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米国大統領選による日本経済や株価への影響は? どっちが当選しても日本には同じ試練が待ち受けている

ビジネス 経済
米国大統領選による日本経済や株価への影響は? どっちが当選しても日本には同じ試練が待ち受けている
アメリカ大統領選

今年は世界のリーダーが決まる年です。米大統領選挙も間もなくです。


ただ今年の大統領選挙は、いつもの選挙とかなり様子が違っています。嫌われ者同士の戦いで、「どっちがましか」が判断材料となる選挙となっていますね。

「トランプ・リスク」と呼ばれる、ドナルド・トランプ大統領実現による世界経済の混乱が危惧されています。トランプ氏の経済政策を中心に、大統領選挙後の世界経済を考察してみましょう。

トランプ氏が米大統領になる可能性は…

トランプ氏

≪トランプ氏 画像元:http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/51900368.html≫

大統領選挙に大きな影響があると言われるテレビ討論会は、ここまでは、報道ではヒラリークリントン氏有利と言われています。


トランプ氏の過去の税申告内容を公表していないことが指摘され、女性蔑視発言などもあり、トランプ氏には逆風が吹いているとは言われていますが、クリントン氏にも健康問題があります。

まだまだこれから、どのような爆弾が出てくるかわかりませんね。

トランプ氏支持者はコアなファンが多く、彼らにすれば、トランプ氏がどんな発言をしても関係ないようで、表面上のことでは実際の投票行動は読みきれない部分があります。

また、マーケットに携わっている人たちは、トランプ候補を支持しているという話も聞きました。その理由は、政策だとか人柄はまったく関係なく、ただ、トランプ氏が大統領になればマーケットが荒れるからだそうです。

マーケット関係者、特にファンドにとってはボラティリティ(価格変動)が「めしの種」です。内心はクリントン氏支持でも、投票はトランプ候補に入れるという行動もあるそうです。

トランプ氏が大統領になればドルは売られますから、それはそれでわかりやすいトレードになりますからね。逆に言えば、それだけ「トランプ・リスク」は大きいということも言えます。

地元のジャーナリストによれば、トランプ氏は、まさか、本当に正式な大統領候補になるとは思ってはいなかったため、実は自分が一番戸惑っていて、わざと大統領にならないように、ネガティブな材料を自ら吐き出しているという噂もあるそうです。

笑える話ではありますが、米大統領選挙は世界のリーダーを決める選挙だと言う観点からすれば、決して笑えないジョークですね。

いまは、クリントン氏有利で、マーケットではドルが買われているという見方もありますが、ただ、前回の大統領選挙でも、第一回目討論会で明らかに勝利したミッド・ロムニー共和党候補が、そのあとのテレビ討論会で逆転されました。

まだまだ「トランプ・リスク」は、完全に消えたわけではありません。

米大統領選挙結果で世界経済はどうなるのか

アメリカ大統領選で世界経済はどうなる

ドナルド・トランプ氏が訴える政策があまりにも過激で、世間の注目を浴びているだけに、トランプ氏の経済政策による世界経済の混乱が取りざたされています。


しかし、ヒラリー・クリントン氏が大統領になったとしても、「アメリカ・ファースト」のスタンスを取ると思われますので、どちらが大統領になっても内向きの政策、保護主義政策となりそうです

それはドル安誘導、日本にとっては円高を強いられることになると見られています。

とりわけ、トランプ氏の経済政策案は、額面通りに受け止めると、米経済を長期的なリセッション(景気後退)に追いやり、低中所得層を中心に大量の失業者を生む可能性があると考えられます。あくまでも予想ですが、マーケット関係者共通の意見のようです。

ムーディーズ・アナリティックスのリポートは、税制、貿易、移民、政府支出に関するトランプ氏の提案が、米経済にもたらす累計的な利益と損失を数値化した結果を発表していますが、トランプ氏の政策を全て採用した場合、1期目の4年間で国内総生産(GDP)は急減し、350万人が失業するとの推計をはじき出しています

