「一般の常識ではあたり前のことが通用しない。」相続の世界ではよくあることです。今回から「相続での失敗事例」を何回かに分けて書きたいと思います。今回は「名義預金」の話。
典型的なケースはこれ!
年配の方が妻や孫名義の銀行口座にコツコツ入金
年配の方が妻や孫名義の銀行口座を(こっそり)作って、そこに毎年入金。自分が亡くなっても困らないように…。これで自分の相続財産も減るので相続税の節税にもなる。一石二鳥。ただし、今、孫に通帳やカードを渡すと無駄遣いするから、最後まで自分で持っておこう…。
今は本人確認が厳格になり、本人以外の口座を作ることは極めて難しくなりましたが、昔は他人の名義で口座を作ることも可能でした。
節税対策として行われる第一が、この名義預金を使うもの。税務署が相続税の調査で一番に調べるのがコレだとか。一説には相続税の申告漏れを指摘されたうちの7割が、名義預金がらみとも言われます。
「名義預金」で申告漏れ。追徴課税も。
このケース、残された遺族からすれば妻や孫の財産と思うでしょうが、税の世界では預金した方(=亡くなった方)の財産とみなされ、相続税の対象となります。
相続税の対象となる方で名義預金を申告に含めていなかった場合、改めて申告し直すのはもちろんのこと、無申告による追徴課税の可能性すらあります。「節税になる」と思ってやったことが、かえって税金を増やすことになるわけです。
ではどうすればよかったのでしょうか?
答えは、有効な「贈与」を成立させること。そのためには、
(1) 贈与契約書を作ったり、税務署に贈与税を申告してその証拠を残す。
なお、贈与を受けた人単位で1年に110万円までの贈与は非課税です。
(2) 貰った人が通帳や印鑑を管理して、自分の財産になっていることを示す。
(3) そして最も簡単な方法は、貰った人が実際に一部を使うこと。
いずれにしても、相続対策の(相続税対策も)カギは残す人と受け継ぐ家族との意思疎通です。遺言もそうですが、家族に知らせず(相談せず)こっそりと行った相続対策はいい結果とならないことが多いことを知ってください。(執筆者:綾田 亨)