国民年金基金の合併の背景にある「古参が得で新参が損」という構造»マネーの達人

国民年金基金の合併の背景にある「古参が得で新参が損」という構造

「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」

厚生年金保険の保険料には、国民年金の保険料も含まれているため、厚生年金保険の保険料を納付すると、国民年金の保険料も納付したことになります

そのため厚生年金保険に加入する会社員などは、原則65歳になると、国民年金から支給される「老齢基礎年金」に上乗せして、厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」も受給できます。

一方国民年金に加入する自営業者や農林漁業者などは、老齢厚生年金の上乗せがないため、老齢基礎年金のみを受給することになります。

「老齢基礎年金」だけでの生活はきつい




ただ老齢基礎年金の金額は、20歳から60歳になるまでの40年間に渡り、1か月も欠かすことなく保険料を納付しても、78万100円(平成28年度額)にしかなりません。

これを月当たりに換算すると6万5,008円ですから、やはり老齢厚生年金の上乗せがないと、かなり生活がきついと思います。

そこで国民年金に加入する自営業者や農林漁業者などが、老齢厚生年金に匹敵する上乗せを受給できるようにするため、平成3年に国民年金基金が創設されました。


国民年金基金は2種類に分類されている


「職能型」


「職能型」は同種の事業または業務に従事する者で組織されています。

「地域型」


同一の都道府県内に住所を有する者で組織されるのが「地域型」です。

地域型に加入している方が、他の都道府県に住所を変更する場合、いったん喪失手続きを行った後に、他の都道府県の国民年金基金に対して、新たに加入手続きを行う必要があるのです。

また年金の請求を行う際には、住所を変更する前と、変更した後の両者の国民年金基金に対して必要な書類を提出する必要があります。

地域型の基金は平成31年4月をめどに合併へ


しかし最近新聞を読んでいたら、地域型の国民年金基金が平成31年4月をめどに合併を検討しているという記事が掲載されておりました。

そうなると他の都道府県に住所を変更する場合、「住所変更届」を提出するだけで手続きが完了します。また年金の請求を行う際にも、複数の国民年金基金に対して、書類を提出する必要がなくなるのです。


新規加入者の減少を招く予定利率の引き下げ



このように国民年金基金が合併を行い、利便性の向上をはかるのは、新規加入者の減少が続いているからのようです。

その背景としては、国民年金に加入する自営業者や農林漁業者などが減少して、厚生年金保険に加入する会社員などが増えるという、日本社会の就業形態の変化があります。

また繰り返される予定利率の引き下げという、国民年金基金の制度の変化も新規加入者を減少させる背景になっていると思うのです。

国民年金基金の加入者が拠出した掛金は、民間の金融機関を通じて、債券や株式などで運用されております。

こういった運用を通じて得られる利益を予想し、その予想を元に加入者に対して約束した運用利回りを予定利率と言うのです。

自分に適用される予定利率は、加入した時期によって決まり、その推移は次のようになっております。
・ 平成3年の設立当初:5.5%
・ 平成7年以降:4.75%
・ 平成12年以降:4%
・ 平成14年以降:3%
・ 平成16年以降:1.75%
・ 平成26年以降:1.5%
また加入した時期によって決定した予定利率は生涯に渡って続いていくので、例えば1.75%の時に加入した方は、債券や株式などの運用が上手くいかなくても、それより下がることはありません。

ただ逆に言えば、債券や株式などの運用が上手くいっても、1.75%より上がることもありません。


マイナス金利政策でも引き下げられない予定利率

国民年金基金が創設された当初に加入した方は、予定利率が5.5%もあったのに対して、平成26年以降に加入した方は1.5%しかありません。

もしこの両者が、同じ金額の年金を受給しようと思ったら、後者は予定利率が低くなった分だけ、多めに掛金を負担する必要があります。

そのため新参の加入者は古参の加入者と比較して、かなり損をしていると考えられるのです。

なお現在は日銀がマイナス金利政策を実施し、様々な金融商品の金利が低下しているため、5.5%もの運用利回りを継続的に確保するのは、かなり大変なことだと思います。

しかし予定利率は上記のように、加入した時期によって決まり、生涯に渡って固定されているので、引き下げることはできません

そのため
予定利率 > 実際の運用利回り
の状態となり、これが続けば国民年金基金の財政を悪化させ、いつかは古参の加入者の予定利率を引き下げなければ、国民年金基金が存続できなくなる日が来るかもしれません。

もしそれが無理ならば、新参の加入者から集めた掛金を、古参の加入者の運用損の穴埋めに使い、財政の悪化を食い止めるしかないと思うのです。

しかし国民年金基金は加入者が自分で積み立てた掛金を自分で受け取る「積立方式」で運営されているため、他の加入者の掛金を運用損の穴埋めに使うのは予定利率の引き下げと同じように約束が違うという話になります。


国民年金基金にはない個人型の確定拠出年金のメリット



平成29年1月1日から専業主婦や公務員であっても、個人型の確定拠出年金に加入できるようになり、この制度が注目を集めております。

個人型の確定拠出年金は自分が拠出した掛金を、自分が選んだ金融商品で運用していきます

そのため予定利率のある国民年金基金とは違い、運用利回りは十人十色であり、また運用利回りが良い時もあれば、悪い時もあります。

その一方で国民年金基金とは違い、加入した時期によって決定された予定利率に、掛金の運用は左右されないので、古参というだけで有利ということはなくなるのです。

また個人型の確定拠出年金では、自分の資産と他の加入者の資産が明確に区分されているため、他の加入者の運用損の穴埋めに自分の資産が使われることはありません

現在は平成の初めの頃のように、高い予定利率は期待できない時代ですから、新参にとっては好むと好まざるとにかかわらず、国民年金基金より個人型の確定拠出年金の方が老後資金作りの有力な選択肢になると思うのです。(執筆者:木村 公司)

この記事を書いた人

木村 公司 木村 公司»筆者の記事一覧 http://manetatsu.com/author/kkimura/

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。
【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種

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