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企業や個人が資産を「防衛・運用」していく具体的な「場所の分散」と「通貨の分散」の実践(上級編)

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企業や個人が資産を「防衛・運用」していく具体的な「場所の分散」と「通貨の分散」の実践(上級編)

自分の資産全体に占める外貨のパーセンテージは低い現実

世界の多くの人は自分の生まれ育った国で、そしてその祖国の通貨建てで資産を保有している。

しかし、そういう状態は祖国の浮沈と運命を共にするようなところがあり、実はかなりリスクが高いのだ


例えば我々日本人の場合、資産運用のために日本の銀行に預金して、日本の株や投資信託で運用して、日本で家を持つあるいは不動産経営をする、というのが普通だ。そしてそれはほとんど日本円建てであるはずだ。

外貨預金をしていたり、米ドルやユーロ建ての投資信託、外国株を運用していたりする人もいるだろうが、自分の資産全体に占める外貨のパーセンテージは決して大きくないのではないだろうか??

1990年までは日本円一辺倒での運用が効率的

この60年余りで観測すると最初の35年間(1955年から1990年)日本は焼け野原からの戦後復興、高度経済成長、バブル経済へと国の経済規模も株価も不動産価格もすべて右肩上がりだった。

日本円の為替もその間、USD1=JPY360から120円台まで急進したしかしその後の25年間の経済成長率は年率2%を超えることは稀で数回のマイナス成長を経験

2016年9月現在の日経平均株価はピーク時の約4割の水準、全国の地価公示平均もピーク時の3割程度。日本円の為替は一時1ドル70円台まで進んだものの現在は100円近辺を推移している。

純粋に資産の増加効率で考えるとバブル崩壊の1990年までは日本において日本円一辺倒で運用するのが効率が良く、自分の生活が豊かになったという実感をおおいに持つことができたのではないかと思う。


この25年で自分の資産が増えたと感じる人は少ない

ところがそれ以降は決してそうは言えず、ここ25年間日本人で自分の資産が増えたと感じる人はそれほど多くはないだろう。これが祖国の経済状況と運命を共にする、ということではないかと思う

局地的に発生する重大危機によりすべてが悪影響を受けないように資産を世界の数か所に分散しておく「場所の分散」。

特定通貨の暴落や無価値化によって資産が大きく毀損しないように複数の通貨建てで資産を保有しておく「通貨の分散」。

それは日本人に限らず世界のすべての人に必要な資産防衛の手法だ。

資産を分散してリスクを抑えさらに運用へ

前回は資産の一極集中解消の第一歩として香港に渡航して香港と中国本土にそれぞれ資産の置き場所として銀行口座を開設し、17種類の通貨の分散そして複数通貨の金融商品による運用ができる環境を整えることを語った。

それを皮切りに資産を運用する場所とそれぞれの通貨建ての資産を分散してリスクを抑えたうえでさらにそれを運用して殖やしてゆく。世界中に配置した資産がその地の通貨でどんどん大きくなってゆくのが理想的なかたちだ。

これはある意味グローバル企業のようなイメージ。世界各国にグループ企業の現地法人を立ち上げ、現地の人を雇用し、現地の人相手にビジネスをして現地の通貨で利益をあげる

その企業は複数の国(場所)で複数の通貨で資産を増やし続ける。仮にどこかの国で混乱や危機が発生し、そこが壊滅的な打撃を被っても他の国で挙げる収益でカバーできるのでグループ全体がそれほど深刻な悪影響を受けることはない。

個人でも応用すると

このかたちを個人に落としこむ。もっともわかりやすいものに世界の主要通貨発行国にそれぞれ優良な収益不動産を所有するということがある。

例えば日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアの5か所で空室になりにくい優良不動産物件を購入して賃貸経営をおこなう。

・ 日本の不動産物件は日本円(JPY)資産で毎月の家賃は日本円による収益。

・ アメリカの不動産物件は米ドル(USD)資産で毎月の家賃は米ドルによる収益。

・ イギリスの不動産物件はポンド(GBP)資産で毎月の家賃はポンドによる収益。

・ ドイツの不動産物件はユーロ(EUR)資産で毎月の家賃はユーロによる収益。

・ オーストラリアの不動産物件はオーストラリアドル(AUD)資産で毎月の家賃はオーストラリアドルによる収益。

それぞれの不動産物件に現地通貨を稼いでもらうのだ。

この状態を作ったとして仮に日本で大地震があって物件が損壊しても他の国の不動産が挙げてくれる収益で生き延びることができる。

ポンドが暴落したとしても他の地域、他の通貨建ての不動産は相対的に価値が上がることになるのでリスクヘッジができる。

各国ともざっくり100万ドル(約1億円)程度の資金を投入すれば継続して収益を生む優良物件を入手することは可能だ

合計で5億円レベルの投資ということになる。かなりの資産規模が必要になるので上級者の投資手法であることは間違いない。ただ各国とも融資を利用することが可能でLTV(Loan To Value=融資比率)は60%から80%である。

平均70%とだととしたら現金で用意する資金は約1億5,000万円ということになる。それでいわばグローバル企業に似たリスクヘッジと収益体質を作ることができるのだ。


様々なハードルもある

もちろんこうした単純に不動産投資だけで「場所の分散」と「通貨の分散」を実行するにも様々なハードルをクリアしなければならない。

空室にならない優良物件を探して購入、運営するには信頼のできる現地のパートナーが必要だし、国によっては外国人は新築物件しか買えない等々現地の法律的な縛りも調べて検討しなければならない

そして日本に住んでいるならば各国で挙がった賃貸収入の税金も日本で申告する必要があり結構面倒な手続きも発生する

ここまでくると一人で行うのは困難なので利害をともにする家族一丸となった戦略が必要になるかもしれない。

資産の防衛や運用、そして継承に優れているユダヤや華僑の一家が数世代かけてこうしたことに取り組んでいるのも「場所の分散」と「通貨の分散」の重要性を雄弁に物語っていると言える。(執筆者:玉利 将彦)

《玉利 将彦》
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玉利 将彦

玉利 将彦

Borderless Works Co.,Ltd. 代表 日本企業の海外駐在員として9年にわたる上海・香港勤務を経て2005年から現職。駐在員時代から17年に及び上海・香港を拠点におこなってきた金融や不動産投資の知識・経験を生かし、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)として活動。 香港における投資助言業(SFC)と保険代理業(PIBA)の免許を保有するエキスパートとして顧客のライフプランに即した投資計画の立案、資産運用商品・保険の仲介、海外金融機関の口座開設・運営のサポートをおこなっている。 寄稿者にメッセージを送る

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