マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

個人がマイホームを売却や買換えした時によく使われる特例は下記5つがあります。

譲渡益譲渡の種類特例
譲渡益が生じる場合 (所得税が発生)売却3,000万円の特別控除
No.3302 マイホームを売ったときの特例
売却所有期間10年超のマイホームを譲渡した場合の軽減税率の特例
No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
買換え特定のマイホームの買換え特例
No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
譲渡損が生じる場合 (所得税が戻ってくる)売却マイホームに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
買換えマイホームの買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき

中でも今回は上記の太字で示した「マイホームの買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」についてお伝えいたします。

国税庁のページには下記のように書いています。

 マイホーム(旧居宅)を令和元年12月31日までに売却して、新たにマイホーム(新居宅)を購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
 これらの特例を、マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。

※出典:国税庁「No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」より

シンプルに言うと下記の通り。

「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、マイホームを買換えして発生した損を元に税金の還付を受けることのできる制度

この特例を受けると「税金還付を受けること」ができますので、不動産売却をさらにお得にします。

ちなみに国税庁のHPにも説明はもちろんありますが、少し内容が細かすぎて初心者には理解が難しいと思います。

ですので、こちらではなるべく噛み砕いて説明しておりますので、安心して読み進めてください。

※当記事では、居住用財産とマイホームと同じ言葉として記載しています。

株式会社グロープロフィット 代表取締役 竹内英二

【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター

株式会社グロープロフィット 代表取締役

竹内英二

大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。

資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士

1.売却損は発生しやすいので一番使える特例

最初に築年数別に見た住宅価格の下落の推移を以下に示します。

築年数別に見た住宅価格の下落の推移

築年数別に見た住宅価格の下落の推移

グラフは㎡当たりの単価を示しており、パーセントの数字は築0~5年目までを100%とした場合の、価格の下落率を表しています。

グラフを見ると、戸建やマンションの価格は築年数に応じて下がっていることが分かります。

そのため、よほど土地の価格が上昇しない限り、基本的には住宅を売却すると売却損が発生します。 

売却損が発生するということは、今回の主題である「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が使えるというわけです。

以上、ここまで売却損は発生しやすいについて見てきました。

それでは次より特例を使った課税譲渡所得の計算について見ていきましょう。

2.売却損が発生するのかを計算する

不動産売却では、売却損益を計算するために課税譲渡所得を求める必要があります。

課税譲渡所得を「譲渡所得にかかる損失額」と言い換えることにします。

譲渡所得にかかる損失額は以下の計算式で求められるものになります。

譲渡所得にかかる損失額 = 譲渡収入(売却額) - 取得費(購入額) - 譲渡費用(売却で掛かる費用)

※譲渡収入とは売却した不動産の売却額
※取得費とは売却した不動産の昔の購入費用(ただし、建物は減価償却後の価額)
※譲渡費用は売却に要した仲介手数料等

この特例は買換えを要件としていますが、新たに買換える資産の金額等については、計算の対象にはなりません。

あくまでも買換えで売却する不動産の売却価額や取得費等だけを計算に用います。

損益通算で計算する必要あり

個人が、土地や建物を譲渡して損失が発生した場合は、通常はその損失分を他の所得(給与所得、事業所得等)から控除したり、繰越して控除したりすることはできません。

ただし、マイホームの譲渡損失についてだけ、その年の他の所得から控除(損益通算)することができます。

また控除しきれなかった残額のあるときは、その残額をその翌年から3年間に繰越して各年の総所得金額から控除できるようになっています。

それでは次に適用要件についてご説明します。

3.適用要件:マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

もちろんどんなマイホームでも特例を受けられるというわけではありません。

特例の適用要件

  1. 自分が住んでいるマイホームを譲渡すること。なお、以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。また、この譲渡には、譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けが含まれ、親族等への譲渡は除かれます。
    • (注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。
      • イ 取り壊された家屋及びその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えるものであること。
      • ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
      • ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
  2. 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産(旧居宅)で日本国内にあるものの譲渡であること。
  3. 災害によって滅失した家屋で当該家屋を引き続き所有していたとしたら、譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超える家屋の敷地の場合は、その敷地を災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(住まなくなった家屋が災害により滅失した場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に売ること
  4. 譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に日本国内にある資産(新居宅)で家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること。
  5. 買換資産(新居宅)を取得した年の翌年12月31日までの間に居住の用に供すること又は供する見込みであること。
  6. 買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。

