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住宅ローン「固定金利と変動金利、どっちがお得?」はナンセンス

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住宅ローン「固定金利と変動金利、どっちがお得?」はナンセンス

  消費税UPのカウントダウンが始まった今、「ならばそれまでに!」とばかりに、人生で一番大きなお買い物である『住宅購入』を考えはじめる方が増えているようです。

  そんな方々が必ず口にする「固定金利と変動金利 どちらが得?」、「金利は今後どうなって行きますか?」、「金利が上がったらどうしよう?」という言葉。

  マネースクールUNOで日々、同様の悩みと向き合うファイナンシャルプランナー平山哲也が、そんな言葉に「そのふたつは比べちゃいけないものです」と優しくSTOPをかけます。目先の金利に一喜一憂するのでなく、もっと大切にすべきものがある… 今、住宅ローンについて考えているあなたはご一読ください。 

不動産会社や銀行に住宅ローンについて相談すると変動金利でシミュレーションするのはなぜだか分かりますか?

  住宅購入というのは人生の中での大きなイベント。住宅購入の際に登場する住宅ローンというのも、金額的に見ても、20年~35年という時間を考えても、人生最大級のスケールで、その人のライフイベントのなかにおいて大きな存在感があります。

  そんな住宅ローンを使う時、ほとんどの一般の方は、「固定金利で借りるべき」か「変動金利で借りるべき」かのどちらかで悩まれます。

  具体的な例で考えてみましょう。

  「フラット35」の固定金利2%で30年ローンを組んで30,000,000万円借りました。そうすると、月々の支払いは110,885円になります。支払い総額は39,918,769円。変動金利は最近、0.87、0.97と1.0%を割るような状況ですが…

  仮に1.0%として計算します。同様に30年ローンを組んで30,000,000万円借りると、月々の支払いは96,491円、支払い総額は34,736,907円になります。


  変動金利で借りた方が、現状で想定される支払い総額は約500万円安いです。500万円も違うと、当然、「変動金利の方がかなり有利かな?」というふうに見えてしまいますね。

  でもここで、要注意なポイントがあります。

  住宅ローンについて相談した時、不動産会社や銀行というのは、まずシミュレーションをしてくれるんですが、特別なケースを除き基本的に変動金利で計算してくれます。

  これは、どうしてだと思いますか?

  一般の人は「ローン審査が通りやすいから?」とか考えるんですが、実はそうではなくて… 

  相談に来たお客さんが、

(1) 3千万円借りて、ざっくり4千万円払うプラン

(2) 3千万円借りて、ざっくり3千500万円払うプラン

  を見せられました。さて、どちらが「得」に感じますか?

  これはひとつの『暗示』なんですね。催眠術とまでは言いませんが、人間は、こういう比較を見せられると「これは借りやすいな」とか「借りれるな」っていうふうに安易に目で見て判断してしまいます。実は、そこがとても恐い訳ですね。

  買い手側が一歩踏み出しやすいので、変動金利で住宅ローンを組む事を奨めて来る。貸す側は、リスクを取りたくないから変動金利で借りてくれる方がいいんですね。(後述します)

「金利が上がった時、誰がリスクを取るのか?」というのがポイント。固定金利と変動金利はまったく別物・・・比較しちゃダメ

  「変動金利で借りても大丈夫だと思いますよ」とか、中には「私も変動金利で借りていますから」とか話す銀行員もいることにビックリなんですが、是非とも覚えておいて頂きたいのは、固定金利と変動金利は、まったく違うものだということです。これについては色々な言い方がありますが… 

変動金利は借り手側(お客様)がリスクを取る。

固定金利は貸し手側(銀行)がリスクを取る。

  という形なんです。だけども、多くの一般の方々は、別物である変動金利の金利と、固定金利の金利を同一線上で比較してしまうのです。

  固定金利は当初の計画通りに支払えます。3千万円借りて30年で返すと総額4千万円払わなくてはいけないけども、返済計画が狂うという事は絶対ありません。先述の例で言うと、月々の支払いが110,885円から減るとか増えるという事はない。

