任意売却とは?任意売却を考える前に必ず知っておくべき全知識

任意売却で知っておくべき全知識

住宅ローンを返せなくなった場合、「任意売却」という手段があります。

任意売却とは、競売以外の手段で行う債権者のための売却方法のこと

任意売却は高く売れるというメリットが強調される一方で、かなりの労力がかかり、詐欺も存在します。

結論からすると、任意売却を行うにあたっては、事前にしっかりとした知識を身につけおくことが必要です。

これから任意売却を検討しようとしている人の中には、以下のことを思っている方も多いことでしょう。

こんな悩みをスッキリ解消!

  • 任意売却について基礎的な知識を知りたい
  • 任意売却を勧めてくる電話やDMが来るが、任意売却に切り替えるべきなの?
  • どういう人にメリットがあるの?
  • 銀行に任意売却を申し入れたら断られてしまった、どのように交渉すればいいの?
  • 消費者金融の取立に疲れた、任意売却すべきなの?

そこで今回の記事では「任意売却とは」というシンプルな問いに対して、深く解説していきます。

この記事を読めば、あなたは任意売却の知識をしっかりと身につきます。

1.任意売却とは?競売との違いは?

任意売却とは、住宅ローンなどの負債を何らかの事情で返せなくなった人が、不動産を売却することでローンを一括返済するために行う売却

通称、「任売(ニンバイ)」と呼ばれています。

任意とは「思いのままにまかせること。その人の自由意志にまかせること。また、そのさま。」という意味があります。

つまり任意売却とは「その人の自由意思に任せた売却」ということになります。

普通の売却も「その人の自由意思に任せた売却」です。

つまり、任意売却とは基本的には普通の売却と同じであるということになります。

競売とは

ではなぜ普通の売却のことをあえて任意売却などと呼ぶのでしょうか。

その理由は、「競売」の存在があります。

競売とは、同じく住宅ローンなどの負債を何らかの事情で返せなくなった人が、不動産を売却することでローンを一括返済するために「法的な」制度

銀行などの債権者は、住宅ローンを貸す際に、不動産に抵当権を設定します。

つまり不動産を担保にとってお金を貸しています。

抵当権を設定するとは、「もしお金が返せなくなった場合は、この不動産を売却してお金を返してください」と予め約束をしているということです。

そこで、本当に住宅ローンが返せなくなった場合は、約束通り、抵当権が実行されます。

抵当権の実行とは、競売による不動産の売却のことを指します。

競売については、以下の記事で詳しく解説しています。

最終的にはお金が戻ってくれば良い

競売は国が認めている法的な制度のため、競売による不動産の売却は裁判所が行います。

銀行は、裁判所が確実に売却を行ってくれるため、安心してお金を貸すことが出来ます。

ただ、銀行にとってみると、貸したお金が返ってくるのであれば、別に競売でなくても構わないわけです。

競売は、裁判所が行う売却であるため、手続きが厳格であり、売却までに1年以上もかかることもあり、債権者にとってデメリットもあります。

そこで、住宅ローンを借りている債務者が「普通に売却して一括返済します」ということになれば、それでも良いことになります。

この普通の売却による住宅ローンの一括返済が、「任意売却」になります。

競売という強制的な方法ではなく、その人の自由意思に任せた売却であることから、任意売却と呼ばれているのです。

普通の売却との違い

任意売却は普通の売却であると書きましたが、あくまでも「住宅ローンが返せなくなった場合の普通の売却」です。

住宅ローンがきちんと返せる人が行う売却は任意売却とは呼びません。

これは本当に「普通の売却」です。

住宅ローンをきちんと払える人は、もちろん住宅ローンが残っている不動産を普通に売却することは可能です。

この場合、売却金額で住宅ローン残債を一括返済し、それでも残債がある場合は、貯金から残りの残債を返済することになります。

任意売却後に残ってしまった残債の返済方法と金利の扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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以上、任意売却とは?競売との違いは?について見てきました。