※出典:国税庁「No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」より

また、買換えなので、譲渡資産と買換え資産の要件も決まっています。

譲渡資産の定義

特例の適用対象となる「譲渡資産」とは、個人が有する家屋又は土地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます。以下同じ。) で譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち次に掲げるものをいいます。

  1. 譲渡する個人が居住の用に供している家屋で国内にあるもの(居住の用に供している家屋を2以上有する場合には、主として居住の用に供している一の家屋に限ります。 また、譲渡する家屋のうちに居住の用以外の用に供している部分がある場合には、居住の用に供している部分に限ります。)
  2. 1の家屋でその個人の居住の用に供されなくなったもの(その個人の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限ります。)
  3. 1又は2の家屋及びその家屋の敷地の用に供されている土地等
    • (注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の三つの要件すべてに当てはまることが必要です。
      • イ その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えるものであること。
      • ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
      • ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
  4. 譲渡する個人の1の家屋が災害により滅失した場合において、その個人がその家屋を引き続き所有していたならば、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えることとなるその家屋の敷地の用に供されていた土地等
     その災害があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで(住まなくなった家屋が災害により滅失した場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)の間に譲渡されるものに限ります。)

※出典:国税庁「No.3375 「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「買換資産」とは」より

買換え資産の定義

特例の適用対象となる「買換資産」とは、譲渡資産を譲渡した個人が居住の用に供する家屋で次に掲げるもの (居住の用に供する家屋を2以上有する場合には、これらの家屋のうちその者が主としてその居住の用に供すると認められる一の家屋に限ります。) 又はその家屋の敷地の用に供する土地等で、国内にあるものをいいます。

(1) 一棟の家屋の床面積のうちその個人が居住の用に供する部分の床面積が50平方メートル以上であるもの
(2) 一棟の家屋のうち、独立部分を区分所有する場合には、その独立部分の床面積のうちその個人が居住の用に供する部分の床面積が50平方メートル以上であるもの

※出典:国税庁「No.3375 「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「買換資産」とは」より

確定申告と必要書類

買換え特例を受けるためには、必ず確定申告をする必要があります。

確定申告は売却した翌年2月16日から3月15日までの間に行います。

通常の確定申告書類と合わせて下記書類を添付が必要。

  1. 損益通算の場合
     確定申告書に次の書類を添付する必要があります。

    • イ 「居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)」
    • ロ 「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5用)」
    • ハ 旧居宅に関する次の書類
      • (イ) 売った資産が次のいずれかの資産に該当する事実を記載した書類
      • A 自分が住んでいる家屋のうち国内にあるもの
      • B 上記Aの家屋で自分が以前に住んでいたもの(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限ります。)
      • C 上記A又はBの家屋及びその家屋の敷地や借地権
      • D 上記Aの家屋が災害により滅失した場合において、その家屋を引き続き所有していたとしたならば、その年の1月1日において所有期間が5年を超えるその家屋の敷地や借地権(災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売ったものに限ります。)
      • (ロ) 登記事項証明書や売買契約書の写しなどで所有期間が5年を超えること及び面積を明らかにするもの
      • (ハ) 売った時において住民票に記載されていた住所と売った資産の所在地とが異なる場合その他これらに類する場合には、戸籍の附票の写し等で、売った資産が上記(イ)のAからDのいずれかに該当することを明らかにするもの
    • ニ 新居宅に関する次の書類
      • (イ) 登記事項証明書や売買契約書の写しなどで購入した年月日、家屋の床面積を明らかにするもの
      • (ロ) 年末における住宅借入金等の残高証明書
      • (ハ) 確定申告書の提出の日までに買い換えた資産に住んでいない場合には、その旨及び住まいとして使用を開始する予定年月日その他の事項を記載したもの
  2. 繰越控除の場合
     次のことが必要です。

