人生100年とも言われる長生き社会で、「介護」は無視できない問題です。

自分の介護については、備えをはじめている人もいるでしょう。

では、自分の親、配偶者の親はどうでしょうか。

今回は、「親世代」の介護が必要になったとき、やってはいけないことについてお話します。

親の介護がはじまる前にやるべきこと

親の介護費用は、親の資金から出すことが鉄則

介護状態は、いつ、どのようにやってくるかわかりません。

じわじわと認知症が進んでいくケースもあれば、ケガや病気などが原因で突発的に深刻な介護状態になってしまうケースもあります。

入院費用や介護費用、誰がどのようにかかわるかなど、たくさんのことを考えなくてはなりません。

その中でも、最初に決めておくべきことのひとつが、介護費用をどこから出すかということです。

親の介護費用は、親の資産から出しましょう

自分の預貯金は、自分のためにとっておく

自分(子世代)の資産は、自分自身や家族のために確保しておかなくてはなりません。

子世代には、子世代の生活があります。

親の介護費用につぎ込んでしまっては、自分や家族が困ることになります。

親世代が元気なうちに、資産状況の確認をしておくと安心です。

親世代の資産確認時に、忘れずにしておくこと

介護費用が必要になったとき、当人と意思の疎通ができるとは限りません。

認知症や、脳梗塞などの病状によっては、思うように会話ができない可能性もあります。

前もって、親世代や兄弟姉妹たちと、資産管理口座と引き出し方法、誰が引き出すかなどを話し合っておくことが大切です。

原則、介護離職はしない方法を考える

総務省の調べによると、過去5年間に「介護のために前職を離職した者」は約102.5万人となっています。

参照:総務省(pdf)

しかし、子世代の生活を考えると、介護離職は最後の最後の最後の手段です。

収入の確保のためにも、「介護以外の時間」を作るためにも、極力離職しない方法を考えましょう

育児・介護休業法に基づいた申請できる制度を紹介

次に紹介する制度は、家族の介護をおこなう労働者が利用できる制度です。

要介護2以上、あるいは「介護が必要な状態」が2週間以上継続している場合に利用できます。

「育児・介護休業法」という法律に基づいたもののため、勤務先に制度がなくても申請ができます。

介護離職はしない

介護休業

・ 介護が必要な家族1名につき、通算93日まで取得可能

3回まで、分けて取得できる

・ 雇用保険から休業前賃金の67%が支給される(条件を満たした場合)

入所までの数週間、リフォームが済むまでの期間など、一定期間まとめて休みを取りたいときに使えます。

介護休暇

・ 介護が必要な家族1名につき、年間5日まで取得可能(2名以上の場合は10日まで)

・ 1日、半日、または時間単位で取得できる

年次有給休暇や介護休業とは別に申請できる

病院や施設への付き添い、介護サービスの手続きなど、数時間程度で片づくものの場合は、介護休暇が便利です。

介護のための所定外労働の制限

介護が終了するまで、残業や時間外労働、深夜業の免除を申請できます

介護のために事業主が講じる措置

家族の介護をする労働者が利用できるように、事業主は次のいずれかの措置を講じるよう定められています。

・ 短時間勤務制度

・ フレックス制度

・ 時差出勤の制度

・ 介護費用の助成措置

ハラスメント防止・不利益取り扱いの禁止

介護休業などの申請・利用を理由に、解雇や不利益な取り扱いをすることは禁止されています

また、事業主は、介護休業等を理由とする嫌がらせを防止する義務があります。

参照:厚生労働省(pdf)

次の記事も、参考にしてください。

公的介護保険の仕組みを知っておく

親が介護状態になったとき、子世代が介護保険の手続きをおこなうことが多いでしょう。

基本的な仕組みを知っておくことが大切です。

公的介護保険の仕組みを知っておく

適用まで時間がかかる

介護保険は、まず介護が必要な状態であることを申請し、「要介護認定(要支援認定)」を受けます。

そのために、介護状態、あるいは日常生活の介助が必要な状態が「原則、6か月間継続」していることを示す必要があります

また、申請から審査、結果通知までは1か月程度かかります

介護(介助)が始まっても、すぐに介護保険が使えるわけではないことを知っておきましょう。

参照:厚生労働省

サービス費用負担額が減るだけで、給付金はもらえない

介護保険は、「給付金が支払われるタイプの保険」ではありません。

健康保険同様に「利用代金の自己負担額が安くすむタイプの保険」です。

介護保険適用の介護サービスを利用した際に、利用料の自己負担金額が1割(一定以上所得者は2~3割)ですむというものです。

それぞれの要介護認定の度合い(要支援2段階、要介護5段階)によって、利用限度額が設定されています。

限度額を超えた部分は全額自己負担になります。

また、居住費や食費、日常生活費用などはサービス対象外です。

参照:厚生労働省

40~64歳までは、特定の病気による介護状態のみ

公的介護保険は、40歳になると自動的に保険料の徴収が始まります。

65歳以上で介護状態になった場合は、その原因は問われません。

しかし、40~64歳までは「特定の疾病による介護状態」のみが対象となることに注意が必要です。

生命保険の介護保障の有無を確認しておく

民間保険会社の「介護保障」に加入している場合、どのようなときに出るのかを確認しておきましょう

保険会社によって、支払い条件が異なります。

要介護認定必須のものから、保険会社が独自に定めた条件を満たせば出るもの、程度によって金額が異なるものなどさまざまです。

一時金なのか、年金タイプなのかなど、どのようなときにいくら支払われるのかを把握しておくことで、いざというときに慌てずにすみます。

指定代理請求人の確認

指定代理請求人は、本来の受取人が請求手続きをおこなえないときに、あらかじめ指定しておいた家族が代理でおこなえるという制度です。

医療保険や介護保険など、「自分のために使う給付金・保険金」は被保険者自身が受取人になっているものがほとんどです。

しかし、状態によっては、被保険者が手続きできない場合も考えられます

死亡保険金受取人は、契約時に配偶者を指定したまま放置しているものがほとんどです。

受取人の高齢や認知症、病気によって意思の疎通が難しい場合があります。

給付金・保険金は、あらかじめ指定した「受取人」と「指定代理請求人」以外は請求手続きができません

必ず、「子世代」で「実際に手続きをおこなえる立場の人」を指定しておくことが重要です。

実際に手続きをおこなえる立場の人を指定

高齢化により、給付金・保険金の受け取りが難航する可能性がある

自分の保険は把握していても、親の保険を把握している人は少ないでしょう。

しかし、親世代の保険を、実際に使う可能性が高いのは子世代のほうなのです。

ここ数年の保険会社は、新契約・既契約ともに指定代理請求人の登録を積極的におこなっています。

通常は子世代の登録を推奨していますが、タイミングによっては配偶者を指定したままになっている可能性もあります。

保険会社は、契約者以外と「契約の変更」をおこなうことができません

契約者が元気なうちに、医療保険や死亡保険、貯蓄型の保険なども含め、しっかり確認しておきましょう。

できるだけ、わだかまりなく終えられるために

「やってはいけないこと」と題してお話しましたが、それぞれの状況によってはどうしようもないこともあるかと思います。

あるいは、子世代の不安をよそに、親世代はしっかりと備えを進めているかもしれません。

まだ介護が現実になっていないときのほうが話せることもあるでしょう。

実際に介護が始まってから金銭でもめたり、負担がかからないためにも多くの情報を取り入れ、今後に役立ててください。(執筆者:仲村 希)