金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2016年)」の結果が公表されました。18~79歳の個人2万5,000人を対象とした調査結果です。
50代において、約5割が老後の生活必要額を認識しておらず、約6割が資金計画を策定していないという結果に危機感を覚えずにはいられません。
そこで、老後の生活必要額を把握して、どう準備すれば良いのかを考えてみましょう。


目次
老後資金の必要額を認識しよう
家族形態やライフスタイルが多様化している昨今、些か時代錯誤であることを承知の上、以下の内容は厚生労働省のモデル世帯(平均的賃金の会社員夫と専業主婦の妻)をもとにシミュレーションしています。
人それぞれといえども、ひとまず安心と思える準備金額を認識するための目安にはなります。
平成26年簡易生命表によると、90歳以上生きる割合は、女性のおよそ2人に1人・男性のおよそ4人に1人となっています。従いまして、95歳まで生きることを前提として65歳以降30年間の老後資金を計算しています。
1か月あたりの平均年金収入は、夫婦合算で約17.4万円になる?!
出生率・平均寿命・経済変動について現状とさほど変化がない場合であっても、厚労省の財政検証(平成26年)による所得代替率を考慮すると、将来の年金受給水準はおよそ2割減となってしまう可能性が否めないのです。
現状、1か月あたりの平均年金収入は夫婦合算で約22万円です。
<内訳>会社員の夫 (厚生年金) 16万5,450円/月
専業主婦の妻(国民年金) 5万4,497円/月
(厚生年金保険・国民年金事業の概況による平均年金月額[厚労省/平成26年度])
将来、1か月あたりの平均年金収入は夫婦合算で約17.4万円になるかもしれません。
1か月あたりの平均支出は、夫婦合算で65~69歳は約29万円、70~95歳は約24万円です。(二人以上世帯の世帯主年齢階級別家計支出[総務省統計局/2015])
65~95歳の収支合計がマイナスになれば、老後資金に不足額が生じることになり、不足額も把握できます。収入合計から支出合計を差し引いた収支合計は、およそ2,700万円の赤字になっています。
★65~95歳の夫婦年金収入合計 :約6,264万円
(約17.4万円×12か月×30年間)
★65~95歳の夫婦支出合計 :約8,940万円
(約29万円×12カ月×5年間+約24万円×12か月×25年)
★65~95歳の夫婦収支合計 :約▲2,676万円
(6,264万円-8,940万円)
老後資金の不足額はどう準備すれば良いの?

老後資金の不足額を補うためには、65歳以降も収入を得続けるシステムを自助努力で現役時代に作っておくと良いのです。以下に提案する三つの方法を活用すれば不足額2,700万円を確保できます。
40歳から準備を始めると、平均可処分所得の2割以内に掛金を収めることができるため無理のない老後資金貯蓄を実行できるでしょう。
掛金の払込満了年齢を早めて受給開始年齢を遅らせることで、据置期間を設けましょう。また、個人年金の受給期間をできるだけ長く設定すれば更に返戻率は上がります。
2017年1月以降、個人型確定拠出年金の加入対象者が拡大します。
企業型確定拠出年金を導入していない企業に勤めている会社員や専業主婦等も個人型確定拠出年金に加入できるようになります。
仮に40歳から夫婦合算で4.6万円(1か月あたり最大掛金2.3万円×2人)の掛金を60歳まで拠出すると1.5%の運用利回りで目標受取額1,300万円を達成できます。掛金の拠出時・運用中・受給時に税制優遇を享受できます。
財形制度を導入している企業に勤めている会社員であれば財形年金に加入できます。掛金合計385万円までは運用益が非課税となる税制優遇を享受できます。
老後の介護費用は、退職金等を活用しよう

老後資金の必要額2,700万円に介護費用を敢えて含めていません。介護費用のために別枠で専用口座を作り、退職金を取り置くことをおすすめしたいからです。
生命保険文化センターの全国実態調査(平成27年度)によると、介護期間は平均4年11か月です。介護費用の平均月額は7.9万円、一時費用の平均は80万円です。
単純計算すると一人あたりの介護費用総額の平均は546.1万円になり、夫婦2人で1,000万円超になります。
平均介護費用月額 :7.9万円
介護費用一時金の平均 :80万円
平均介護費用総額 :546.1万円
ただし、平均値はあくまでも目安にしか過ぎません。介護は予期せず始まり、状態に個人差があり、支援体制に地域差もあります。
例えば、在宅介護が困難になり、介護費用の安価な特養に入所を希望しても待機者は全国におよそ52.4万人います。特養に入所できず有料老人ホームに入所することになれば、安く見積もっても月20万円はかかります。
入居が5年間続くと1,200万円です。現入居者の2割は5年以上入居しているというデータがあります。つまり、綿密な計画を立てても想定通りにいかない費用ですから、別枠で準備する方が心理的に安心できると考えます。
資金に余裕がありリスク許容度が高い場合は、NISA枠の活用・株式投資・不動産投資等で積極的に運用し、ゆとりある老後を過ごせるように資産を大きく育てて増やしましょう。(執筆者:長沼 満美愛)