厚生年金をもらいながら働いていたのに、
そういう方もいらっしゃるようです。
社会保険料が給与から天引きされた挙句、年金まで減らされるなんてまさに踏んだり蹴ったりの状況です。どう対処したらいいのでしょうか。

目次
なぜこんなことが起きるのか
もともと年金制度は、働くことが難しくなった老後の収入を確保するために設けられた制度です。
在職老齢年金のしくみ
老齢厚生年金がもらえる状態であっても、働いて厚生年金保険料を支払っているのであれば、老齢厚生年金は減らしますというのが在職老齢年金制度です。
給与・賞与から決まる総報酬月額相当額と、老齢厚生年金の月額にあたる基本月額を足したものが28万円(60歳代前半)もしくは47万円(60歳代後半以降)を上回れば、一定の額が減額されます。
最も有効と思われる対処法は
年金が減ることが大きな問題と考えているのであれば、社会保険の加入要件から外れるような形に労働条件を変更するのが最も効果的です。
・ 契約期間1年以上
・ 月収8万8,000円(年収106万円)以上
上記のすべてを満たすと社会保険加入となりますので、どれか1つ満たさなければ加入しなくてもよくなります。
やりやすいのは、労働時間を週20時間未満にすることです。週20時間以上であっても、月収8万8,000円未満になるのであれば社会保険加入にはなりません。
年間の収入は減ってしまいますが…
収入要件でクリアする形にする場合、ギリギリ健康保険の扶養になる年収129万円から105万円に減らすと、年間24万円減ってしまいます。
しかし社会保険に加入することで老齢厚生年金が月10万円(年間120万円)程度減ると見込まれる場合は、まだこのほうが収入減をおさえられます。

あえてメリットも挙げてみると
社会保険料を払わされる上に年金も減るのは、かなり困る事態と言えますが、もともとは社会保障を厚くするために労働者を保護する制度改正です。
下記のようなメリットも考えられますので、それを加味した上で本当に社会保険に加入しなくてよいかは検討しましょう。
1. 社会保険から脱退した後は厚生年金が増大する
厚生年金保険料を払うことになりますから、老齢厚生年金の計算における「被保険者期間の月数」が増え、社会保険から脱退して再び年金がもらえるようになった場合には、厚生年金の年額が加入しない場合に比べて増えることが見込まれます。
もっとも、平成28年10月から加入するような場合は年収も少ないことから、増加幅は大きくはならないでしょうし、死亡の時期によっては在職老齢年金制度による減額を補えないことも考えられます。
2. 事業主負担分があるため、健康保険料は国民健康保険料より下がる可能性もある
国民健康保険であれば給与所得や雑所得(公的年金)などに対して10%程度保険料がかかってきますが、社会保険の健康保険料であれば、給与収入に対してのみ約11%かかるものの、半額は勤め先が負担します。従って本人が負担する分は国民健康保険料より下がることも考えられます。
3.在職中は傷病手当金がもらえる
万が一病気で休職したとしても、休業補償として在職中給与の3分の2程度は傷病手当金がもらえます。これは国民健康保険にはない制度です。(執筆者:石谷 彰彦)