家計の3大資金は、一般的に教育費・住宅取得費・老後資金を指します。

40歳から50歳代前半の家計では、特に子供の教育費、マイホームの取得に伴う住宅ローン返済などで家計負担が重くなる時期と同時に夫婦の老後も視野に入れた資金計画を立てることも加わります。

今回のテーマは老後資金、つまり老後に必要なお金についてです。

まず、老後とはいつの時点を言うのか分かりませんが、一般的には年金や貯蓄などを生活資金として家計に入れ始めた時期を指すようです。

老後資金のうち、年を重ねる毎に家計支出が増えてくるのは、医療や介護にかかる費用です。

ここでは、老後資金に占めるウェイトが高くなる介護費用について取り上げてみます。

「介護費用」を検証

介護費用を軽減するために介護保険は役立つか

介護費用については、「今加入している公的介護保険があるのであまり心配していない」と考える人もいるかと思います。

介護費用をカバーする介護保険の利用については、確かに老後資金を形成する上で重要なポイントとなります。

しかし、要介護度が進み介護施設に入所となった場合は、保険の対象とならない項目が多くあるため、それだけでは十分でないことも考えておく必要があります。

公的介護保険の基本的な仕組みについて

次に公的介護保険の基本的な仕組みについて触れておきます。

加入要件は、健康保険や国民健康保険に加入する40歳以上の人が対象です。

保険料の徴収について、40歳から65歳未満の人は健保・国保の保険料と併せて納付され、65歳以上の人は年金からの天引きまたは市区町村に直接納付します。

保険料率について、65歳以上や自営業・フリーランスなどは市区町村毎に異なります。

サラリーマンなどの給与所得者の場合は健康保険料に含まれます。

保険給付について

保険給付について、原則的には65歳以上の要支援・要介護の人が対象です。

65歳未満の人でも脳血管疾患、初老期の認知症や末期がんなどに起因する要介護状態の人は対象となります。

保険でカバーされる介護費用の自己負担額は所得によって異なります

まず、保険でカバーされる範囲は、訪問介護、通所介護(デイサービス)、リハビリなどや施設での介護サービスの他、車イス、介護ベッドなどの購入やレンタル、バリアフリー住宅に改修する等の費用が含まれます。

自己負担については、年金収入と他の所得の合計所得額に応じて1割から3割の割合で区分されます

具体例を挙げると、2月分の介護サービス費は10万4,000円、介護認定は要介護2で負担割合が1割の場合、自己負担額は※1万400円となります。

※10万4,000 × 10%=1万400円

また、ここでの留意点は、

・ 介護施設に入所の場合、居住費、食費、施設共用部分の管理費(共益費)などは一般的に全額自己負担となる

支給限度額を超えた分は全額自己負担となる

などです。

支給限度額とは、保険者(この制度の運営体である市区町村)から介護事業者などに払われる限度額のことですが、介護認定区分ごとに決められています。

介護保険の給付に必要な主な手続き

介護保険の利用については、介護サービスを受ける前に必ず所定の申請手続きが必要となります。

なお、認定申請に必要な主な書類や認定方法などの詳細については市区町村の介護保険の担当窓口に確認することをお勧めします。

要支援・要介護の度合いの目安
支給限度額

介護費用の自己負担額が高額となった場合に役立つ制度とは

これらは、医療費や介護サービス費に掛かる自己負担分の軽減を目的とした、言わばセーフティーネット的な支援制度です。

※1. 高額療養費、※2. 高額介護サービス費、※3. 高額介護合算療養費などの3つの制度があります。

ただし、介護施設の入所に掛かる居住費・食費・施設共用部分の管理費(共益費)、日常生活費、差額ベッド代、または、在宅介護の場合で福祉用具購入費や住宅改修費などは介護保険と同様、全額自己負担が一般的なので注意が必要です。

また、申請手続きや所得・年齢・上限金額等の支給要件などについては、制度ごとに異なる項目もあります。

詳しくは、住所地の市区町村の医療保険または介護保険の窓口で確認ください。

※1. 高額療養費は、入院や手術等で医療費が同一の月に高額となった場合、医療費の自己負担金等が一定の額(自己負担限度額)を超えた額が払戻しされる制度です。

※2. 高額介護サービス費は、介護サービスの自己負担額が同一の月に一定の額(自己負担限度額)を超えた額が払戻しされる制度です。

※3. 高額介護合算療養費は、1年間(毎年8月~翌年7月まで)の医療保険と介護保険の自己負担分を合算した額が、一定の額(自己負担限度額)を超えた場合、超えた分が払戻しされる制度です。

