三菱東京UFJ銀行が、もう国債を買わないって本当?»マネーの達人

三菱東京UFJ銀行が、もう国債を買わないって本当?

三菱東京UFJ銀行が、「国債市場特別参加者資格」を、国に返上するそうです。でも、タイトルにあるように、これで三菱東京UFJ銀行が国債を買わないというわけではありません。

普通資格者として、国債入札には参加します。国債はこれからも引き受けます。



国債市場特別参加者資格とは

まずは言葉の解説です。「特別参加者資格」ってなんなのでしょう。

特別参加者には国債入札に当たって発行予定額の4%以上の応札、1%以上で落札をしなければならないという義務があります。必ず毎回これくらいは国債を買いなさいよということです。

では義務を果たすことでどんな特別な権利を得ることができるのでしょう。

なんと、財務省の方々と会合を開くことができるのです。すごいですね。国債を引き受けたら、財務省のお役人方とお話ができるのです。うれしいですね。

財務省との会合に参加して意見交換することで、時にはインサイダー情報も得ることができるのでしょう。買い入れ消却入札への参加、流動性供給入札への参加などが認められるメリットもあります

現在の特別資格は22社が有し(当初は25社だった)、うち19社が内外の証券会社で銀行は3大メガバンクの三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行だけです。

国債入札自体は特別資格がなくても誰でも(個人でも)参加できます。ある意味、メガバンクとしてのステイタスという側面もあるのでしょう。銀行や証券会社の自らの顧客に対しても、特別資格を持っていることは有利になることもあるのでしょうね。

今回の情報は、この特別参加者資格を返上するということです。三菱東京UFJ銀行として、国債を買わないということではありません。

三菱東京UFJ銀行はなぜ特別資格を返上するのか

ではなぜ返上するのでしょう。もはや、財務省からの情報提供にメリットを感じなくなったのでしょうか。

まずは現実的な側面からの判断があると思います。それは、三菱UFJフィナンシャル・グループとしては、この国債市場参加者特別資格を3社で持っているということです。

銀行のほかに、三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券も特別資格を有しており、この2社は返上しないようです。

同じグループ内で3つもいらないでしょうという判断ですが、じゃあなぜ三菱東京UFJ銀行の持分を返上するのでしょう。

それはメガバンクトップの返上が、関係者にかなり大きな影響を与えるからです。それは、マイナス金利への批判とも取れる行動なのでしょう

もう国との関係をここらで見直しましょうというメッセージなのかもしれません。マイナス金利導入した後も、なぜ金融機関が国債を引き受けなければならないのか、それを問いただしているような気もしますね

いままで日銀を含む金融当局に決して逆らうことがなかった大手銀行が、マイナス金利導入に、「遠巻きでささやかな抵抗を示しているのでは」と報じられてもいます。

このあたりを強調して、一部報道メディアでは「三菱vs日銀」という構図であおっているようではあります。



マイナス金利のおさらい

ではマイナス金利政策が導入されたから、銀行は国債運用で損を強いられているのでしょうか。

それを考える上で、今度はマイナス金利をおさらいしてみましょう。

マイナス金利は、銀行が日銀に預ける当座預金に対してマイナス金利をつける、つまりお金を預けたら手数料を取るよという制度です。でも、金融機関の預金全てにマイナス金利が適用されるわけではありません。

金融機関の資金を三段階に分け、その一部にしかマイナス金利は適用されません。

現在、銀行は当座預金に約230兆円を預金しており、法定準備金部分を差し引いた残高は221兆円のうち、2015年の平均残高分の超過分18兆円程度にマイナス金利が適用になります。

つまり、マイナス金利を導入したからといって、直ちに、国債での運用が損をするというわけではないのです。

2015年の平均残高はマイナス金利適用外ですからね。新発債を買わなければマイナス金利は適用になりません。市場から国債を買えば、それは日銀が買ってくれるので、それだけでも十分に利ざやを稼ぐことができます。

従って、マイナス金利になったから銀行が国債での運用をしなくなったというわけではないのです。

マイナス金利導入で、私たちの預金もマイナス金利になることはありません。マイナス金利をやたら強調して、リスク資産への誘導を説く人もいますが、そのロジックは決して正しいとは言えないでしょう。

