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「小規模宅地等の特例」の改正ポイントと注意点 適用要件を確認

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「小規模宅地等の特例」の改正ポイントと注意点 適用要件を確認

 平成27年から、相続税の基礎控除が大幅に縮小することは皆さんご存知だと思います。今年まで「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」ですが、来年からは「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に。たとえば法定相続人の数が4人なら、改正後は基礎控除が9,000万円から5,400万円と3,600万円も少なくなってしまいます。

 財務省は、改正に伴って相続税が課税される人の割合が4.1%から6%まで上昇すると試算しています。な~んだ、6%しか課税されないなら、自分には関係ないやと思わないでください。地価が高い東京23区に限っていえば、課税対象は20%台になるのではないかといわれているのです。

 多くの方にとって、もっとも高額な財産は自宅でしょう。被相続人が居住していた自宅の敷地は、一定の要件を満たせば相続税評価額を80%減額してもらえます。基礎控除が大幅に縮小する来年からは、特に地価の高いエリアでは、小規模宅地等の適用を受けられるかどうかが、相続税に決定的な影響を与えることになります。改正により、使い勝手がよくなりましたので、ポイントを押さえておくことにします。

「小規模宅地等の特例」適用のポイント

 まずは、小規模宅地等の特例の適用要件を確認しておきましょう。小規模宅地等には、下記の4つの種類があり、それぞれ減額対象になる地積、減額割合、適用要件が異なります。

小規模宅地等の特例の適用要件

 このうち被相続人が居住していた宅地に適用される「特定居住用宅地等」については、配偶者が相続するのであれば無条件に適用を受けられますが、子やその他の親族が相続する場合は、原則として被相続人と同居し、相続開始時から申告期限まで引き続きそこに居住し、その宅地を所有していることが要件になります。

 ただし、相続開始3年以内に自分あるいは配偶者の持家に居住していなければ、同居していなくても相続開始時から申告期限までその宅地を所有していれば適用が受けられます。

 「特定居住用宅地等」として特例を受けるためには、被相続人の居住用であることが前提となるので、昨年までは被相続人が老人ホームで暮らしている場合には適用できないケースがありました。

 平成26年からは、被相続人が老人ホームの終身利用権を取得した場合であっても、(1) 介護が必要なため入所したものであること、(2) その家屋が貸付け等の用途に供されていないことという要件を満たせば、適用できるようになりました。

 また、従来は中で行き来できないような完全独立型の二世帯住宅では「同居」していたとみなされませんでしたが、平成26年からは同居要件を満たすものとして適用対象となりました。

二世帯住宅の取得の注意点

 ただし、二世帯住宅の取得にあたっては、注意しなければならないポイントがあります。宅地全体を特例対象にするには、共有登記が要件になることです。一般論としていえば、土地の共有名義はトラブルのもとなので避けたいところですし、区分登記にしておけば、不動産取得税や固定資産税などの税の特例をダブルで受けることができるので有利です。

 結局、相続税でのメリットを取るか、不動産関係の税金でのメリットを取るかという話になってしまうのですが、地価の高いエリアではあえて共有名義にするという選択肢もあるでわけですね。もちろん、現状のまま親の家に同居する、あるいは将来相続することが確実なら自分の家など建てずにずっと賃貸暮らしをしていれば、特定居住用宅地としての要件は満たします。

 さて、平成27年からは、この小規模宅地等の適用面積が拡大します。特定居住用宅地等では、これまで240㎡までだったのが330㎡までに、さらにこれまでは原則として他の区分の敷地等と併用できなかったのが(限度面積に満たない場合は調整計算あり)、特定事業用宅地等との完全併用が可能になりました。

 たとえば相続財産として特定居住用宅地等(相続税評価額1億円)が330㎡、特定事業用宅地等(相続税評価額2億円)が400㎡あったとすると、平成27年からは、730㎡について80%の減額が受けられるので、3億円-2億4,000万円=6,000万円で評価されるということになるわけですね。

 日本人の財産の70%が土地であり、その大半が自宅や自分が営む会社の敷地という統計もあります。改正のメリットを活かした相続対策も考えたいところです。もっとも、相続対策のために、今の人生を犠牲にするというのは本末転倒だと思いますが。(執筆者:草薙 祐子)

《草薙 祐子》
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草薙 祐子

草薙 祐子

有限会社 FPパーク 代表 岩手県盛岡市出身。早稲田大学第一文学部、中央大学法学部卒業。編集会社、野村證券勤務後、独立系FPに。東京リーガルマインド(LEC)、ユーキャンなど大手FP資格養成学校で講師を歴任し、現在は雑誌、新聞、書籍などへの執筆とともに、金融機関や市民講座の講師としても活動中。 「生涯、元気に楽しく暮らす」をモットーに、リタイア後の資産運用や生活設計、住替え、相続など「終活」に力を入れています。難しいことを楽しく分かりやすく伝えることがモットーで、将来のお金の面での安心と、お金を有効に使って楽しく生きるための提案を積極的に展開しています。趣味は、マラソン、スキー、登山、水泳など、アウトドアスポーツ全般。 <保有資格>:ファイナンシャル・プランナー(CFP®/1級技能士) 寄稿者にメッセージを送る

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