新年度になると日本学生支援機構の予約採用の募集があるため、毎年春は高校等で奨学金の講演をする機会が増えます。大学等進学者に対する日本学生支援機構の奨学金の貸与人員枠は毎年拡充されており、今年度は約144万3千人(前年比:8万8千人増)の採用が予定されています。
大学の数が増え、進学率が上がる一方で、日本経済は長く停滞しており、進学に掛かる経済的負担が家計に大きくのしかかっている現状においては、奨学金に頼らざるを得ないのが現状です。
しかし、奨学金の利用に当たっては注意が必要な点がいくつかあります。これまでの講演や進学資金相談の経験から、全てではないですが3つの代表的な注意点を挙げてみたいと思います。
目次
申し込めば誰でも利用できるわけではない
まず奨学金は申し込めば誰でも利用できるわけではないということです。各奨学金には採用条件と採用枠(定員)が決められています。採用条件を満たしていなければ利用できませんし、仮に条件を満たしていても採用枠に対して申込者の数が多ければ、採用してもらえない可能性もあります。
日本学生支援機構の奨学金の場合、高校在籍中に申し込む「予約採用」と、大学等に進学してから申し込む「在学採用」がありますが、「進学してからでも申し込めるから」と予約採用には申し込まずに、在学採用で申し込んで採用してもらえなかった場合は、代わりとなる奨学金を見つけることはかなり難しくなります。進学を考えているのであれば、やはり予約採用で申し込んでおいた方が安心でしょう。
奨学金を受け取ることができるのは「入学後」
次に、仮に予約採用で採用が決定したとしても、奨学金を受け取ることができるのはあくまで進学後であるという点です。進学にあたっては、受験料、入学金、前期授業料、施設設備費、(下宿する場合の)敷金・礼金、生活用品・・・と、進学前に様々な費用が掛かりますが、こういった進学前に掛かる費用に対しては日本学生支援機構の奨学金は充てられません。
特に入学金は合格発表後すぐに振り込まないといけないので、入学金の準備ができていない場合は教育ローン等の利用を検討する必要があります。もちろん、「いつまでに」「いくら」必要かを早めに確認して、家庭で計画的に準備することが望まれます。
基本的に「お金を借りる」制度であるということ
そして3つめは日本学生支援機構の奨学金は基本的に「お金を借りる」制度であるということです。当然ですが借りたお金は返さないといけません。
しかし、ご存知のとおり卒業後に返還に苦しむ人が増えているのも現実です。今は学校を選ばなければ大学に進学することも難しくありませんが、就職はそういうわけにはいきません。奨学金とは自分の将来のための投資であり、将来を見据えてそれに見合った学生生活を送ることが大切であるという意識を学生本人に持たせることも大切だと思います。
健康状態や経済的理由により、どうしても返還が困難になった場合は、日本学生支援機構に申し出て、「返還期限の猶予」や「減額返還」の申請をすることが大切です。決して延滞しないようにご注意頂きたいと思います。
尚、日本学生支援機構以外の奨学金では、「貸与」ではなく「給付型」(返還しなくてよい)の奨学金もあります。特に最近は各大学・専門学校等も、様々な奨学金や授業料減免制度などを充実させています。また、民間にも企業や各種団体が運営する奨学金制度がありますので、早めに情報収集することも大切だと思います。