75歳以上の後期高齢者医療保険ですが、多くの自治体(広域連合)では7月に通知書が送られてきます。
国民健康保険と同様、低所得者の保険料が高負担にならないように軽減制度が設けられています。
高齢者に対する配慮があるため、国民健康保険より踏み込んだ軽減となっていますが、段階的な改正で軽減の割合は低くなってきています。
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目次
国民健康保険の均等割軽減
国民健康保険の軽減について説明しましょう。
国民健康保険には、加入者1人あたりが定額である均等割(金額は自治体により変わります)に対して、下記のような所得基準に基づき、3段階の軽減制度がもうけられています。
7割軽減
世帯所得 ≦ 33万円
5割軽減
世帯所得 ≦ 33万円 + 27万円(※1)× 加入者数
※1 平成28年度まで26.5万円
2割軽減
世帯所得 ≦ 33万円 + 49万円(※2)× 加入者数
※2 平成28年度まで48万円
詳しくは「国民健康保険の低所得世帯向け「軽減」が今年も変更。改正点と申告の仕方の注意点について」を参照ください。
後期高齢者医療保険の均等割軽減はどうでしょうか?
5割軽減と2割軽減は国民健康保険と同じですが、7割軽減は8.5割軽減に増えます。
さらに8.5割軽減の対象者で、世帯内加入者(被保険者)全員の所得が0の場合は9割軽減に増えます。
この場合の所得0になる条件
年金収入は80万円以下でないといけません。所得税や住民税の申告のように年額120万円以下が所得0になるわけではないので注意が必要です。
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「世帯所得」の対象者
という点では、後期高齢者医療保険と国民健康保険では共通しています。
またこの場合の所得とは「総所得金額等」であり、医療費控除や寄付金控除のような所得控除は考慮しません。
総所得金額等に関しての詳細は「確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(2)~基準となる所得~」を参照ください。
後期高齢者医療保険特有の軽減制度
所得割額の軽減
総所得金額等が91万円(年金年額に換算すると211万円)以下の加入者本人分に対しては、所得割額が2割軽減されます。
また自治体によっては広域連合が独自の軽減策をとっているところもあり、例えば東京都後期高齢者医療広域連合では
・総所得金額等53万円(年金173万円)以下:4.5割軽減
といった軽減制度もあります。
被扶養者の特例
健康保険の扶養要件として「130万円の壁」、つまり年収見込み130万円以下というのが知られていますが60歳以上ではこれが180万円まで上がります。
扶養の対象者が75歳になると後期高齢者医療保険に加入することになり、扶養の扱いから外れます。
ただ急激に保険料負担が発生しないよう、扶養であった人は所得割額が0円となり、均等割額も7割軽減されます。
世帯所得33万円以下であれば8.5万円軽減となり、世帯所得0であれば9割軽減となります。
注意
パートタイマーで「106万円の壁」を超え職場の健康保険に加入することになり、その後75歳になって後期高齢者医療保険に加入した場合は、この特例は受けられませんので気をつけてください。
どのように軽減が変わっていくのか?
国民健康保険以上に手厚い軽減は、高齢者にとってありがたいことですが、
は、注意しないといけません。
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被扶養者の特例
均等割額については、段階的に縮小が予定されています。平成28年度は均等割額9割軽減であるものが、平成29年度は7割軽減、平成30年度は5割軽減となります。
その翌年度以降は、加入から2年間は5割軽減という時限つきの軽減となります。
なお所得割額0円の措置は当面続く予定です。
所得割軽減
平成29年度は2割軽減ですが、平成30年度をもって軽減廃止が予定されています。
平成28年度は5割軽減でしたので、段階的に縮小していくことになります。また東京都独自の軽減についても見直しが検討されています。
均等割軽減
均等割軽減は、上記で説明したように平成28年度と平成29年度で5割・2割軽減の基準が異なっており、平成29年度のほうがむしろ基準が緩くなっています。
ただこれは国民健康保険と歩調をあわせたものであり、全年代を通じた低所得者軽減であれば、今度も対象者が拡大していく可能性はあります。(執筆者:石谷 彰彦)