「とりあえず、がん保険だ!」の前に、あなたがすべきこと»マネーの達人

「とりあえず、がん保険だ!」の前に、あなたがすべきこと

小林麻央さんのこと

おととい、6月23日のニュースで一番驚き、びっくりしたのが「小林麻央さんの訃報」だった。

丁度一年ほどまえに乳がんに罹患したことを公表。ブログで闘病生活のことや、ご家族への想いなどを綴ってこられた。

その大胆な決断に驚きもしたが、それ以上に同じ立場の方や、そのご家族の人へのエールにも思えて、立派だなぁと感じ続けてきた。

だからこそ、今回の訃報はショックだったし、考えることも多い。まずは、本題に入る前に、哀悼の意を表したいと思う。


有名人の「がん罹患」が、がん保険のセールストークに使われる!?


私は某A生命保険会社の代理店をしていたことがある。

その会社はがん保険のパイオニアだが、そのセールスツールにがん罹患者のインタビューを使っていた(現在はそのセールスツールに使われているかは不明)。

がんの知識を啓発したいという想いが保険会社には当然あるだろうし、その理念は素晴らしいと思う。

しかし、販売の現場の人の頭の中にあるのは「何かいいセールスツールや、材料はないだろうか?」である。

自分ががんになった経験からがん保険の必要性を説く募集人(生命保険の販売資格を持つ人の総称)もいたが、皆が皆、がんに罹患するわけではない。

だから、経験者の話、特に「治療費に困った話」、「いい治療を受けたい話」などが載っている募集資料(正式に保険販売に使える資料として認定されたもの。番号が振られる)は大変重宝したものである。

しかも、その経験者が有名人ならば、これほど心強いツールは無いし、がん保険の販売の後ろ盾になり得るのだ

また、今回のようなケースの経緯などを、正式な募集資料として使用するのではなく、セールストークに挟んでみたり、SNSなどで「がん保険の必要性」を発信したりする募集人もいる。

実際にこの小林麻央さんのニュースが出て以降、ツイッターには「まずはがん保険だろ!」、「がん保険に入ろう」という呟きが増えている。

もちろん、このような投稿、全てががん保険の販売に繋げるものではないだろうが、結果的に、有名人のがん罹患のニュースが流れると、がん保険の契約が増える、という相関性を否定する人は少ないと思う。

それくらい、有名人の「がん罹患」のニュースは、がん保険販売の追い風になるのである。


「まずは、がん保険にでも」は間違っている!


こんなことだから「とりあえずがん保険に加入したら、安心だよね」という思考に偏る人が出てきてしまうのだが、それは間違っている。

実は私も医療保険にがん一時金特約を付けているし、嫁さんにもがん保険に加入してもらった。お客様にもがん保険や、がん特約を販売してきたし、今後もその考え方は変わらないと思う。

しかし「何よりもがん保険に加入することが一番大事」とは思わない。

がん対策で一番大事なのは「がんに罹患しないような生き方を実践すること」であり、二番目に大事なのは「がんに罹患したらライフプランが実現できるかを確かめること」である

そして、最後に「自分の希望するがん治療を受けられるようにする」ことで、そのためにがん保険が必要ならば、加入する、の順番だと思うのである。

がん保険を販売することだけを考えたら、一番目と二番目はかったるいだけだし、そこを話してしまうと、がん保険は売れないかもしれないと考える募集人は少なくないだろう。

この傾向は、がんやがん治療に関する調査結果を、保険会社がセールスツールに転用する時にも起こり得る。

ましてや募集資料の登録などしていない「募集人自身の口」に至っては、何でもがん保険の販売に結び付けることは不可能ではないのだ。

では、一般の消費者であるあなたにとって、本当に知りたいことは「がんになった後」のことで、「がんにならないようにすること」ではないのだろうか?

また、がん罹患後に、自分のライフイベントが実現できないか、そうならないかをシミュレーションすることよりも、がん保険にとりあえず加入することが優先されるだろうか?

ライフプランの専門家としては、がん保険のことは三番目に置いて、一番目と二番目をまずは知ることが大事だと思うのだが、あなたはどうだろう?


がん保険に入る前に、あなたがすべきこと


最近のがん保険はがん診断一時金が複数回支払われたり、抗がん剤の保障が充実していたり、通院保障に重点を置いていたりして、現在のがん治療の傾向を反映した商品つくりがなされている。

これからがん罹患率が高まる世代に該当する人や、治療費を貯金から出すことが難しい人や、一昔前の入院型のがん保険に加入している人は、今だからこそ、がん保険の加入を検討することは悪い事ではない。

しかし、あなたがまずしないといけないことは「がんにかからないような生活習慣を実践する」ことである。

そしてその次には、「もし近いうちにがんになったら、経済的ダメージがどれくらいでそうか?」を確認することだ。

その確認で、手持ちの現金などでリスク対策が不十分な場合は、がん保険での対策を検討することになる。

この手順を逆にする・省くきっかけになるのが、有名人などのがん罹患の体験談を「がん保険に加入する動機」にしてしまう、募集人のセールストークや、世間の「空気」であることに疑いの余地はない

だからこそ、賢い消費者を目指すあなたには、TVやネットの情報や、この機会を利用しようする保険募集人の企てを冷静に判断して欲しい

その冷静さは、私が示した順番通りに考える癖をつけることだと思うのである。(執筆者:石川 智)

この記事を書いた人

石川 智 石川 智»筆者の記事一覧 http://office-ishikawa.jp/wp

FP事務所オフィス石川 代表
1966年高知県生まれ。トヨタ系販売店~外資系保険会社を経て、2010年独立起業した。一般的な相談業務とともに「高齢者とお金」「障害者とお金」などの講演会で高知県内外で講師を務めている。また国の事業である「生活困窮者自立支援事業」での家計相談を、高知県内の市町村で担当し、福祉FPとして活動中。今後の目標は高知県内で金融リテラシーを普及させることと、様々な分野にFPの技法を活かすこと。メディア出演歴は高知放送「こうちeye」テレビ高知「テレッチのたまご」など。
<保有資格>:AFP認定者 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 生命保険・損害保険・少額短期保険募集人資格 終活アドバイザー

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