それでは任意売却の本質をもっと深く理解するために、次に任意売却のメリットについて見ていきます。

2.任意売却の4つのメリット

良く言われる「任意売却は競売よりも高く売れる」というメリットですが、当サイトではあえてそのメリットは強調しないスタンスを取っています。

どうしてこのようなスタンスを取っているかと言うと、「今、競売はちっとも安く買えない」ということが理由です。

結果的に、任意売却の方が競売よりも高く売れるという点に関しては否定しません。

ただ、「任意売却は競売よりも高く売れる」というメリットが独り歩きすると、それを理由に近寄ってくる悪徳業者が存在し、詐欺にあう人が後を絶たないためです。

売却金額は、あくまでも売却活動の結果であり、「任売だから必ず高く売れる」という保証はどこにもありません。

高く売れたとしても、業者に払う手数料や債権者に払う担保解除料などが高くつき、結局、損してしまう場合もあります。

任意売却を行うには、銀行との交渉や、他の債権者との調整等、多くの労力が必要になります。

その労力とパワーは、恐らく任意売却と競売の価格差程度では埋まりません。

そのため、任意売却を行うにあたっては、「売却価格」以外のメリットをしっかりと認識したうえで、任意売却をすると決断する必要があります。

では任意売却のメリットについて説明いたします。

任意売却の4つのメリット

  1. 買受人を選べる
  2. 任意売却後の残債の返済計画が無理なく組める
  3. お金を自由に配分できる
  4. 近所にバレにくい

メリット1.買受人を選べる

任意売却の最大のメリットは、「買受人を選べる」という点です。

買受人とは、購入者のことです。

この点は、誰が購入者になるのか分からないという競売では絶対にできないことであるため、あえて一番のメリットとして挙げます。

例えば、どうしても今の家に住み続けたい人であれば、買受人を選べる任意売却が適しています。

任意売却は基本的に普通の売却なので、親や親せきに買ってもらうことが可能です。

親などに購入してもらった後、親などから家を借りる形にすれば、そのまま家に住み続けることは可能です。

仮に競売になってしまうと、家に住み続けたい場合、物件を競売で落札する必要があります。

競売は入札形式のため、他の人に高い価格を提示されてしまうと、落札することができません。

そのため競売になってしまうと、確実に今の家に住み続けられるという保証がなくなります。

任意売却であれば、買受人を選べるため、親族で確実に今の家を守ることができるというメリットがあるのです。

メリット2.任意売却後の残債の返済計画が無理なく組める

第二のメリットとしては、「任意売却後の残債の返済計画が無理なく組める」ということです。

ここで、知識として任意売却も競売も、売却後に残ったローン残債は払わなければならないということを知っておく必要があります。

任意売却や競売を行うと、残った住宅ローンが全てチャラになるということはありません。

任意売却では、任意売却の了解を銀行に取るうえで、売却後の残債の返済計画についても話し合いをすることができます。

任意売却は債権者と会話ができる点がポイントです。

任意売却の申し出をする上で、今の収入状況や今後かかる生活費等も含めて債権者に開示ができます。

そこで、任意売却後の残債の返済計画についても決めることができます。

その際、話合いをすることで、緩めの無理のない返済計画で着地することが可能です。

一方で、競売の場合、売却後の残債の扱いも厳格です。

残債もきちんと返済するよう厳しく求められます。

但し、自己破産を計画している人にとっては、この点はメリットではありません。

自己破産は借金が全て無くなりますので、売却後の残債をそもそも気にする必要がないためです。

自己破産を選択する場合であれば、むしろ今の家に長く住める競売の方がメリットはあると言えるでしょう。

メリット3.お金を自由に配分できる

第三のメリットとしては、「お金を自由に配分できる」という点です。

任意売却では、自分へも少しお金を残せるように自由に配分することもできるため、引越代等もそこから捻出することが可能です。

良く、「任意売却は引越代が出ますよ」と言う人がいますが、

任意売却だから引越代が出るのではなく、自由に配分できるから引越代程度は、債権者との話し合いで確保できると言い換えた方が正しいです。

競売であれば、基本的にはローン残債よりも高く売れない限り、自分の手元にお金が残ることはありません。

ローン残債よりも高く売れた場合は、所有者に還元されるため、そこから引越代を捻出することは可能です。

そのため、このメリットはあくまでも任意売却による売却額がローン残債を下回る場合にメリットが出てきます。

ローン残債を下回る中でも、話し合い次第では、引越代程度なら本人に確保させてもらえる可能性があるに過ぎません。

配分については、あくまでも話合いです。

この引越代についても「任意売却だと引越代が出ますよ」という切り口の詐欺があります。

引越代が出るかどうかは、債権者から了解をもらえない限り、分かりません。

ただ、「債権者と話合いで何でも決めることができる」という点は競売にはないメリットになります。

引越については、話し合いで決めることができるため、引越の他、引越時期についても自由に決められることもメリットになります。

メリット4.近所にバレにくい

第四のメリットとしては、「近所にバレにくい」という点があります。

任意売却は基本的には普通の売却と変わらないため、任意売却したのか普通の売却をしたのかは外部からは分かりません。

