今、パナマ文書で世界が揺れています。
この影響もあってか、最近また「タックスヘイブン」という言葉をよく目にするようになってきました。
今回は、「なんだかよく分からないんだよね…」という人向けに、タックスヘイブンについて簡単に整理していきます。
目次
タックスヘイブンとは?
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タックスヘイブンとは日本語で言うと「
租税回避地」と訳されますが、
税率が極めて低く設定してある国や地域のことです。
これらの国や地域は産業が成長していないところが多く、税金面での優遇策を取ることによって、外国資本を集め経済を保とうという狙いがあります。
資金を集めやすくするためには、誰でも簡単に口座や法人を作れるようにする必要があり、その結果、必然的に規制は緩く、匿名性は高くなっているという特徴があります。
そのため、お金持ちの所得隠しに利用されたり、テロ組織などにも利用されていると言われています。
タックスヘイブンには、負の側面が少なからずあるというわけです。
タックスヘイブンを利用するのは違法?
こういう側面を見てみると、どうしてもタックスヘイブンに対してあやしいイメージを持ってしまうと思います。
ですが、タックスヘイブンを利用すること自体は、実はまったく違法ではありません。
たしかに、タックスヘイブンを悪用することもできます。
ですが、タックスヘイブンを利用することによる実務上のメリットもあり、その目的だけでクリーンに利用しているかもしれません。
タックスヘイブンを利用したからといって、その時点で一概に「悪いことをやってるんだ!」と断定できるものではないのです。
問題なのはタックスヘイブンを使って何をやったのか
なので、パナマ文書に名前が載ったからといって、すぐに「不当に税金を減らす行為をした」と断定することはできないでしょう。
大事なのは「タックスヘイブンを利用して何をやったのか?」という部分です。
今のところ、特に日本関係で名前が出た企業や個人については、この部分についての詳細な情報は出てきていないと思います。
個人的には疑わしい気持ちを持ってしまいますが、これについては新たな情報が出てくるのを待つしかなさそうです。
(日本政府は「調査しない」と言っていますが…。)
「脱税」と「節税」と「租税回避」の違い
ここで、税金を下げる行為について少しだけ整理しておきましょう。
タックスヘイブンを利用して税金を下げたからといっても、これがイコール違法、ということにはならないんです。
支払う税金を減らす行為は、「脱税」、「節税」、「租税回避」に区別されます。
このうち、脱税は完全なる違法ですね。逆に、節税は完全なる合法です。節税はみなさんもやっていることと思います。
そして、やっかいなのが「租税回避」。 これは合法ではあるんですが、法律をズルい利用の仕方をしている「グレーな行為」なのです
普通に実態を考えたら日本の税率で支払うところを、例えばタックスヘイブンに作ったペーパーカンパニーを利用して、タックスヘイブンの低い税率ですましてしまう、といったイメージです。
合法なんだけどズルい。
しかし、この「ズルい」の判断が曖昧なものになりやすく、取り扱いをめぐって裁判などで争いに発展することも多いのが現状です。
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公平重視? 法律重視? 世論は「租税回避」をどう見るか
租税回避はズルをする人だけが得をするので、「税金は公平に負担されるべき」という観点からは認められません。
一方で「税金は法律に基づいて負担されるべき」という観点を重視すれば、これは認められるべきとも言えます。
ただし、あまりにタックスヘイブンを利用した租税回避が横行していたとすると、国民の目は厳しくなっていくはずです。 日本企業がどこまで租税回避を行っていたのか、これが世論を大きく左右するというわけです
パナマ文書をきっかけに、その実態が明らかになっていくことを期待します。(執筆者:貝田 凡太)