今の時期、残業すればするほど損しちゃう!?標準報酬月額の決定(後編)»マネーの達人

今の時期、残業すればするほど損しちゃう!?標準報酬月額の決定(後編)

  前回の記事を読んでいただいて、「高い保険料を支払っているから、補償も大きいのではないか?」「4月・5月・6月だけ残業しないで、それ以降に残業したら、結局保険料があがってしまうのではないか?」などの疑問がでてきたと思いますので今回、解決致します。

  保険の補償の部分ですが、社会保険には厚生年金保険健康保険とありますが、厚生年金保険は、いわゆる年金の部分なので将来、年金として支給されます。(今では、生年月日に応じて60歳以降、65歳以降に支給されています。)


厚生年金保険額・健康保険額はどのように決まるか


  この年金の額はどうやって決まるのかというと、厳密な計算方法をすべてここで書くと日が暮れてしまいますので今回はかなり割愛させていただきますが、簡単に言うと現役世代時代の所得(平均標準報酬月額及び平均標準報酬額)によって今の年金額は計算されています。しかし、今問題になっているのが年金財政の悪化等もあり、年金支給開始年齢が引き上がるという話も出ています。

  そもそも年金制度というのは、世代間扶養を基本的な考えとして運営しています。いわゆる、現在働いている人が支払っている保険料を財源にして、年金受給権を持つ高齢者に年金を支払っています。

  簡単に言いますと現役世代の人がいないと、高齢者に年金が支給されないのです。そこで今、日本で問題になっているのが、少子高齢化の進展というわけです。この関係もありまして年金の保険料は平成29年までは毎年、あがっていますのでご注意を・・。ちなみに私は現在27歳ですが、将来年金がもらえるのかどうなのかが正直不安な所です・・・。

  次に健康保険についてですが、健康保険にはさまざまな給付があります。その内、前回説明した標準報酬月額が高いことによって補償が大きくなるという保険給付というのは「出産手当金」「傷病手当金」の2つです。

  この「出産手当金」、「傷病手当金」とは出産、傷病のため、仕事をお休みする時に所得補償の為に支給されるものです。保険給付の額の出し方を簡単に説明しますと、この2つの給付は標準報酬日額というものを使います。標準報酬日額とは、標準報酬月額を30で除したものです。


出産手当・傷病手当の計算方法


仮に標準報酬月額が30万円だとすると、標準報酬日額は1万円(30万円÷30)になります。
そして、実際に出産又は傷病の為に仕事を休んだ日ごとにこの標準報酬日額の2/3が支給されます。
例でいくと一日につき6667円(10000円×2/3)程度が支給される計算になります。
  つまりこの2つの保険給付に関しては標準報酬月額が高いほど保険給付の額は多く支給されることになります。

  ということは、標準報酬月額が高い方が得じゃないか!

  ・・・・・と言いたいところでしょうが、ちょっと待って下さい。確かに、この2つの給付は標準報酬月額が高い方が多く給付がもらえます。しかし、健康保険の中の数多くの保険給付の中で、この2つだけです。そして、この保険事故が発生した場合だけに支給されるものですが、出産や傷病というのはそこまで発生率が高いものでしょうか?

  特に出産に関しては、生涯にそう何回も経験することではないと思います。先ほど、少子高齢化の話をしたのでたくさん子供を出産するように暗示をかけてしまったかもしれませんが、普通に考えて回数的には少ないと思います。又、傷病に関しても保険給付がもらえる受給期間には限度がきめられています。

  一般的に、健康保険で一番活用されている給付というのが「療養の給付」というやつです。いわゆる、病院で健康保険証を提示して診察を受け、かかった費用の3割を病院の窓口で支払う制度です(7割が療養の給付ということになります)。これは誰もが経験したことがあると思いますし、これが一番多いと思います。

  これは、標準報酬月額がいくらであろうと関係ありません。安い保険料を払っていても、高い保険料を払っていても受けられる補償はまったく同じなのです。それどころが、基本的に病院に支払う費用は総額の3割ですが、現在では70歳以上になると負担割合が1割になります。

  しかし、標準報酬月額が高いと1割負担が3割負担になってしまうのです。そうなった場合、高い保険料を払い、なおかつ受けられる補償も一般の人に比べ悪くなるんです。

  今回は紹介しませんが療養の給付以外にも、標準報酬月額が高い為に支払う費用が一般に比べて高くなるものもありますし、基本的に健康保険というものは保険事故が発生しないと保険給付を受けられませんので、掛捨ての保険になっています。


7月以降残業したら、結局保険料が上がる?


  次に、4.5.6月だけ残業せずともそれ以降残業したら、標準報酬月額を再計算されて結局保険料があがってしまうのではないか?という問題ですが、それを説明致します。社会保険には随時改定という制度があります。これはどうゆう制度かと申しあげますと・・
随時改定とは被保険者の報酬が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定(いわゆる4.5.6の給料によって決まる標準報酬月額のこと)に標準報酬月額を改定することをいいます。
  この文章だけ見ると、「やっぱり標準報酬月額が再計算されて意味がないじゃないか。」と思うはずです。でも前述の文章をよく見て下さい。・・・・

  お気付きになりましたでしょうか?「固定的賃金の変動に伴って」と書いてありませんか?

  違う言い方をしますと、固定的賃金(いわゆる基本給)が昇給、降給により変動しない限り標準報酬月額を再計算しませんよ。という意味になります。つまり、残業手当という賃金は固定的賃金には入りません。4.5.6月以降に残業をいくらしようと、再計算はされないのです。

  残業して総給料(基本給+残業代)が変動しても、基本給の部分が変動しない限り再計算されませんので、保険料が上がるという心配は解消できます。又、基本給の変動に関しても前回説明した標準報酬月額等級表の等級の部分が2等級以上変動し、かつ、その状態が3ヶ月間継続されないと随時改定の対象にはなりません。

  一方、定時決定(4.5.6月の給料で決まる標準報酬月額)は残業手当も含めて計算されますので、注意が必要です。

  余談になりますが年金をもらいながら働いていると年金をカットされるという在職老齢年金という制度がありますが、この制度も月ごとの給料ではなく標準報酬月額の額で決まりますので4.5.6月の給料がとても重要になってきます。

  保険料を払うことを否定するわけではありませんが、こういった各保険の補償の部分や保険の制度をよく考え、理解した上で残業するかどうかを検討してもいいかも知れません。

この記事を書いた人

青田 滋樹 青田 滋樹»筆者の記事一覧 http://senk.jp

株式会社DS交通 代表取締役
兵庫県出身1985年生。中京大学体育学部卒業。2009年株式会社DS交通を創設(タクシー会社)、同時に経営者としてさまざまな知識を身につける為、FPの勉強を始める。2012年にCFP認定者として登録。主に高齢者を対象に自分自身にあった、第2のライフステージをより良く迎えられるように年金相談やリタイヤメントプランを提案・アドバイスをしている。
<保有資格>:CFP・1級ファイナンシャルプランニング技能士・高等学校教諭一種免許・中学校教諭一種免許・全商簿記1級、損害保険募集人資格及び運行管理者

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