そのため、離婚により任意売却を選択したい場合等、あまり他人に知られたくない事情のある人にとってはメリットになります。

但し、競売開始決定後の任意売却においては、近所にバレないという点に関しては、「時既に遅し」です。

競売開始決定になると、裁判所から鑑定人や執行官が物件調査のためズカズカと訪れます。

住宅街の場合、この時点でかなり近所の人にジロジロと見られてしまいます。

消費者金融から借りている場合は、既に近所にも聞こえるくらいの派手な取立にあっているはずなので、近所には何らかの噂が広がっているケースが多いです。

そこにきちんとスーツを着た鑑定人や執行官が訪れれば、「あの家、競売も…」と思われてしまうこともあります。

そのため、競売決定開始後に任意売却に切り替える場合は、近所にバレにくいというメリットは、あまり享受できないと考えた方が良いでしょう。

任意売却と離婚、どちらを先にした方がいいのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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以上、ここまで任意売却のメリットについて見てきました。

任意売却はメリットだけではありません。

デメリットをしっかりと理解していないと、労多くして実り無しになってしまいます。

そこで、次に任意売却のデメリットについてご紹介します。

3.任意売却の3つのデメリット

任意売却の3つのデメリット

  1. 債権者の合意を取る必要がある
  2. 売却時期が早い
  3. 詐欺も多い

デメリット1.債権者の合意を取る必要がある

第一のデメリットとして、任意売却は「債権者の合意を取る必要がある」という点です。

後述しますが、任意売却を行うには、必要となる要件があります。

そのうちの一つが債権者との合意です。

特に、債権者が銀行の他、消費者金融等も存在し、債権者が複数いる場合は、合意を取るのが難しくなります。

例えば、売却価格がローン残債よりも少ない場合、複数の債権者にどのように配分するかを決めなければなりません。

一般的には債権額に応じた割合で分配することが多いですが、配分方法は特にそうしなければならないという決まりはないため、都度、話し合いで決めることになります。

競売の場合は、抵当権を付けた順番が早い人が優先されるというルールです。

強制的なルールのため、後順位の抵当権者は文句を言うことが出来ません。

ところが、任意売却となると、後順位の債権者がチャンスとばかりにしゃしゃり出てきます。

さらに、債務者も引越代を要求することもあります。

すると、本来、最も優遇されるはずの1番抵当権者の取り分が少なくなってしまうため、今度は1番抵当権者の合意が得られにくくなってしまうのです。

任意売却は、「何でも自由に決められる」というメリットがある一方、「何でも話し合いで合意していかなければならない」というデメリットがあります。

任意売却は複数の債権者が存在すると、合意形成が難しくなるというデメリットが顕在化してしまうのです。

デメリット2.売却時期が早い

第二のデメリットとしては、「売却時期が早い」という点です。

売却が早いというのは銀行などの債権者にとってはメリットですが、債務者にとっては早く引っ越さなければならないため、デメリットです。

特に自己破産を計画している人であれば、1年以上先に引越が伸ばせる競売の方がメリットはあります。

1年間あれば、今の家でじっくり生活を立て直すことができるかもしれないからです。

デメリット3.詐欺も多い

第三のデメリットとしては、任意売却は悪徳業者による「詐欺も多い」という点です。

手数料だけ先に取って、後は何もしないという悪徳業者もいます。

悪徳業者は、お金がなくて困っている人を巧みにだまして近寄ってきます。

「任意売却の方が高く売れますよ」、「任意売却なら引越代が出ますよ」等々の言葉で、いかにも債務者の味方のフリをしてつけ込んできます。

一方で、競売であれば全て銀行等の債権者が手続きを進めてくれますので、何も心配する必要はありません。

裁判所が行う制度ですので、「騙し」もありません。

お金をすぐに借りてしまう人は、とかく誘惑に弱い人が多いです。

詐欺から身を守るためにも、いっそのこと全て競売に委ねてしまうのは一つの手です。

どうしても今の家に住みたい等の理由がない限り、無理して任意売却を選ぶ必要はありません。

また、他のデメリットとして「ブラックリストに載る」、「売却後の残債も支払う必要がある」といった点を指摘する人もいます。

ブラックリストに関しては、任意売却だから載るというわけではなく、住宅ローンが数カ月滞納された時点で載ります。

住宅ローンの滞納は、任意売却や競売の必要要件です。

そのため、任意売却だからブラックリストに載るのではなく、既にブラックリストに載った人が任意売却や競売をしているということになります。

また「売却後の残債も支払う必要がある」点に関しては、競売も任意売却も同じです。

但し、この点は、任意売却の方が返済方法を話し合いで緩くすることもできるため、競売よりも有利ではあります。

悪徳業者や詐欺に引っかからない方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

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以上、ここまで任意売却のデメリットについて見てきました。