ただし、高額療養費または高額介護サービス費から払い戻しされている場合は、その額は控除されます。

老後資金はまず介護施設のお世話になることを想定した準備を

介護サービスに掛かる費用は、介護度合にもよりますが、上述の保険制度を利用すれば、生活費から何とかまかなえるレベルです。

最低限押さえておいた老後資金は、介護施設にかかる費用を見込むこと、これがポイントです。

誰でも施設のお世話にならないに越したことはありませんが、ここでは、最大のリスクを描いておくことが必要でしょう。

主な介護施設の特徴について

介護施設には、介護度合やサービスの種別によって自立向けの分譲マンションから重介護向けの特別養護老人ホームまで約9種類あります。

特別養護老人ホーム

そのうち、特別養護老人ホーム(通称:とくよう)は、市区町村や社会福祉法人などが運営している公的施設です。

入所条件は要介護3以上です。

しかし空きが少なく入所までに2年以上かかる施設が多く、実際、要介護4以上にならないと早い入所は無理のようです

介護費用は民間と比べかなり安く抑えられます。

早い入所を希望する場合は、住所地の市区町村または市区町村が提携している施設に複数申込んでおくことや施設に対して頻繁なアプローチも必要です。

グループホーム

グループホームは認知症の利用者(要支援2以上)向けの施設です。

終身介護(看取り)のない施設が多いため、身体的変化によって共同生活が送れなくなった場合は、退所を求められる可能性があります。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、介護認定区分が要支援1から入所が可能な民間施設です。

この施設は、日常生活上の介護サービスや健康管理のほか、レクリエーションなども充実しており、また終身介護のある施設が多いのも主な特徴です。

利用料金については、施設の立地、建物の規模や設備の豊富さなどにより大きく異なります。

土地や建物などの不動産価値が高い大都市ほど一般的に高額な利用料となる傾向です。

なお、入居一時金についての詳細は、ここでは触れませんが、一時金が高額なほど月額利用料は低く抑えられます

利用者が入居金や利用料金が高い主要都市に住んでいる場合は、近隣の市区町村や県に所在する施設を探すことをお勧めします。

自己負担の目安

認知症の介護を想定しておくことの必要性

日本では、数年後に65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症にかかるといわれています。

認知症に罹患した本人はももちろんつらいことです。

しかし、それ以上に介護する人の精神的ダメージは想像を絶するといえます。

ここでは、認知機能の悪化が進むことで起こる具体的な事例について挙げてみます。

・ 徘徊によって起こる骨折やケガ、または行方不明となる

・ 昼と夜が逆転した生活となる

・ 幻聴や幻視などの幻覚が頻繁に起こる

・ 家族やヘルパーなどに粗暴な態度をとる

・ 紙おむつをはかない

・ 家中がトイレ状態

など、これも現実に起こっていることです。

介護費用はいくらを見込めば良いか

いくらを見込めば良いか

介護する側の身体的・精神的負担を軽減する唯一の解決策は、介護施設の利用を想定したプランを立てることです。

将来の介護状況は分からないので、1つのプランを次に示します。

ここでは、介護付き有料老人ホームの入所を前提に利用料を試算しています。

実際には、コストは安いものの待機期間が長い特別養護老人ホームの入所を最終目標とします。

介護付き有料老人ホームは、特別養護老人ホームに入所できるまでのつなぎとして利用することをイメージします。

介護付き有料老人ホームの平均入所期間は、ある調査によると約3年3か月、月数に変換して39か月、この期間を目安とします。

そして、利用料金を月額20万円と見積もった場合、総額は780万円となります。

39か月 × 20万円=780万円/1人

これは、夫婦のみの2人世帯の試算です。

夫婦のうち1人が入所または2人ともに入所、いずれの場合も、1人は年金等の所得でまかない、1人は貯めた老後資金で充当するため、夫婦のみの2人世帯においても1人分で十分な計算です。

ただし、1人世帯の場合は、年金等の所得を施設利用料に充当できるため、資金手当ては特に考慮しなくて済みます

ただし、施設利用料が所得の範囲を越える想定の場合、その不足分を手当する必要はあります。

介護の悩みは市区町村の窓口に相談を

介護についての悩みや問い合わせについては、市区町村の医療・介護保険の窓口、地域包括センターなどが対応してくれます。

特に、要介護状態になってから頼りになるのはケアマネージャーと介護施設の介護スタッフです。

これは筆者が実感したことです。

いずれにしても、この資金プランは、一例として挙げたものです。

介護うつ(介護する人のおよそ4人に1人)、介護離職、介護破産など、最悪の状態を回避するために備える「心の保険」として位置付けたいものです。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)