    • イ 損益通算の適用を受けた年分について、一定の書類の添付がある期限内申告書を提出したこと。
    • ロ 損益通算の適用を受けた年分の翌年分から繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出すること。
    • ハ 確定申告書に年末における住宅借入金等の残高証明書を添付すること。

※出典:国税庁「No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき」より

以上、ここまで本特例の適用要件について見てきました。

それでは次に具体的計算例についてご紹介します。

4.特例を用いた計算例

計算条件

平成8年に購入したマンションを令和元年に売却(所有期間5年超)したケースで考えます。

その他の予見は下表のとおりとします。

譲渡資産の購入額60,000千円
譲渡資産の減価償却費4,000,000円
譲渡資産の売却額40,000,000円
譲渡資産の譲渡費用1,260,000円
平成29年の給与所得8,000,000円
平成29年の源泉徴収税額628,900円
平成30年の給与所得8,500,000円
平成30年の源泉徴収税額710,600円
令和元年の給与所得9,000,000円
令和元年の源泉徴収税額792,200円
令和元年の所得控除額2,500,000円

計算例

譲渡所得にかかる損失額 = 譲渡収入 - 取得費 - 譲渡費用 = 40,000,000円 - (60,000,000円-4,000,000円) - 1,260,000円 = ▲17,260,000円

平成29年の損益通算

繰越控除の対象となる金額 = 他の所得金額 - 譲渡所得にかかる損失額 = 8,000,000円 - 17,260,000円 = ▲9,260,000円

損益通算の結果、所得はマイナスとなるため、この年の所得税はゼロになります。

また源泉徴収の628,900円が全額還付されます。

平成30年の損益通算

繰越控除の対象となる金額 = 他の所得金額 - 前年の繰越額  = 8,500,000円 - 9,260,000円 = ▲760,000円

損益通算の結果、所得はマイナスとなるため、この年の所得税はゼロになります。

また源泉徴収710,600円が全額還付されます。

令和元年の損益通算

所得 = 他の所得金額 - 前年の繰越額 = 9,000,000円 - 760,000円 = 8,240,000円

課税所得額 = 所得 - 所得控除額 = 8,240,000円 - 2,500,000円 = 5,740,000円

所得税額 = 課税所得額 × 所得税率 - 控除額 = 5,740,000円 × 20% - 427,500円 = 720,500円

※所得が330万円超695万円以下の税率は20%
※427,500円は所得が330万円超695万円以下の控除額

復興所得税額 = 所得税 × 復興所得税率(2.1%) = 720,500円 × 2.1% ≒ 15,130円

所得税合計:720,500円 + 15,130円 ≒ 735,600円

還付される源泉徴収税額:792,200円 - 735,600円 = 56,600円

3年間の控除額:628,900円+710,600円+56,600円 = 1,396,100円

よって、この事例では3年間で合計1,396,100円の還付を受けることができます。

以上、ここまで具体的計算例について見てきました。

それでは次に気になる住宅ローン控除との併用について見ていきます。

5.住宅ローン控除との併用が可能

本特例は買換えを前提としていますので、新たに購入する不動産で住宅ローンを利用する方も多いと思います。

住宅ローンを使って住宅を購入すると、住宅ローン控除の適用を受けることができます。

住宅ローン控除は所得税から所定の額が控除される制度なので、本特例と似たような節税効果をもたらします。

そのため、本特例を適用した場合、住宅ローン控除のW適用が可能なのかどうかが心配となるところです。

しかしながら、本特例の優れているところは、住宅ローン控除との併用も可能という点です。

よって、本特例と住宅ローン控除はW適用ができます。

住宅ローン控除については下記に詳しく解説しています。

家やマンション売却で住宅ローン控除の適用を受けられなくなるって本当?
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6.まとめ

マイホームの買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例について解説しました。

本特例を行うためには、確定申告が必要です。

譲渡損失が発生した場合には、税金を納めなくて良いから確定申告はしなくて良いという理解ではいけません。

むしろ確定申告することによって税金が戻ってくるのです。

住宅の売却では非常に優れた特例ですので、ぜひ活用を検討しましょう。

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