任意売却を理解するには、流れの全体像を把握する必要があります。

そこで次に任意売却の流れについて見ていきます。

4.任意売却の流れ

任意売却の全体の流れは下図のようになります。

任意売却の流れ

任意売却の流れ

住宅ローンの滞納発生

住宅ローンは払えなくなっても、いきなり競売や任意売却にはなりません。

住宅ローンを滞納すると、督促を受けることになりますが、それを無視して住宅ローンを3~6ヶ月滞納すると、「期限の利益の喪失」という状態になります。

期限の利益の喪失の発生

期限の利益の喪失が喪失されると、一括返済を迫られることになります。

つまり、売却してローン残債を返済しろということになります。

この段階で、債権が銀行から「保証会社」もしくは「債権回収会社(サービサー)」へ移管されます。

競売か任意売却かの判断

一括返済が迫られた後、放っておくと競売に移行してしまいます。

そこでこの段階で任意売却のメリットとデメリットを踏まえ、任意売却か競売かを選択することになります。

この段階では、自己破産も含めて検討することになります。

専門の不動産業者に相談

例えば、「このまま住み続けたい、親が買ってくれそうだ」等の場合は積極的に任意売却を選択していきます。

任意売却は、債権者との難しい調整が必要となるため、任意売却専門の不動産業者に依頼をします。

価格査定

価格査定は任売専門業者の方で行います。

自分でも市場価格を知っておきたい場合は、不動産一括査定サイトなどを使って価格査定をしておいてください。

債権者も独自に査定をしていますので、市場価格を把握しておくことは交渉の目線合わせも役立ちます。

債権者との調整・合意

債権者の合意を得ることが、任意売却の最大の難関です。

そもそも安い価格で売却するのであれば、任意売却の合意は得られません。

合意形成には、競売よりも高く売れそうだと分かる根拠資料があり、債権者にとってメリットがある必要があります。

販売開始

親族等以外で第三者に売却する場合、販売活動を開始します。

親族以外の売却で自分が住み続けたい場合は、投資家などを探す必要があります。

住み続ける場合は、売却後の賃料でも買主と合意を得ておく必要があります。

買受人決定

金融機関と合意した売却額で購入してくれる買主が現れた場合は、買主を決定します。

任意売却は売買契約と決済を1日で済ませるため、資力・信用のある人を買受として選ぶ必要があります。

売買代金の承諾・配分調整

仮に、合意した売却額に達する買受人が現れなかった場合、売却額を下げてよいか等の承諾を再度得ます。

ここで金融機関の承諾が得られなかった場合は、任意売却は失敗です。

売却金額に対し、金融機関の承諾が得られれば、次に各債権者への配分調整を行います。

配分については、あらかじめ配分表を作成しておきます。

契約締結・決済

任意売却の決済は、売買契約と決済を同時に行います。

この点は普通の売却とは異なる点です。

通常の売却のように、売買契約時に手付金を渡してしまうと、債務者に手付金を持ったまま夜逃げする可能性を防ぐためです。

競売手続き中の任意売却

尚、債権者が銀行からサービサーに移転した後、放っておくと1~2ヶ月で競売申立がなされて、競売開始決定が行われます。

競売開始決定後も、実際に競売が行われるまでは半年近く時間がかかるため、その間に任意売却をしても構いません。

競売開始決定後に任意売却して、成功した場合には、競売が取下げになります。

また競売開始決定後、2ヶ月ほどすると裁判所が「配当要求終期の広告」というものを行います。

すると、どんな物件が今後競売になるかというのが、一般に公開されることになります。

このタイミングで任意売却を勧めるDMが来たり、家に業者が訪れてきたりします。

悪徳業者も多いので、十分に注意してください。

以上、ここまで任意売却の流れについて見てきました。

任意売却は、債権者との交渉も多いという点がデメリットです。

ただ、銀行が任意売却を主導してくれる場合は、とても楽なケースがあります。

そこで次に任意売却を主導する人について見ていきましょう。

5.任意売却を主導する人

任意売却は誰が主導して行っていくかで、労力や成功確率が大きく異なってきます。

任意売却を主導するケースは、大きく以下の2種類があります。

  1. 銀行等の債権者が主導する場合
  2. 所有者本人である債務者が主導する場合

債権者が主導する場合

任意売却は、競売よりも早く高く売れる可能性があります。

