と「第2の退職金」は、数か月前に話題になった「老後資金2,000万円不足問題」を少しは解消する効果があると考えられるので、これらに注目しているのです。

しかし現在は預貯金の金利が低いため、受け取ったお金を銀行口座などに入れておくだけでは、ほとんど増えていきません。

そのため、受け取ったお金を運用して増やすことが大切になってくると思うのです。

「新規払いのボーナス」と「第2の退職金」で、老後資金を準備する方法

保険料や掛金によって課税所得が低くなると、その分だけ節税になる

正規か非正規かを問わず、会社などに雇用されている方が納付する所得税は、次のような手順で算出します。

所得税の算出手順

(A) 1~12月に会社などから支払われた給与の合計額 – 給与所得控除額 = 給与所得

(B) 給与所得 – 所得控除(基礎控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除など)の合計額 = 課税所得

(C) 課税所得 × 税率 – 税額控除(住宅ローン控除など)の合計額 = 所得税

以上のようになりますが、(B)の中にある所得控除の種類や金額を増やせば、その分だけ課税所得が低くなるため、節税になるのです。

各種所得控除

また、各種の所得控除と、公的年金の受給額を増やすための制度や、公的年金の上乗せを準備するための制度は、次のように対応しております。

【社会保険料控除を受けられるもの】

・ 免除などを受けていた期間の「国民年金」の保険料を追納する

・ 60~65歳未満の間に「国民年金」に任意加入して保険料を納付する

・「国民年金基金」に加入して掛金を納付する

・「付加年金」を受給するために月400円の付加保険料を納付する

【小規模企業共済等掛金控除を受けられるもの】

・「iDeCo(個人型の確定拠出年金)」の掛金を納付する

【生命保険料控除(個人年金保険料控除)を受けられるもの】

・ 個人年金保険料税制適格特約が付加された「個人年金保険」に加入して、保険料を払い込む

以上のようになりますが、原則的にはこれらの保険料や掛金の全額を、給与所得から控除できます

しかし、2012年1月以降に契約した個人年金保険は、年間に払い込んだ保険料が8万円を超えると、給与所得から控除できる個人年金保険料控除が一律で4万円になるため、払い込んだ保険料の全額を控除できないのです。

課税所得がゼロという方は、「つみたてNISA」を選択肢に加える

厚生年金保険に加入している現役世代の非正規雇用者が、新規に支払われるボーナスで老後資金を準備する場合、

・ iDeCo
・ 個人年金保険

が選択肢として考えられます。

一方で国民年金に加入して、自分で保険料を納付している場合には、

・ iDeCo、
・ 個人年金保険
・ 国民年金基金
・ 付加年金

が選択肢として考えられます。

その他にボーナスを受け取って金銭的な余裕がある時に、免除などを受けていた期間の国民年金の保険料を、追納するという選択肢もあるのです。

ただ

「(B) 給与所得 – 所得控除の合計額 = 課税所得」という計算をやってみて、課税所得がゼロになった場合には、これらの保険料や掛金を納付しても節税にならない

というデメリットがあるのです。

なお、勤務先から渡された源泉徴収票の中から、「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」を探し、

「給与所得控除後の金額 – 所得控除の額の合計額」という計算をやってみると、各人の具体的な課税所得

がわかります。

その他にも、これらの制度の多くは老後を迎えるまで、納付したお金を自由に使えないというデメリットがあります。

そのため、

・ 課税所得がゼロになるため、節税効果を期待できないという方

・ 老後を迎える前に納付したお金を使う可能性があるという方

の場合には、「つみたてNISA」を選んでもよいと思います。

この制度を通して投資信託などを購入すると「iDeCo」と同じように投資から得られた利益に対して課税されません

また、金融庁が定めた基準を満たしている「長期投資に適した低コストの投資信託」のみが投資対象になるため、初心者でも選びやすいというメリットがあるのです。

なお、「つみたてNISA」の積立期間は原則20年ですが、この期間は強制ではないので、何かでお金が必要になった際には途中で積立を止めて引き出してもよいのです。

あなたとNISA

≪画像元:金融庁

「第2の退職金」を受け取るのが65歳以上だと選択肢が減ってしまう

定年退職後に再雇用され、その後に再度の退職を迎えた非正規雇用者が、老後資金を準備するために「第2の退職金」を活用する場合、次のように65歳を境にして選択肢が変わってきます

「第2の退職金」活用の選択肢

65歳未満の場合と65歳以上の場合を具体的に見てみましょう。

【60~65歳未満の場合】

・「国民年金」に任意加入して保険料を納付する

・「国民年金」に任意加入したうえで「国民年金基金」の掛金を納付する

・「国民年金」に任意加入したうえで「付加保険料」を納付する

・「個人年金保険」に加入して保険料を払い込む

・「一般NISA」を通じて投資信託などを購入する

・「つみたてNISA」を通じて投資信託などを購入する

【65歳以上の場合】

・「個人年金保険」に加入して、保険料を払い込む

・「一般NISA」を通じて投資信託などを購入する

・「つみたてNISA」を通じて投資信託などを購入する

このように65歳以上になると老後資金を準備するための選択肢が65歳未満より減ってしまうのです。

また、円建ての「一時払い終身保険」の予定利率(契約者に約束した運用利回り)を決める際に指標にしている標準利率が2020年1月から0%になるという報道がありました。

こういったニュースからわかるように、貯蓄のために「個人年金保険」などの生命保険を活用するのが、以前より難しくなっているのです。

そのため、「第2の退職金」を受け取るのが65歳以降になりそうな場合には、

定年退職時に受け取る「第1の退職金」を活用して、65歳未満からできることを先にやっておいた方がよい

と思います。

「iDeCo」も「NISA」も改正内容に注目

なお、「iDeCo」に加入できる年齢の上限は、現在は60歳になっていますが、これを65歳まで引き上げする議論が行われています。

また、「一般NISA」の中身を改正する議論も行われているので、この辺りに注目しておいた方が良いと思います。(執筆者:木村 公司)