※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

国民年金の滞納者の9割は「手続き不足」で、年金増額の機会を逃している

その他 その他
国民年金の滞納者の9割は「手続き不足」で、年金増額の機会を逃している

平成29年度から滞納者に対する強制徴収が強化される


厚生労働省と日本年金機構は、低迷している国民年金の保険料の納付率を向上させるため、平成29年度から滞納者に対する強制徴収を、強化する方針です

国民年金の強制徴収とは、期限を指定して滞納者に「督促状」を送付し、その期限内に保険料を納付しない場合には、給与、預貯金、自動車などの財産を、差し押さえするというものです。

このような強制徴収を実施する基準は現在、「年間所得が350万円以上で、未納月数が7か月以上」になっております。

厚生労働省と日本年金機構は平成29年度から、この基準を拡大して、「年間所得が300万円以上で、未納月数が13か月以上」に、変更する予定のようです。

しかし先日新聞を読んでいたら、強制徴収を実施する基準を変更しても、国民年金の保険料の納付率は向上しないという、否定的な意見が記載されておりました

保険料の納付期限は翌月、徴収権の時効は納付期限から2年

国民年金の保険料は原則として、翌月の末日までに納付しなければならず、例えば平成28年2月分の保険料については、平成28年3月31日が納付期限になります。

ただ国民年金の保険料の徴収権に関する時効は、原則として納付期限から2年になっているため、この期間内であれば、まだ保険料を納付できるのです

例えば平成28年2月分の保険料については、徴収権の時効を迎えるのが平成30年3月31日のため、この日までなら納付できます。

これを過ぎると未納期間と確定するため、年金事務所などは滞納者から、保険料を徴収できなくなると同時に、滞納者が保険料を納付したいと思っても、納付できなくなってしまうのです

なお国民年金法を読むと、滞納者に送付する督促状は、「時効中断の効力を有する」と記載されております。

時効が中断されると、進行中の時効がリセットされ、振り出しに戻りますので、単純に納付期限から2年が経過すれば、保険料の徴収が終了するというものではないのです

国民年金の滞納者の94%は年間所得が300万円未満

厚生労働省の調査によると、徴収権の時効である2年以上に渡って、国民年金の保険料の納付を滞納している方は、平成27年度末時点で約206万人もいるそうです

また滞納者の年間所得は、300万円未満が94%、300万円~350万円が2%、350万円以上が4%になるそうで、300万円未満に偏っていることがわかります。

そうなると厚生労働省と日本年金機構が平成29年度から、国民年金の保険料を強制徴収する基準を、「年間所得が300万円以上で、未納月数が13か月以上」に変更しても、強制徴収の対象者は微増にとどまります

このような理由があるため多くの新聞は、納付率の向上について、否定的な意見を記載しているのです。

滞納者の9割は手続き不足で年金増額の機会を逃している


収入の減少や失業などにより、国民年金の保険料を納付するだけの金銭的な余裕がない場合、市区町村役場の窓口や郵送などで、免除申請を行うことにより、保険料の納付が免除されます。

この免除制度には、「全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除」があり、例えば全額免除を受けた場合、保険料を全く納付しなくても、保険料を全額納付した場合の2分の1となる、老齢基礎年金を受給できるのです

この理由として老齢基礎年金の財源の2分の1は、税金で賄われているからであり、その他の免除は保険料の一部を納付すれば、次のような割合で老齢基礎年金に反映されます。

・ 4分の3免除(4分の1は納付):8分の5
・ 半額免除(2分の1は納付):8分の6
・ 4分の1免除(4分の3は納付):8分の7

どの免除を受けられるかは、前年の収入によって変わり、例えば単身世帯が免除を受けられる収入の基準(括弧内は所得の基準)は、次のようになっております。

・ 全額免除:122万円(57万円)
・ 4分の3免除:158万円(93万円)
・ 半額免除:227万円(141万円)
・ 4分の1免除:296万円(189万円)

これを見るとわかるように、滞納者の9割を占める年間所得が300万円未満という方は、強制徴収の基準から外れているだけでなく、きちんと免除申請をすれば、保険料を納付する必要すらない可能性があるのです

また免除の手続きをしたか否かで上記のように、将来に受給できる老齢基礎年金の金額が変わってきますから、滞納者の9割は手続き不足で、年金を増額させる機会を、逃しているように感じるのです。

第3号被保険者も手続き不足で年金増額の機会を逃している


このように国民年金の保険料を、自分で納付する必要があるのは、「第1号被保険者」に該当する方です。


一方、会社員や公務員の配偶者(年収130万円未満が要件)は、「第3号被保険者」に該当し、「国民年金第3号被保険者該当(種別変更)届」という書類を年金事務所などに提出すれば、国民年金の保険料を納付する必要がありません。

しかも第3号被保険者であった期間は、第1号被保険者が保険料を全額納付した場合と同じように、老齢基礎年金を受給できるのです

このような第3号被保険者の制度は、昭和61年4月から始まったのですが、当初は制度が十分に周知されていなかったため、書類を提出しない方が続出しました。

国民年金の保険料の徴収権に関する時効は、上記のように納付期限から2年のため、書類の提出を忘れて2年が経過すると、その期間は未納期間と確定し、その分だけ老齢基礎年金が少なくなります。

特例届出をすれば2回目の救済措置に間に合います

そのため平成7年4月から平成9年3月まで、年金事務所などに特例届出をすれば、「国民年金第3号被保険者該当(種別変更)届」の提出を忘れて未納と確定した期間を、遡って第3号被保険者の期間にするという、救済措置が実施されたのです。

しかしこの救済措置が実施された期間に、特例届出をしない方が多かったので、平成17年4月から2回目の救済措置が実施されております

1回目と同様に特例届出をすれば、遡って第3号被保険者の期間になりますが、平成17年4月以降の期間については、「国民年金第3号被保険者該当(種別変更)届」を提出しなかったことについて、「やむを得ない事由」がある場合に限られます

免除は2年前まで、第3号は昭和61年4月まで遡れる

免除の要件に該当する方や、第3号被保険者の要件に該当する方は、このように手続きをすれば、保険料の全部または一部を納付する必要がなく、また将来に受給できる老齢基礎年金を増額できます。

そのため面倒だからといって手続きをしないのは、本当にもったいない話だと思うのです。

国民年金の保険料の徴収権に関する時効は、上記のように納付期限から2年のため、2年前までなら遡って免除を受けられる可能性があります

また特例届出をすれば、2年前より前の期間についても、昭和61年4月まで遡って、第3号被保険者の期間になる可能性があります

この機会にねんきん定期便などを見て、免除を受けたり、第3号被保険者になったりできる期間がないかを、確認してみましょう。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
この記事は役に立ちましたか?
+0

関連タグ

木村 公司

執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集