学生納付特例制度という制度があるというのは多くの方がご存知だと思います。しかし、この制度には隠された秘密があるということは知らない方も多いと思います。まず、この制度について簡単に説明したいと思います。
目次
学生納付特例制度とは
日本国内に住むすべての人は、20歳になりましたら強制的に国民年金の被保険者になります。しかし、納付義務があるとしても中にはお金がなくて国民年金の保険料を払えない人もいます。そういった場合に申請することにより、保険料の支払いを猶予、又は一部免除や全額免除してくれる制度があります。
その一つとして学生納付特例制度というものがあります。20歳になった時点で、働いている人もいれば、学生で勉学に励んでいられる方もいます。そして学生の多くの方は、勉学がメインで仕事をしている人は少ないですし、仮に仕事をしているとしても収入が少ないケースが多いと思います。そこで、学生の期間中は勉学に集中するということで保険料の支払いを猶予してくれるという制度があります。
この制度を受けるには本人が一定の所得要件(年度の所得が118万円+扶養親族の数×38万円+社会保険料控除等の額以下)に該当し、申請をして承認を受けないとこの制度を受けられません。補足ですが平成20年4月からは在学する大学等の窓口でも申請手続きが可能となっています。
学生納付特例制度の注意点
この制度の注意点なのが、猶予であって免除ではありません。簡単にいうと猶予とは、支払期日を延期することであり支配義務は存在している状態、免除とは支払い義務を免じることであり支払義務がないということです。
国民年金にはある一定の要件に該当すると一部免除制度や全額免除制度の対象になり、保険料の支払をしてなくても将来、年金がもらえます。これは免除だからです。
しかし、学生納付特例は猶予の制度ですので、学生期間中に猶予してもらった保険料の支払いをしないと、将来、年金として給付されないということです。それは、学生生活が終わると通常は仕事をして、収入を得るというのが大前提で保険料を支払う能力があると判断されるからだと思います。ただし、働きたくても働けなくて収入が少なく、保険料を支払いができない人もいますよね。そういった人達の為に免除制度があるのです。
学生納付特例のメリット
ここまで読んでいただいて、じゃあいったい学生納付特例のメリットっていったい何なの? と感じられた方が多いと思います。結局後で、支払をしないと年金として支給されないですし、申請という手続も踏まなければいけません。だったら手間のかかる申請なんてしないで、保険料を支払わない場合(いわゆる滞納)と結果は同じなんじゃないのかと思った方もいらっしゃると思います。
実はいうと前者(滞納)と後者(猶予)の場合では取り扱いがまったく違ってきます。それを今から説明します。両者の場合、保険料の支払をしないと将来、その部分の年金は受給できません。しかし、年金の受給権を得るということに関しては明らかに後者の方が有利です。
前回のコラムで年金の受給資格のことについてお話しました。平成27年からは原則、保険料納付済期間が25年から10年で受給資格を得られるようになると述べましたが、今回は現法(25年)でお話します。この25年の受給資格期間の中に学生納付特例の期間が含まれるのです。
例を出すと、保険料納付済期間22年と滞納期間3年の場合と保険料納付済期間22年と学生納付特例の期間3年の場合だと、前者は受給資格が得られませんが、後者は得られるということです。そして、学生納付特例にはもう一つ重要なことが隠されています。
それは、学生納付特例制度を利用することによって万が一、不慮の事態が起きた場合には障害基礎年金等の受給権を得ることができるということです。
国民年金法には、障害基礎年金や遺族基礎年金といった制度があります。この制度は、本人が、不慮の事故等で障害の状態になったり、死亡した場合に、本人や遺族に老齢基礎年金の満額以上の年金が支給される制度があるのですが、この支給要件として保険料納付済期間がある一定程度クリアしていないと支給されません。
この2つの年金は、その事故が発生した月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間が3分の2以上ある場合、又は事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合には支給されるのですが、この学生納付特例制度の期間は保険料納付済期間とされますので、仮に学生生活の途中で事故が起こり、保険料を納めていなかったとしても支給されるということです。しかし、滞納期間になるとこの障害基礎年金等も支給されないということになります。
滞納の場合も学生納付特例の場合も保険料の支払いをしていない点は同じですが、年金の受給権の話になると大きく違ってきます。申請という手間がかかるかもしれませんが、学生納付特例の要件に該当する場合には、必ず申請するようにしましょう。するかしないかで、あなたの人生が大きく変わるかもしれません。(執筆者:青田 滋樹)