これは債権者にとってのメリットです。

そのため、債権者側から「任意売却しませんか」と持ち掛けてくることもあります。

この場合、債権者が債務者の了解を取る形になります。

共有者がいれば、その共有者にも了解を取ります。

債権者主導の任意売却の場合には、そもそも債権者の合意が取られている状態からスタートするため、とても楽です。

通常、債権者側にはお抱えの任売専門業者が存在します。

そのため、任意売却も債権者が指定した任売専門業者で行われるため、詐欺もありません。

価格査定も債権者側の任売専門業者で行い、債権者の方もおよその売却額を把握した上で実行します。

債権者が主導する任意売却は、「他に債権者がおらず調整が楽な物件」や、「十分に債権が回収できる物件」等、条件の良い物件に限られてきます。

また中小企業への貸付に対する回収では、債務者である社長が夜逃げする可能性があり、その前に任意売却するというケースもあります。

但し、最近の金融機関のスタンスは、「無理矢理、強要して任意売却させた」と思われるのを嫌がります。

粛々と法的手続きである競売を実施する傾向にあります。

そのため、債権者も任意売却を望んでいるとは、過度に期待しない方が良いでしょう。

債務者が主導する場合

次に債務者が主導する場合です。

この場合は、債権者に「任意売却をしても良い」という合意を得る必要があるため、とても大きな労力を要します。

そのため、「なぜ任意売却したいのか」という点にもう一度立ち戻り、しっかりと任意売却をする理由を固める必要があります。

任意売却をするにあたっては、全債権者からの合意を得る必要があります。

債権者が1社だけなら良いですが、複数の銀行や、消費者金融等からもお金を借りており、多重債務者のような状況になっていると、その合意は困難を極めます。

任意売却は、「買受人を指定して住み続けられる」以外には、メリットは「引越代が確保できる」程度です。

多重債務でも任意売却を選択したい場合は、任意売却をした方が明らかに全債務を一括返済できるというような状況であれば、任意売却を選択する価値はあります。

特に、消費者金融のような手ごわい債権者がいる場合、任意売却で担保解除をしようとすると、法外な担保解除料を請求される等のリスクがあります。

また自己破産も計画している人であれば、任意売却を選択するメリットはあまりありません。

自己破産であれば、いずれにしても全ての借金が無くなりますので、わざわざ交渉や調整を必要とする任意売却を選択する必要はないのです。

尚、債務者が主導で任意売却をする場合、債権者であるサービサーに信頼できる任売専門業者を紹介してもらうことをオススメします。

サービサーから紹介された業者であれば、詐欺にあうことを未然に防ぐことができるためです。

以上、ここまで任意売却を主導する人について見てきました。

任意売却と普通の売却との違いを理解するために、任意売却の要件を知っておく必要があります。

そこで次に任意売却の要件について見ていきます。

6.任意売却の要件

この章では、任意売却の要件についてお伝えします。

一括返済が求められていることが前提

任意売却と普通の売却の大きな違いは、債権者から「一括返済」を求められているかどうかの違い

通常、住宅ローンが残っている状態でも、家を売却することは可能です。

住宅ローンを正常に払っている人が不動産を売却しても任意売却にはなりません。

任意売却とは、「期限の利益の喪失」した人が、債権者から一括返済を求められた段階で行う普通の売却になります。

住宅ローンは3~6ヶ月滞納すると期限の利益を喪失してしまいます。

住宅ローンは、「35年かけてゆっくり返してくれれば良いですよ」と言われているため、借手にとってはとても利益があります。

その利益を喪失すると、「今すぐ返せ」となり、一括返済を迫られます。

これを期限の利益の喪失と言います。

そのため、現在、正常に住宅ローンを払っていて、将来的に払えなくなりそうだという人は、今の段階で売却することをオススメします。

このことをグレーゾーン売却と呼びます。

期限の利益を喪失してしまうと、その時点で信用情報機関の名簿に名前が記載されてしまいます。

これがいわゆるブラックリストです。

信用情報機関とは、「全国銀行個人信用情報センター」「株式会社シー・アイ・シー」「株式会社日本信用情報機構」の3つを指しますが、この3つの機関は情報共有されているため、どこか一つでも情報がのってしまうと、記録として残ります。

