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「長時間労働で精神的につらい方」が知っておきたい社会保険の活用法

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「長時間労働で精神的につらい方」が知っておきたい社会保険の活用法

先日新聞を読んでいたら、大手広告代理店である電通の女性社員が自殺したのは、残業時間の急増よりうつ病が発症したためとして、三田労働基準監督署が労働災害と認定したという記事が掲載されておりました。


厚生労働省が発表している「

精神障害の労災認定(pdf)

」を読むと、次のいずれかに該当した場合、うつ病のような精神疾患の発症と業務の関連性が、高いと評価されるようです。


・ 「発病直前の1か月に、おおむね160時間以上の時間外労働を行った場合、または発病直前の3週間に、おおむね120時間以上の時間外労働を行った場合」

・ 「発病直前の2か月間に連続して、ひと月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合、または発病直前の3か月間に連続して、ひと月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合」

・ 「出来事(例えばパワハラや転勤)が発生した前や後に、恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合」

この記事によると自殺した電通の女性社員の方は、一か月当たりの残業時間が100時間を超えており、また精神的につらいと頻繁にツイートしていたので、三田労働基準監督署が労働災害と認定したのは、十分に納得できる話です。

うつ病の背景にある慢性的な睡眠不足


長時間労働に起因して、うつ病が発症するのは、長時間労働を続けていると、その分だけ帰宅時間が遅くなり、慢性的な睡眠不足になるというのが、理由のひとつになるようです

例えば月に20日出勤する方が、月に100時間の残業をする場合、「100時間÷20日=5時間」になるので、1日の勤務時間が8時間とすると、これと併せて1日に、13時間働くことになります。

勤務時間が午前9時から午後6時の場合には、午後11時に退社することになり、それから家に帰るまでの時間などを考えると、必然的に睡眠時間が短くなってしまうのです。

実際のところ、この電通の女性社員の方は、「眠りたい以外の感情を失った」とツイートしており、かなりの睡眠不足だったことを推測させます

ですから長時間労働でうつ病を発症した場合には、まずはゆっくり休養をとること、できれば休職することが、大切なことだと思うのです。

業務上は労災保険、業務外は健康保険を活用する

正社員、パートやアルバイトなどの非正規社員は原則的に、「労働者災害補償保険」(以下では「労災保険」で記述)に加入します。

これに加えて正社員であれば原則的に、協会けんぽや組合健保といった「健康保険」に加入します

このように2種類の公的な医療保険に加入するのは、次のようにぞれぞれの役割が違うからです。

労災保険

業務上の病気やケガ(労働災害)、または通勤途上の病気やケガ(通勤災害)などに対して、保険給付を支給します。

健康保険

業務外の病気やケガなどに対して、保険給付を支給します。


収入の不安を軽減する「休業補償給付」と「傷病手当金」

長時間労働に起因して、うつ病を発症し、労働基準監督署から労働災害と認定された場合には、労災保険を利用できるので、2割~3割の自己負担なしで、診療を受けることができるのです

またこういった方が、病気により仕事ができないため、休職した場合には、休職する前の給与の60%程度になる「休業補償給付」が、労災保険から支給されます

これに加えて社会復帰促進等事業から、休職する前の給与の20%程度になる「休業特別支給金」が支給されるので、実質的には休職する前の給与の80%程度を受給できます

このように労働災害と認定されれば、診療代の負担がなくなり、また休職する前の給与の80%程度を受給できますので、休職により収入がなくなるという不安が、軽減されると思うのです。

なお長時間労働に起因して、うつ病を発症したとしても、労働災害と認定されなかった場合には、健康保険を利用することになるので、2割~3割の自己負担を支払い、診療を受けることになります。

ただ健康保険にも「傷病手当金」という、休業補償給付と同様の制度があるので、病気により仕事ができない場合には、休職する前の給与の60%程度を受給できます。

退職する前の準備が失業手当の受給を有利にする

現在の職場が休職できるような環境になく、仕事を辞めて休養するしかない方もいるかと思います。

こういった場合の離職理由は原則的に「自己都合退職」になり、雇用保険の基本手当、いわゆる失業手当を受給する時に、たいてい3か月の給付制限が付くので、すぐに受給できません。

しかし長時間労働がつらくて退職し、次のいずれかに該当する場合には、「特定受給資格者」と認定される可能性があり、そうなるとこの給付制限がなくなります

・「離職する直前の6か月間のうちに、3か月連続して45 時間を超える時間外労働があった場合」

・「離職する直前の6か月間のうちに、2~6か月平均で月80時間を超える時間外労働があった場合」

・「離職する直前の6か月間のうちに、ひと月で100 時間を超える時間外労働があった場合」

その他に特定受給資格者と認定されると、基本手当の給付期間が、自己都合退職より長くなる場合があります。

また基本手当の受給資格を得るには、自己都合退職だと雇用保険の被保険者期間が、「離職以前の2年間に12か月以上」は必要になりますが、特定受給資格者であれば、「離職以前の1年間に6か月以上」で済むのです。

このように特定受給資格者は、様々な面で優遇されているので、簡単には認定してもらえないことがあります。そのため、例えばタイムカードのコピーや給与明細などで、上記のような時間外労働があったことを、ハローワークに証明する必要があります

そのため長時間労働がつらくて、退職する予定のある方は、事前にこのようなものを、しっかりと準備しておきたいところです

うつ病のような精神疾患であっても障害年金を受給できる


公的年金というと一般的に、原則65歳になった時に支給される、老齢基礎年金や老齢厚生年金を思い浮かべると思います。

しかしそれだけではなく、病気やケガで一定の障害状態になった時に支給される、障害基礎年金や障害厚生年金もあるのです

またうつ病のような精神疾患であっても、障害の程度が「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(pdf)」などに定められた、障害等級に該当する場合には、このような障害年金を受給できる可能性があるのです。

ただ保険料の滞納が多くなってしまうと、障害年金を受給できなくなってしまうので、国民年金の保険料を納付するだけの、金銭的な余裕がない方は、きちんと免除を受けておきましょう。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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