仮想通貨が「法定通貨」になる日は近い 世界の中央銀行がこぞって「デジタル通貨」を開発している理由»マネーの達人

仮想通貨が「法定通貨」になる日は近い 世界の中央銀行がこぞって「デジタル通貨」を開発している理由

前回、仮想通貨に関しての考察第一弾として

・ 仮想通貨が「商品」から「通貨」へ
・ 日本社会に、決済手段として仮想通貨が浸透
・ いずれ迎えるキャッシュレス社会

を取り上げました。(参考記事:仮想通貨は「商品、物」から「通貨」の時代へ。給料や年金が仮想通貨で支払われる将来もある。

今回は第二段として「キャッシュレス社会」について、さらに深堀りしていきます。



もはや、世界を通じて、キャッシュレス社会になることを受け入れなければならないということです。


三菱東京UFJ銀行の「MUFGコイン」



≪画像元:三菱東京UFJ銀行


仮想通貨の見方が大きく変わったのが、今年5月1日、三菱東京UFJ銀行は、いよいよ独自の仮想通貨「MUFGコイン」の実証実験をスタートしました。

来年の春ごろに稼働させるようですが、ビットコイン等の他の仮想通貨と違うのは、1コイン1円という、価格が変動しないもので、決済や送金の一つの選択肢とするようです。

仮想通貨に、今までの決済や送金という銀行業務が奪われることへの危機感から、仮想通貨の世界に参入するようです

現在三菱東京UFJ銀行は4,000万口座172兆円の資金量がありますが、これを守るための仮想通貨なのかもしれません。

それゆえ、世界中で普及している仮想通貨の論理とは少し違ってはいますが、三菱UFJフィナンシャルグループが仮想通貨を取り扱うことには大きな意味があるのです。

仮想通貨が法定通貨になる


日本最大の銀行が参入したというインパクトもそうですが、もし三菱東京UFJ銀行が、住宅ローン返済を「MUFGコイン」で受け取ることができるとしたなら、仮想通貨は法定通貨になるということになります。

法定通貨に関しては、前回説明しましたが、そうなれば今の日銀券にとって代わる存在になるということも可能になります。

そうなると、日本に流通通貨が正式に複数存在することになります

日銀は、市場の資金流通量を調整することで、物価の安定を図ります。通貨の役目はインフレやデフレを調整するという側面もあります。

国家の本音は、インフレが望ましいです。日本の借金は、インフレにより軽くなるからです。

デフレだと、給料は増えない中で、借金返済額だけは毎月一定ですから、生活は苦しくなります。

インフレだと資産価値は上昇、名目賃金は上昇し、平たく言えば、額面価値は上がり、保有資産額の見た目は増えることになり、借金額は一定ですから、保有資産と借金との対比は小さくなります。

しかも累進課税により、見た目の額面給料が増えれば税収も増えます。税金は、文句なしに増えます。

それゆえ国はインフレが望ましいのです。

日銀券よりもMUFGコインのほうが信用力が高まる


話を戻しますが、今は日銀は物価調整をしていません。長期金利を強制的にゼロ付近に抑え込んでいます。

仮想通貨発行量はネット上での流通ですから、AIを使って将来の物価変動を予測し、事前に通貨発行量を自動で調整することができます。

つまり、物価変動を常に安定させることが理論上可能だということになります。

日銀券よりもMUFGコインのほうが信用力が高まるということになりますね。

日本で一番預金量が多い三菱東京UFJ銀行が仮想通貨発行に乗り出したことの意味は、とても大きいのです。


世界中の中央銀行はすでに大きく動き出している

日本銀行は定期的に「フィンテックフォーラム」を開催していますが、世界中の中央銀行はすでに大きく動き出しています。

昨年6月、米FED、世界銀行、IMF主催の「ブロックチェーンとフィンテックに関するフォーラム」には90を超える国の中央銀行が参加しました。

以下、各国中央銀行の動きを列挙しますが、国が発行するものは仮想通貨と呼ばずに「デジタル通貨」という名前に変わります



各国中央銀行の動き


昨年2月、イングランド銀行が中央銀行発行デジタル通貨「RSCoin」を提案する論文を公表しています。

オランダ中央銀行は、ブロックチェーンを用いた暗号通貨のプロトタイプ「DNBCoin」開発に取り組んでいると報道されています。

カナダ中央銀行は、デジタル通貨「CAD-Coin」をR3協力のもとで開発中であることを発表しました。

シンガポール中央銀行は、ブロックチェーン技術開発についてインド、韓国と提携しました。日米欧金融大手とシンガポール銀行が仮想通貨技術を使った資金取引システムの実験を始めます。

中国人民銀行が検討しているデジタル通貨は、まずは民間銀行に対して発行し、そこから一般顧客に預入や払出に関するサービスを提供する「間接型」アプローチの採用に傾いています。

ロシア銀行は昨年10月、市場参加者と連携し「Masterchain」というDLT(磁気テープを使用した大容量補助記憶装置)を用いた金融情報伝達ツールの試作品開発を公表しています。

なぜ中央銀行がデジタル通貨を発行するのか


今までの紙幣の立場が危ぶまれ、中央銀行の存在意義がなくなることを恐れ、デジタル通貨を発行することで存在意義を保とうとしているらしいです。

またイングランド銀行の発表によれば、中央銀行がデジタル通貨を発行することで、GDPを3%押し上げる効果があるという試算を発表しています

今の量的緩和がそうですよね。GDPの30%近くの通貨を発行して、GDPを下支えしています

デジタルですから、通貨発行コストが抑えられ、実質金利は上昇するという試算もあるようです。


発行体を持たない仮想通貨

デジタル通貨と仮想通貨は、その成り立ちからして、根本的にまったく別物と言えます。

ここまで、各国の中央銀行のデジタル通貨に対する取り組みを説明してきたのは、世界的に、しかも急速に、今までの紙幣から、紙でないデジタル通貨が普及することをお伝えしたかったからです。