当然、トランプ陣営は、このリポートを強く批判していますが、言葉にしないまでも、世界中の人たちは、大きな心配をしていると思われます。

それゆえマーケット関係者は、トランプ大統領誕生で世界経済が混乱、クリントン大統領誕生で世界経済はひとまず安心すると見ているようです。

トランプ氏の貿易政策の影響

第1回テレビ討論会でもトランプ候補は北米自由貿易協定(NAFTA)を繰り返し厳しく批判しました。

北米自由貿易協定(NAFTA)は、カナダ、メキシコとアメリカ合衆国によって署名され、北アメリカにおいて3か国による貿易圏を生み出した自由貿易協定で、環境問題に関する補完協定と労働問題に関する補完協定という付随する2つの補完協定があります。

これにより、域内の貿易は拡大し、特に、米国とメキシコの国境地帯に設けられた輸出保税加工区(マキラドーラ)にアジア諸国や米国企業の工場が集中し、米国との国境地帯の所得はNAFTA発効後の10年間で15.5%増加しました。

逆にアメリカでは、職がメキシコに流出したとして批判され、アメリカ域内での貿易赤字が拡大しました。

テレビ討論で、トランプ氏が、クリントン民主党候補の夫のビル・クリントン大統領(当時)が推し進めたこの北米自由貿易協定(NAFTA)をきつく非難したのは、この経緯からです。メキシコにアメリカの労働力が奪われた、その現況が北米自由貿易協定(NAFTA)だというのがトランプ氏の主張です。

トランプ氏は、中国やメキシコと貿易戦争を行うと言っています

貿易政策に関してトランプ氏は、より有利な貿易・交易条件を引き出すための交渉手段の一つとして、中国からの輸入製品に45%の関税、メキシコからの原油以外の輸入品に35%の関税をそれぞれ課すと脅しをかける考えを示しました。

ムーディーズの推計によると、メキシコと中国に対する輸入関税の引き上げで財の輸入価格は15%上昇し、消費者物価全体が3%押し上げられる可能性があると指摘しています。

実際にはさらに、米輸出企業への報復措置に伴うコストも発生すると思われます。

この貿易政策に関しては、米経済の短期的影響を危惧する声が強いですね。

ムーディーズのエコノミストらは、こうした関税は企業にとっての不確実性を高めるため、米国の輸出が落ち込むとともに経済成長が損なわれると警告しています。関税が引き上げられれば、輸入企業は早急に生産拠点を他国へ移すでしょうが、これには時間がかかり、企業が負担するコストも増えるとも見ています。

ブランダイス大学のピーター・ペトリ教授が数カ月前に公表した分析によると、トランプ氏の提案する関税を実施すれば、米国の財の貿易赤字は昨年に比べ約2750億ドル(37%)増加する見込みだと報じられています。

トランプ氏の移民政策の影響

トランプ氏の移民政策に注目

米経済への影響に関して、トランプ氏の移民政策も危惧されています。


移民政策については、トランプ氏が主張する不法移民の強制送還が実現すれば、労働人口の余剰分は減るでしょうが、移民者が担っていた産業は衰退すると言われています。

こうした産業で労働力が不足すれば、川上産業や川下産業で失業者が発生するだけでなく、雇用コストの上昇に伴いインフレも加速する恐れがあると指摘されています

ムーディーズは、こうした価格押し上げ圧力を受けて、FRBは本来想定していたよりも速いペースでの利上げを余儀なくされ、早急な利上げが足かせとなる中で、米経済は2018年にリセッション入りすると結論付けています。

2018年にはS&P500種指数は、25%安に沈む可能性があると指摘しています。

ただ今のところトランプ氏は、米中央銀行であるFRBの存在そのものを否定しています。利上げ政策を否定していますので、金利調整が効かずに、一方的にインフレが加速するというシナリオも想定されます。

移民政策見直しや貿易戦争による打撃から、アメリカのリセッション(景気後退)はまぬがれないというのが大方の見方です。

「トランプ・リセッション(景気後退)」という言葉も、紙面には登場しています。

トランプ氏の税制政策の影響

税制政策においては、トランプ氏は、レーガン大統領の政策を手本に大型減税を行うことを示唆しています。この改革案で連邦歳入は、9兆5000億ドル(約990兆円)減少するとの見通しがあります。経済成長の加速を想定しても10年間で10兆ドルの損失が見込まれると指摘されています。

クリントン氏の政策に、まだまだ具体的なものが見えませんが、大雑把に言えば、クリントン氏は民主党だけに、富裕層への課税強化を訴えていて、トランプ氏は中間層への課税を進める動きだと訴えています

