総務省が、返礼品を寄付金の3割を目安にする規制(いわゆる返礼品規制)を自治体に強く要請するようになりました。
ふるさと納税の趣旨に立ち返ることには私は賛成ですが、返礼品を歓迎している方は魅力のなくなってきそうな動きに見えてくるでしょう。
趣旨に立ち返って利用するからこそ、損しないように利用したいものですが、気をつけたほうがいい点は何でしょうか?
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目次
注意点1. 住民税額の2割をめどにとは言いますが
住民税額の2割を超えたら損だとはよく言われます。
住民税は5,000円の均等割と所得に応じてかかる所得割があります。
さらに所得割の計算にあたっては、課税所得に住民税の税率(原則10%ですが、上場株式の譲渡や配当などに関しては違う税率が適用)をかけるだけではなく、住宅ローン控除やふるさと納税などの税額控除を差し引きます。
2割というのは、
の2割という意味です。
調整控除だけを差し引いた所得割の2割ということで、住宅ローン控除などの税額控除は考慮しません。
厳密には、ふるさと納税による減税幅を分解すると下記3つに分かれます。
A 所得税減税分
(ふるさと納税の額 ― 2,000円)× 所得税率(5.105%~)
「ふるさと納税の額」の上限 : 総所得金額等の4割
B 住民税寄付金税額控除(基本控除)
(ふるさと納税の額 ― 2,000円)× 10%
「ふるさと納税の額」の上限 : 総所得金額等の3割
C 住民税寄付金税額控除(特例控除)
(ふるさと納税の額 ― 2,000円)×(1 ― 10% ― 所得税率)
特例控除の上限 : 調整控除だけを差し引いた所得割の2割
なお総所得金額等は、全ての所得を合算し、過去3年分の損失があれば相殺した後の金額になります。
※詳しくは「確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(2)~基準となる所得~」
上記のように入り組んだ数式となっており、上限2割はCの部分にのみ関係するため、実際には住民税額の2割を超えてふるさと納税を行っても損しないケースがあります。
例えば、下記のケースを考えてみましょう。
ふるさと納税を行っても損しない例
所得税率 : 40.84%
調整控除だけを差し引いた住民税所得割の額 : 400万円
※A・Bは総所得金額等による上限を超えていないものとします。
減税額を計算すると
Cが400万円の2割(80万円)を下回っていれば全額減税に回りますから、減税額はふるさと納税から2,000円引いた金額になります。
なんとこの所得税率では、住民税所得割4割のふるさと納税であっても、2,000円の自己負担を除けば減税に回ります。所得税率が高いほど、実は上限が上がるのです。
確かに上限を超えると損ですが、2割の数字にはこだわりすぎず、ふるさと納税関係のサイトでどれだけ支払っても大丈夫かシミュレーションしてみることが大事です。
1自治体あたりの返礼品は規制で少なく抑えられるため、できるだけ多くの自治体にふるさと納税したいのであれば、実際の上限を理解しておいたほうがいいです。
注意点2. 社会保障制度の利用では得にならないことも
社会保障制度の所得制限においては、ふるさと納税をはじめとして寄付金で有利に働くことは少ないです。
ふるさと納税は所得税においては寄付金控除、住民税においては寄付金税額控除にあたりますが、これらを考慮する制度は原則ないからです。
すまい給付金(住宅購入時にもらえる)・高等学校等就学援助金(いわゆる高校授業料無償化)など一部の給付金においては、ふるさと納税など税額控除後の所得割が所得制限基準ですので、ふるさと納税を行うことで有利になります。
※この点については下記の記事でも触れております。
「住民税課税明細」を読み解く 「所得割」「課税標準額」と社会保障制度の関わりは?
「所得税を節税すれば保育料は安くなる」とは限らない 注意すべき2つのこととは
しかしふるさと納税は、住んでいる自治体に払うべき税金をよその自治体に充てることに意義があります。
独自の高校授業料無償化政策も採用している大阪府では、ふるさと納税を利用すると高等学校等就学援助金で有利になることを問題視しています。
所得制限で有利にするためのふるさと納税活用は、今後はあまり期待しないほうがよいのではないでしょうか。
注意点3. 返礼品の所得申告 マイナンバーで厳しくなる可能性も
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ふるさと納税の返礼品をもらうのは利益を得る行為ですので、本来は確定申告の対象です。一時所得にあたる点は、総務大臣もたびたび会見でふれています。
一時所得の計算式は(収入 ― 経費 ― 50万円)÷ 2で返礼品の経費は0になりますので、年間で50万円を超えると、超えた分の半分だけ課税対象になりますので注意が必要です。
なお同じ年に満期保険金のように他の一時所得対象があれば、それも合算して50万円を超えるか判定します。
もっとも返礼品規制では、家電のような資産性がある返礼品の自粛を求めています。規制が進むことで、一時所得課税の範囲まで行くことは稀になると考えられます。
ただ競馬の馬券払戻金のように、一時所得とされてきたものでも反復継続性があることで雑所得とした判決もあります。
反復継続して返礼品を得るケースは珍しくありませんし、ふるさと納税返礼品や馬券払戻金が一時所得にあたる根拠は、あくまで国税庁の通達や質疑応答事例です。
今後課税の実務が変われば50万円を超えなくても課税という可能性も考えられます。
ふるさと納税やその返礼品は銀行預金などに比べても、マイナンバーによる捕捉が容易であると考えられます。
そのため自治体に対する規制が厳しくなるだけでなく、納税者に対する課税を厳しくすることもありえます。
申告漏れによる追徴課税で損しないよう、十分気をつけましょう。
最後に
規制が進んでふるさと納税が委縮するような動きにはなっていますが、平成27年にはワンストップ特例制度など、ふるさと納税を積極的に利用してもらうような制度設計もされてきたことは否めません。
ところでこのワンストップ特例制度も落とし穴があります。これに関しては以下記事で改めてふれていきたいと考えています。(執筆者:石谷 彰彦)
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