グレーゾーン売却であれば、ブラックリストに名前が載ることはありません。

任意売却の要件

では次に、期限の利益の喪失した人が、任意売却を実行するには以下7つの要件が必要になります。

条件内容
債権者の合意を得ていることサービサーや消費者金融等、お金を借りている全ての債権者の合意を得る必要があります。
税の滞納等で物件が差押さえられていないこと差押がある場合、任意売却前に差押を解除しておく必要があります。
売却活動時間が十分に確保されていること競売の入札期限が目前に迫っているような状態では任意売却はできません。
市場価値のある物件であることすぐに売れず、市場価値の著しく低い不動産は認めてもらえません。
共有者の同意が得られていること任意売却に限らず、共有物件の売却には共有物件の場合は、共有者全員の同意が必要です。
連帯保証人の同意が得られていること連帯保証人がいる場合、同意を得ておく必要があります。
一定額以上の管理費・修繕積立金の滞納がないこと多額の管理費・修繕積立金の滞納があると、任意売却を認めてもらえません。

尚、任意売却の条件については、下記に記載しています。

詳しく知りたい方は、ぜひご参照ください。

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7.重要な価格査定

この章では、任意売却で重要な価格査定についてお伝えします。

残債額との関係を調べる

住宅ローン残債が売却価格よりも高い状態のことをオーバーローンと呼びます。

逆の状態をアンダーローンと呼びます。

まず任意売却を検討するにあたり、オーバーローンかアンダーローンかでは、天と地ほどの差があります。

アンダーローンの状態であれば、積極的に任意売却を検討すべきです。

任意売却でローン残債が一括返済できれば、全ての問題を一気に解決することが可能になります。

一方で、オーバーローンの状態の場合、慎重に判断をせざるを得ません。

オーバーローンの状態であれば、任意売却や競売を行っても、いずれにしても残債が残ります。

売却後の残債があまりにも大きく、払いきれないという場合は、「自己破産」も検討せざるを得ません。

自己破産は住宅ローンが払えなくなった人の法的な債務整理で、最終手段になります。

個人に経済的再生のチャンスを与える法的な制度です。

自己破産はクレジットカードが使用できない・当面組めなくなる、資産を手放す必要がある等のデメリットがありますが、借金は全て無くなります。

そのため、自己破産を検討している人は、少しでも長く住める競売の方が有利になります。

一方で、オーバーローンの人でも、どうしても今の家に住み続けたい人などは、任意売却が有利です。

但し、この場合、任意売却後のローン残債の返済方法についても債権者と協議して決めなければなりません。

自分がどうしたいかが重要

このように、オーバーローンの状態であれば、「自分がどうしたいか」によって任意売却にすべきか、競売にすべきかが決まります。

まずは、判断の分岐点であるオーバーローンかアンダーローンなのかの状態を見極めることが必要です。

それには価格査定が必要です。

任意売却を決断した後は、任売専門業者が独自の査定を行います。

但し、それより以前に、オーバーローンかアンダーローンなのかを見極めるために査定は取っておく必要があります。

債権者に住宅ローン残債を確認するとともに、今の家の市場価値を把握しておきましょう。

以上、ここまで価格査定について見てきました。

任意売却は確実に買い取ってくれる人を探す必要があるため、買取という選択肢もあります。

そこで次に買取について見ていきます。

8.確実なのは不動産「買取」

この章では任意売却において確実な売却方法である不動産買取についてお伝えします。

銀行交渉のポイント

任意売却で難しい点は、債権者の合意を得ることです。

債権者の合意を得るには、「具体的な売却金額と具体的な買主」を提示して了解を得ることが最も大切です。

「いくらで売りたい、いくらで売れるだろう」では、「本当にこの金額で売れるのですか?」となり、それ以上話を進めることができません。

一方で、買取業者を見つけてしまえば、具体的な金額と具体的な買主を提示することが可能です。

買取とは、不動産会社が転売目的で不動産を購入することをいいます。

但し、買取は市場価格よりも安くなります。

その安い金額でも債権者が納得してくれれば、任意売却をすることは可能です。

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買取一括査定の利用が有効

買取のメリットとしては、債務者が買取業者をすぐに見つけることができる点です。

買取にも一括査定サイトがあるため、最も高い価格を提示してくれる買取業者を見つけることができます。

買取専門の一括査定サイトとは、複数の買取専門の不動産会社から、買取価格の査定を取れるサイトのこと