トランプ氏の政策で増税対象となる中間所得者層がトランプ氏を支持しているというのが、矛盾とも取れる彼らの行動が、いまのアメリカ社会の複雑さをあらわしているようです。

クリントン氏が大統領になっても…

ただ両氏に共通しているのは保護主義、内向きの政策中心で、いずれにしても「アメリカ・ファースト」と呼ばれる、米国にとっての利益を追求し、他国には干渉しないというスタンスを取るでしょうから、いずれにしても、米経済は孤立性を増し縮小すると予想されます。

クリントン氏も、大衆迎合の観点から、自国産業保護のためのドル安政策にシフトするでしょうから、日本には厳しい円高を強いると思われます。

クリントン氏が大統領になったらTPPは…

TPPはどうなる

クリントン氏は、ポピュリズム政策により、TPP環太平洋戦略的経済連携協定に否定的な立場に鞍替えしています。


そもそも米大統領選挙戦で、トランプ氏もクリントン氏も、TPPには否定的な態度を表明しているにもかかわらず、日本ではこの臨時国会で、政府与党は、TPPに批准することを目標としています。お隣韓国では、新たにTPP参加が議論されています。

いったいどういうことなのでしょう。

クリントン氏が大統領になれば、為替条項をつけて、新しいTPPを打ち出してくるのではという意見もあります。国内産業にとって不利となるドル高は許さない姿勢を前面に出して、ドル高にならないような条項をつけてくるということです。それは日本にとっては円高圧力が増すということです。

TPPに関しては、両大統領候補、特にクリントン氏の発言を、額面どおりに受け取らないほうが良いような気がしますね。
 
トランプ大統領誕生で世界経済が混乱し、クリントン大統領誕生で世界経済はひとまず安心するでしょうが、日本にとっては、トランプ大統領誕生で世界経済が混乱によるリスク・オフのムードで円高になり、クリントン大統領誕生でも、政策面からやはり円高圧力が増すということになりそうな感じですね。

果たしてどうなるのでしょうか。その答えはもうすぐ明らかになることでしょう…

米大統領選挙と日本株、さらに日本経済への影響は…

アメリカ大統領選挙で日本経済と株価はどうなる

ここまで、どちらが大統領になっても、日本への円高圧力は強まると言及しました。


トランプ大統領誕生で、リスク・オフでの円買い、ヒラリー大統領誕生で、政策面からの円高圧力。ということは、日本株式市場にとっては、日本株上昇の後押しにはならないと思われます。

クリントン大統領誕生で、安心感からの一時的リスク・オンという現象はあるかもしれません。

トランプ氏は、安全保障面からも、日本に多額の費用を求めてくるでしょうし、TPPは反対で自国の経済優先となるでしょうから、日本には貿易不均衡とか円安誘導非難とかで、かなりのプレッシャーをかけてくると思われます。

安倍政権にとっては、アベノミクスをこのまま終わらせるわけにはいきません。

第一の矢の金融政策は手一杯、第二の矢の財政出動は、表上は1億総活躍の旗を掲げ、その実はリニアモータカー計画前倒しや港湾整備のインフラ事業に費やします。

肝心の第三の矢の成長戦略は、TPP批准にかかっています。

その観点からすれば、クリントン大統領のほうがやりやすいのでしょう。アメリカ主導のTPPに乗っかる形の成長戦略ですけどね。

どちらにしても、円高で日本株価は下落しやすくなるでしょう。

トランプ大統領誕生だと、リスク・オフが止まるまでは日本株が下落、どこで自立反発するかです。

クリントン大統領誕生だと、円高の影響も受けますが、TPP、あるいはTPPに変わるものによる日本成長戦略で規制緩和が進めば、海外投資家が日本を買ってくれるかもしれません。

日本側の要素とすれば、衆議院解散で政権が大幅延命させた後、TPP批准とカジノ法案を通せば株価は上昇、憲法改正で株価は停滞という感じです。

まあ、米大統領選挙の影響を一言で言えば、マーケットにおいてのボラティリティ(価格変動)がどう高まるかということに尽きますかね。(執筆者:原 彰宏)

《原 彰宏》
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原 彰宏

原 彰宏

株式会社アイウイッシュ 代表取締役 関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。 <保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP 寄稿者にメッセージを送る

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