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「パート収入103万円」が”壁になる人”、”ならない人”の違いと誤解

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「パート収入103万円」が”壁になる人”、”ならない人”の違いと誤解

 「もう少し働いた方が良いのでしょうか? でも扶養を外れると損なんですよね?」ご相談の中で、妻がいくら働くかという就業調整のお話になることがあります。

就業調整をしている人のうち、配偶者控除の適用を受けるため103万円以下にしている人の割合:約42.4%

*出所:独立行政法人労働政策研修・研修機構「短時間労働者の多様な実態に関する調査」

 103万円の壁を意識されている方が少なくありません。「扶養を外れる=損」と信じている方も多いようですが、103万円は壁にはならず、103万円を超えて働くことで、世帯収入を増やす場合もあります。

「103万円の壁」に対する誤解

 女性の就業を阻害する一因として配偶者控除の廃止が議論されていますが、103万円の壁については、次のような誤解も多いように思います。

 「103万円を超えると配偶者控除がなくなる!」

 103万円を超えると38万円の配偶者控除がゼロになると思っておられる方もいらっしゃいますが、それは誤解です。103万円超~141万円未満の間は「配偶者特別控除」があり、控除額が段階的に引き下げられる仕組みになっています。但し、控除を受ける方の合計所得が1000万円を超えると、配偶者特別控除は受けられません。

 「103万円を超えると税金が増えるから損!」

 確かに控除される金額が下がれば夫の所得税、住民税は増加します。また妻自身も新たに所得税・住民税を負担する必要が出てきます。しかし、収入の増加>税金の増加となれば世帯の手取り額としてはプラスになります。

103万円が”壁にならない人”

 夫の年収500万円、現在100万円のパート収入を得ているA子さんを例に、妻の収入の変化と世帯の手取りの変化を確認してみましょう。(※妻の所得控除は基礎控除のみと仮定)

シミュレーション1

 妻の収入が103万円を超えて、104万円、110万円、120万円と増加することによって、夫と妻の税金も増加していますが、それ以上に収入が増えていますので、世帯として手取額は増えています。

 仮に、夫の所得税率が33%になると妻の収入増加の半分程が手取りの増加額となります。つまり夫の税率が高くなるほど、手取額の増加は小さくなります。

103万円が”壁になる人”

シミュレーション2

 夫の合計所得が1000万円(年収約1231万円)を超えると配偶者特別控除が受けられません。妻の収入が103万円を超えた段階で、夫の課税所得が38万円増加することになります。また税率も高いので、所得税の増加額が大きくなります。

 夫の年収が2000万円程度(所得税率40%)の方になると、妻の収入が120万円でも世帯手取りは、100万円の時に比べてマイナスとなります。103万円が壁になる人は(2) のようにご主人の合計所得が1000万円を超える方です。(1) のように配偶者特別控除が受けられる方は、103万円は壁にはなりません。

 しかし、(1) の場合でも103万円を超えると勤務先の家族手当がなくなる場合や、妻の収入の増加により保育料負担が増加するようなご家庭では、103万円が壁になる可能性もあります。

かしこい働き方を選択する

 消費税8%となり、月20万円消費する家庭では年間7万2千円の増税となりました。A子さんの場合、103万円の壁にこだわらず110万円働けば、消費税分をA子さんの働きでカバーすることができるようになりますね。

 「手取が増えても稼いだ半分しかプラスにならないのは嫌だ」、「その程度のプラスなら子どもとの時間を大切にしたい」そのような考え方も一理あると思います。またご自身のキャリアプランを考慮して「手取りが減っても働きたい」という方もいらしゃると思います。大切なことは、断片的な情報を鵜呑みにせず、正しい情報を得て、自ら自分らしい働き方暮らし方を考え、選択していただくことだと思います。(執筆者:小谷 晴美)

《小谷 晴美》
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小谷 晴美

小谷 晴美

しなやかライフ研究所 ファイナンシャル・プランナー(CFP®) 国立教育大学教育学部卒業。前職では中小企業診断士として商業・サービス業の経営指導に携わる。2006年、ファイナンシャルプランナー資格を取得し、「暮らしのお金」と「起業のお金」の身近な相談役として個人相談の他、研修・セミナー、執筆に従事する。zoom相談も開始し、全国から家計や起業にまつわる相談を受けており、1,000件を超える豊富な相談経験から読者の「知りたい」に応える情報発信している。 保有資格:日本FP協会CFP®認定者、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー、住宅ローンアドバイザー 寄稿者にメッセージを送る

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