買取の専門の不動産会社も見つけることができますし、何よりも買取価格を競わせることができるため、買取価格を高くすることができるのも大きなメリットです。

例えば、買取専門の一括査定サイトには以下のようなものがあります。

  • 2006年にサービス開始。不動産一括査定サイトの中でも、歴史が古い「リビンマッチ
  • 全国400社以上の不動産会社と提携している「イエカレ
  • 全国47都道府県、店舗別のサイトを有する「不動産買取.com

買取専門の一括査定サイトは、使えば使うほど買取価格の高い業者が見つかる可能性が上がるので、特段一つに絞る必要もありません。

できるだけ多くの一括査定サイトを使い、たくさんの提示額の中から最も高い金額を提示してくれる不動産会社を見つけることをオススメします。

任意売却では、債権者の合意を得るために、買受人を探すことが、大きなポイントになります。

そこで次に買受人を探すことについて見ていきます。

9.買受人を探す

この章では、債権者の合意を得るために、買受人を探すことについてお伝えします。

買受人の条件

任意売却では、売主である債務者の夜逃げ等を避けるため、売買契約と引渡を同じ日の1日で実行します。

そのため、買主には当日契約して、当日代金を支払うことのできる資力・信用がある必要があります。

また債務者である売主には資力がないため、瑕疵担保責任を負うことはできません。

任意売却では瑕疵担保は免責する特約を設けるとともに、現状有姿で物件を引き渡すことになります。

そのため、買主は物件の不具合があっても、それらを全て呑み込めるような人でなければなりません。

さらに、実測面積と公簿面積が異なっていても、後から精算を行わないようにします。

つまり公簿売買が原則となります。

そのため、買主は公簿売買でも文句を言わないような人であることが前提になります。

買受人は買取業者が多くなる

このように、任意売却では、買受人が様々なことを呑み込んで購入することになります。

一般的に、このような買主にとって不利な状況でも呑み込める人で、なおかつ売買契約日当日にキャッシュで売買代金の全額を支払えるという人は、結果的に買取業者になります。

任意売却は、一般個人に売却するにはハードルが高いため、結局は買取業者が買受人となることが多いです。

買取業者の目線は、市場価格の8割程度が一般的です。

実際には、この市場価格の8割程度の価格で債権者の合意を得られるかどうかが勝負になります。

今の家に住み続けたい場合

尚、今の家に住み続けたい人は、親や親せきに売却することになります。

この場合も、親族だからと言って安く売却できるわけではありません。

親族へ売却するときも、基本的には第三者へ任意売却するときと同等の金額が求められます。

但し、アンダーローンの状態で残債がかなり少なければ、残債以上の金額で買い取ることで任意売却が認められる可能性はあります。

以上、ここまで買受人を探すについて見てきました。

複数の債権者がいて任意売却をする場合は、売却額を各債権者へ配分する必要があります。

そこで次に配分の検討について見ていきます。

10.配分の検討

この章では、各債権者への配分方法についてお伝えします。

配分の基本

競売は、法律で各債権者への配分方法が決まっているため、配分で悩む必要がありません。

ところが、任意売却は「何でも話し合い」であるため、配分についても話し合いで決める必要があります。

競売においては、抵当権を付けた順番が早い人から優先的に配分を受けます。

例えば1番抵当権者の人が2,000万円、2番抵当権者の人が500万円の残債と有していたとします。

競売の結果、2000万円で売却となった場合は、1番抵当権者は全額得ることができますが、2番抵当権者には1円も入ってこないのが競売のルールです。

競売は、法律で決まったルールに基づいて行うため、2番抵当権者はこれでも文句を言うことができません。

任意売却も基本的には、抵当権の順位を優先して配分していくことが基本です。

しかしながら、任意売却であれば2番抵当権者にも発言の機会が出てくるため、回収のチャンスが見込めます。

任意売却では、抵当権の抹消に2番以降の抵当権者にも抵当権の抹消を了解してもらう必要があります。

任意売却であれば、2番以降の抵当権者は抵当権の抹消を抵抗することでお金を少しでも回収できるチャンスがあるのです。

担保解除料

そこで配当を与えることができない抵当権者へ「担保解除料」を支払うことで抵当権の抹消を了解してもらうことがあります。

担保解除料の目安については、以下のようになります。

抵当権順位目安
2番抵当権者30万円または残元金の1割のいずれか低い方
3番抵当権者20万円または残元金の1割のいずれか低い方
4番抵当権者10万円または残元金の1割のいずれか低い方