余談ですが

余談ですが、銀行に預けていてもお金が増えないからといって、運用を勧めるのは間違いです。ましてやマイナス金利導入をもって運用へ誘導するのは、どう考えても営業トークにしか思えません。

運用は必ずリスクが伴います。リスクを許容することが大事で、なぜリスクを許容しなければならないのか、そこを充分に理解して資産運用をはじめないと、必ず大怪我をしてしまいます

銀行に預けていてもお金が増えないから、マイナス金利になったから資産運用をしようというのは、完全な営業トークだと思っています。リスクを前面に出すと、だれも資産運用はしなくなりますからね。

資産運用で大事なのはリスクを受け入れることです。将来の生活設計を考える上で、いまリスクをとらないと大変なことになるから、真剣にリスクと向き合う気持ちを持って資産運用を選択するという強い意志が大事なのです。そうすると大きな損は招かないと思います。

リスクを受け入れる動機をしっかりと確認することが、資産運用で成功するためには一番大事なことなのです。スクを受け入れるご褒美としてリターンが得られるということなのです。

動機付けはとても重要です。ここを丁寧に説明しない人は…と思います。

再び、三菱東京UFJ銀行はなぜ特別資格を返上するのか

話をもどしますが、三菱東京UFJ銀行の国債市場特別参加者返上は、いろんな憶測を呼んでいます。

三菱東京UFJ銀行の有価証券報告書では、株主には外国人が多く、外国から返上を言わせたのだという意見もあります。日銀の審査委員のメガバンク枠がなくなることへの抗議の返上という見方もあります。

面白いのは、本当は黒田日銀総裁は、マイナス金利を失敗だと思っていて、でも自分の口からは言えないので三菱に言わせて、これ以上のマイナス金利は拡大しないための、日銀と三菱との間に話し合いがあったのではという深読み説もあります。

さらに、三菱東京UFJ銀行が国債市場特別参加者を返上したタイミングに注目する意見もあります。

ちょうど日銀は、これまで年80兆円ほど国債を買っていたのを、6月1日から毎月12兆円、年144兆円に増額すると発表しています。このタイミングで、三菱東京UFJ銀行が、国債入札資格を返上すると言い出したことが、関係者にとってインパクトが大きいというのです

日本国債の将来は…



かつて、銀行は、黒田日銀総裁の量的緩和政策に対して、今後の国債の行方を懸念して、長期国債を、短期国債に入れ替えてきています。同じ国債を引き受けるにも、短期国債がいいということです

銀行は決して自らリスクをとらないところです。私は、個人向け国債はどうも手は出せませんね。

いずれ日本国債の格下げがテーマとなってきます。いまのところは格付け会社は静観の構えのようですが、アベノミクス第三の矢である成長線戦略が頓挫すれば、財政出動に頼る製作だと、いずれ格下げは議論されると思われます

消費税率引き上げ再延期に関しては、即座に格付け会社は動きませんでしたが、成長戦略の行方次第では、日本国債格下げは充分に考えられます

しかし、こんなに買い込んだ日本国債を、日銀はどう処理するのでしょう。市場に返したら国債大暴落、まさに日本沈没シナリオになってしいます。

国債は国の借金証書です。民間に渡した借金の証文を日銀が買い戻しているわけで、結果、国の民間金融機関への借金がなくなることにはなっています

全て自分たちのなかで、お金を刷って借金を膨らませて、それを日銀が回収しているわけです。これっておそろしくはないですか。本当にこの国は大丈夫なのでしょうか。

今回の三菱東京UFJ銀行の国債市場参加者特別資格返上のニュースは、直近すぐにどうこうなる話ではありませんが、なにか将来において、日本にはとんでもないことが待ち構えていることへの警鐘のような気がしてなりません

私はいつもセミナーでこう締めくくっています。「これからは、日本という国と心中するか、真の意味で独立するか、いずれ近いうちにその選択が迫られる日がやってくる」

みなさんはどうお考えになりますか。(執筆者:原 彰宏)

この記事を書いた人

原 彰宏 原 彰宏»筆者の記事一覧 http://www.spway369.com/

株式会社アイウイッシュ 代表取締役
関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。
<保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP

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