つまり決済においては、もう紙幣は使われなくなる可能性があるということです。

インドでは偽札防止のために、高額紙幣の無効化を実施しました。アメリカやヨーロッパでも、高額単位紙幣を廃止することが検討されています

デジタル通貨は中央銀行が発行しますので、発行体の信用力が担保となります。

MUFGコインも日本最大の預金量が担保となりますが、ビットコインのような仮想通貨は発行体を持ちません。

ただ仮想通貨にとっては、発行体を持たないことが重要なのです。それだけ広がりが無限大であると言えます。

では発行体を持たないビットコインのような仮想通貨は信用できるのでしょうか。

今までの決済は銀行を通して行われてきました。銀行がないとできないということにもなり、それゆえ海外送金には時間がかかり手数料も多くかかっていました。

ビットコインのような仮想通貨は、ネットがつながっていれば、個人間ですべての取引が行われます。銀行が要らないのです。直接個人同士でお金のやり取りができます

これを可能にしたのが「P2P(Pear to Pear)」システムです。


P2P

P2Pを説明する前に、これの反対に位置するものを理解すれば、「P2P」がよくわかると思います。

「クライアントーサーバー方式」、これは、会社などのネットシステムをイメージしてください。真中に大きなサーバーがあって、それにいくつものパソコンがつながっている状態を言います。

これだと中央にあるサーバーの負荷が大きくなります。

「P2P」は、「クライアントーサーバー方式」のように、真ん中に大きなサーバーがなく、直接個々のパソコン同士がつながっているイメージです。

マイクロソフトのSkypeや、IP電話がこのシステムです。パソコンにあるIPアドレスでつながているのです。

詳しいロジックに関しては説明できる技量を持ち合わせていませんが、これで個人間取引がスムーズにできるということを理解してください。

さて仮想通貨の安全性ですが、銀行を介しての取引は、銀行を信用しているからできるわけで、信頼という概念にのみ、安全性を担保しているのです。

銀行の中で何が行われているかはわかりません。銀行を信頼している、ただそれだけに支えられているのです。

ただ、金融庁が銀行業務を監視し、さらに罰則を設けることでが、銀行取引の安全を保証しているところはあります。

仮想通貨の安全性は「ブロックチェーン」にあります




ブロックチェーン

銀行を介したとしても、銀行の中身は見えないですが、ブロックチェーンはすべて見えるようにしたのです。

誰の目に見もわかるように、すべてオープンにしたのです。銀行のような建物も金庫も一切ありません。

世界中の人が、オンタイムで世界中の取引を同時に見ることができ、その取引の「承認」をお互いでしあうことで安全性を確保しているのです。

新規の取引が発生したら、当然全世界の人がそれを確認します。そして最初に、その取引を「承認」をした人にフィーが発生します。

ひとつの取引が「ブロック」、それを鎖でつなぎ合わせる、つまり「承認」することで取引は成立します。

この「承認」も世界中の誰かが行います。「マイニング」と呼ばれる行為で、承認する人を「マイナー」と呼びます。

私たちがお互いにお互いの行為を監視しあうシステム、それがブロックチェーンなのです。

つまり、世界中の人同士で「承認」競争をすることで、仮想通貨取引の安全性を確保しているのです。

仮想通貨取引の安全性は、ブロックチェーンによる全世界の人々による監視体制が担保となっているのです。

取引は実名で表示されるのではなく、専用の番号で表示されます。匿名性により個人情報は守られていますが、この匿名性が犯罪を生む可能性があるとも指摘されています

ハッカーなどが侵入したとしても、世界中のパソコンを書き換えることはできず、すべての取引に入り込むことは不可能と言われ、量子コンピュータが発展しても、理論上はハッキングできる可能性はあるものの、時間と労力が膨大にかかります。


止められないキャッシュレス社会の流れ



テロの資金源としてマネーロンダリングや不正取引に、匿名性を利用して使われる危険性はあります

リスクを考える上で最悪なことは、テロ組織の利用が拡大して、世界的に一斉に仮想通貨取引に規制をかけるということになれば、保有資産が凍結あるいはなくなることも想像されます。

最悪の事態ではありますが、可能性はゼロではありません。

繰り返しますが、偽札対策による紙幣の規制は、世界的な問題となっています。

偽札問題にかかわりなく、世界の流れは、急激に仮想通貨に流れています。これだけは事実として受け止めなければなりません。

好きとか嫌いとかではなく、客観的に事実として受け止めてください。


最後に

仮想通貨が生むキャッシュレス社会はもう目の前です。

電車の改札口、昔は人が切符を確認して「ハサミ」を入れていましたが、自動化され、改札口に人が不要となりました。そして今は切符そのものがいらなくなりました。

改札口が自動化するにはずいぶん時間が掛かりましたが、切符がなくなるまでには、そんなに時間はたってはいませんよね。

次回は仮想通貨を「投資」の側面から見た考察です。(執筆者:原 彰宏)

この記事を書いた人

原 彰宏 原 彰宏»筆者の記事一覧 http://www.spway369.com/

株式会社アイウイッシュ 代表取締役
関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。
<保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP

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