任意売却では、さらに交渉次第では、20~30万円の引越代も手元に残しておくことができます。

しかしながら、このように担保解除料や引越代が増えると、1番抵当権者の取り分が少なくなることを忘れてはいけません。

他の債権者がいる場合、1番抵当権者の合意を得るハードルが高くなります。

そのため、任意売却は債権者同士の調整が無くて済む、債権者が1社だけの物件が向いています。

以上、ここまで配分の検討について見てきました。

ここまでの内容を別の観点から眺めると、任意売却に失敗する場合が見えてきます。

そこで、次に任意売却に失敗する場合について見ていきます。

11.任意売却に失敗する場合

任意売却の最大のハードルは、債権者の合意にあります。

債権者の合意が得られなければ、任意売却は失敗です。

債権者の合意を得られないケースとしては、以下の3点があります。

  • 売却価格で合意を得られない
  • 売却価格に達する買受人を見つけられない
  • 配分で債権者の合意が得られない

任意売却を成功させるためには、この3つをクリアーするために、奔走します。

決して楽な道のりではないことを知っておく必要があります。

この合意は債権者の数が増えれば増えるほど、調整が難しくなり、ハードルが高くなります。

単純に「任意売却は高く売れるから」という理由だけで飛びつくのは、費用対効果がありません。

「なぜ任意売却を選択する必要があるのか、競売では本当に駄目なのか」を今一度考えて、任意売却を選択するようにしてください。

任意売却には悪徳業者も存在するため、詐欺に引っかかってしまうと、「泣きっ面に蜂」になります。

国が元々用意してくれている、競売制度をやらずに、苦労して任意売却をするのであれば、それなりの理由が必要です。

十分にメリットを考えてから任意売却を選択するようにしましょう。

任意売却の成功事例・失敗事例については、以下の記事で詳しく解説しています。

事例を見れば分かる!任意売却を選択して良かった成功事例3つと失敗事例2つ

住宅ローンを払えなくなった場合、任意売却を行う人がいますが、任意売却は全ての人が満足いく結果にはなりません。 人によって ...

続きを見る

以上、ここまで任意売却に失敗する場合について見てきました。

では、最後に任意売却に苦労しないためにも、任意売却の向き不向きについて紹介いたします。

12.任意売却の向き不向き

任意売却にたどり着くためには、債権者との合意を得る必要があるなどハードルが高いというのが実態です。

そのため全ての人や物件に対して任意売却はおススメしません。

任意売却をおススメする人や物件については、下表の様になります。

オススメ人・物件概要
オススメする向いている人今の家に住み続けたい人 ž 債権者(銀行)が1社だけの人 ž 離婚後に一括返済を迫られた人
向いている物件アンダーローンの物件 ž 売却後のローン残債がわずかな物件
オススメしない向いていない人自己破産を考えている人 ž 複数の債権者がいる人 ž ブラックリストに載りたくない人
向いていない物件築古アパート等の収益物件 ž 底地や借地権付き建物等の権利関係が複雑で売却しにくい物件

13.任意売却業者を探すオススメの方法

これまでお伝えしたように任意売却業者は詐欺の会社も多く、あなたにピッタリの業者かを判断するのは難しいです。

そこでオススメなのが「 HOME’S任意売却 」を使うこと。

HOME'Sは一部上場企業、任意売却業者を審査しており、厳選しております。

安心な任意売却業者のみとなっており、自動的にピッタリな業者を探してくれます。

利用者が急増中のため、ぜひ利用してみましょう。

まとめ

任意売却とは何かを知りたい人が最初に読むべき基礎的な内容を徹底解説してきました。

任意売却は全てを解決してくれる魔法の手法ではありません。

任意売却にしかできないこともありますが、デメリットも存在します。

任意売却を選択するかどうかは、「自分が何を望んでいるのか」が重要になります。

自分の希望に合わせて、任意売却や競売、またはグレーゾーン売却を選ぶようにしましょう。

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