  ところが、変動金利というのは半年ごとに金利が見直されて、更に返済額が、最大25%までしかアップしないので、金利がそれ以上に上昇した場合は、元本の支払いが先送りされるということも忘れてはいけません。月々の返済額96,491円のうちに元金に回っているお金が減るということです。

  利息に回るお金が増えて、元金返済に回ってる部分が減るので、元金がいつまでもなかなか減らないという状態になります。で、30年経った時に、残ったお金を一括で払うか、その支払いをまたローンにするのかということを銀行と話し合わなければなりません。

  だから、変動金利で借りて「金利が上がったらどうしよう」といった心配をするんだったら、最初から固定金利を選んでおけばいいんです。固定金利で考えれば、そんな心配はまったくないですから。

  なおかつ、金利が低い時には固定金利、金利が高い時には変動金利という、借りる時の基本があります。この基本に忠実に立ち返るというのも必要。固定金利の2%というのは極端に安い訳です。30年2%そこそこで借りられるというのは、驚く程の低さなので、その低金利を利用しないという手はありません。

  逆に、変動金利はそれ以上に無茶苦茶低いので、今後、”上がるのか・上がらないのか”で言うと、水準的には上がる可能性の方が高いです。上がった時に、増えた月々の返済を支払えるのかどうか、それは自分のライフプランで可能なのか?ということを、まず考えた方がいいと思います。

極論ですが… 一番安全な固定金利の現在の低さでも「キツい」と感じるのなら住宅ローンは組まない事です

  相談に来られた方に、「固定金利の方がいいですよ」と単純にお話しすると、「金利は上がりますか?」、「変動だったらこんなに支払いが少ないじゃないですか」と言われる事がよくあるのですが、金利が上がるのか上がらないのかというのは、過去でも、直近の2003~2005年の時もそうですが、誰も分からないんですね。

  だから「先の事は分からない」という前提でシンプルに考えて「自分のリスク許容度」というとことを中心に考えて頂きたいです。

  「リスク許容度」というのは例えばご自身の背景ですね。

  例えば「金利が途中で4%に上がろうが5%に上がろうが、うちは女房が無茶苦茶稼いでいるから心配ないですよ」とか「退職金をもらうお父さんがいて金利が上がったら、その退職金を貸してくれるよ」とか、そういった自分のバックグラウンドがあるのなら、その人は「リスク許容度」が高いと言えます。

  でも、やっと家を買うという時に、そういったバックグラウンドがないまま変動金利を選ぶというのはものすごく危険です。

  もちろん、長きに渡って支払って行くので、自分の職が安定しているのかとかいうことも慎重に考えなければならなりません。

  毎日のように耳にする「金利は今後どうなって行きますか?」という質問。

  古い言葉で言えば、それを考える事自体がナンセンスです。厳しい言い方をすれば、この低い固定金利でキツいと感じるのであれば、やはり住宅ローンは組まない事が正解だと思います。

《平山 哲也》
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平山 哲也

青山学院大学法学部公法学科卒業後、大手証券会社にてリテール営業に邁進する中、欧米の金融教育とリスク管理手法に感銘を受ける。ビッグバン到来時は、フローからストックへの掛け声のもと教育係として全国行脚し、長期投資・分散投資の啓蒙に邁進。50歳を前に大手メガバンクへ転職し、投資の啓蒙に尽力。金融業界一筋30年の経歴だけでなく、家業の失敗による「貧乏」「借金」「子育て」「マイホーム購入」という人生経験が活きたコンサルティングは、その言葉の全てを聴くものの腑に落とす魔力がある。資産形成のアドバイス、ポートフォリオプランニングを最も得意とする。長崎県出身、1959年生まれ。 寄稿者にメッセージを送る

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