1年以上停止していたマレーシアの長期滞在ビザ(MM2H)が2021年10月より再開するとの発表がありました。

再開自体は喜ばしいことですが、その伴い取得要件が大幅に変わることが大問題となっています。

マレーシア長期滞在ビザ(MM2H)の 取得要件が大幅に変更か

マレーシアの長期滞在ビザの取得要件が大幅に変更へ

まず収入要件として、月額1万リンギット(約26万円)が4万リンギット(約104万円)と一気に4倍に引き上げられました

既存の運用が維持されれば、申請者が夫婦であれば世帯の所得として夫と妻の収入は合算できますが、その金額は「手取り」である必要があるので、日本在住なら年収ベースでは2,000万円強となります。

以前は月26万円だったので「30代の共稼ぎ」世帯なら、問題なくクリアしていた申請者層が、富裕層とまではいかなくてもアッパーマスクラスでなければ不可能な要件になってしまいました

資産要件も大幅変更

そして資産要件は、変更前は50歳未満なら50万リンギット(約1,300万円)以上の資産を持ち、うち30万リンギット(約780万円)をマレーシアで定期預金をすれば済んだものが、150万リンギット(約3,900万円)と3倍の資産が必要となり、それに伴って必要な定期預金額も100万リンギット(約2,600万円)と3.3倍になっています

保有を証明する約3,900万円の資産は、株や債券や預金などの金融資産であって、不動産を含まないものなので、これもなかなか30代や40代の若い世代が普通に持っている金額とは考え難いです。

またこれは仮にFIREを目指して20代から収入のほとんどを投資につぎ込み、株式の時価が5,000万円を超える人であってもやはり厳しい数字といえます。

なぜなら、資産のうち2,600万円を定期預金しなければならず、マレーシアではかつて3%以上の金利が付き、預金そのものが資産運用といえたものが、最近は景気後退により1%台半ばで推移しているため、FIREを目指す人が目標とする年4%~5%の利回りに及ばず、預けるのを躊躇すると考えるからです。

為替の不安もあり、日本で保有する証券口座を解約することは、相当の抵抗があると思います。

MM2H保有者に対しても更新時に適用されることに

さらに資産要件は50歳以上のほうが、必要な資産額等が少ないので、彼らにとってより負担の大きい変更になり、やっと会社をリタイアして、さあMM2Hを取ろうと意気込んでいた人には、また一から収入や資産プランを見直さなければなりません。

このような収入条件や資産条件の大幅な変更に加え、さらに細かい変更もあり、マレーシアでFIREやリタイアを目指して頑張ってきた人にとって、そのゴールははるか彼方に行ってしまったといえます。

また、それ以上に問題なのは、この新しい収入や資産要件が既存のMM2H保有者に対しても更新時に適用されるということです。

今ある収入や資産でやりくりしようと思っていたFIREやリタイアメント生活者に、月4万リンギット以上の月収や150万リンギット以上の資産の積み増しが要求されることは寝耳に水であり、せっかくゴールしたと思った「夢の南国生活」が音を立てて崩れていく不安があるに違いありません。

見直し要求でも新たな水準を求められるのは避けられない

あまりにも酷なこの改正要件は、8月11日に内務省からの発表後すぐに見直し要求の世論が高まりました

そして直後の8月16日にはなんと内閣が退陣という政治的空白が生じてしまったため、本当にこのまま実施されるかどうかわからない状況であります。

個人的予測としては、既存のMM2H保有者の更新要件はやはり影響が大きすぎるので、上記のような大幅な変更はないが、新規取得者には一定水準以上の収入や資産要件が新たに求められるのは避けられないと思っています。

この「一定水準」がどのくらいで落ち着くのかは今現在ではまったく不明ですが、世界が発展しているうちに、日本の相対的地位が下がったため、われわれにとって厳しい水準になることは間違いなさそうです。

移住は慎重に考えよう

移住や長期滞在は慎重に

現在流行しているFIREや海外移住は、資産運用や海外移住のためのビザが、永遠に安定していることが前提となります。

しかし、現実は厳しく、全くこちらの都合とは関係なく物事は変わっていくようであります。

マレーシアのビザの取得が厳しくなったので、タイやフィリピンを候補に考える人もいるようですが、言語や文化はもちろん、経済や政治的社会的状況がそれぞれの国で大きく違っているため、遊びにいくならともなく、移住や長期滞在は慎重に比較する必要があります。

例え仕事を辞めリタイアしたとしても、世の中の動きをチェックすることは、むしろ仕事をしていた時以上に行う必要性がある。そんな風に感じざるを得ない出来事であります。(執筆者:田井 能久)