目次
NISAのメリットを活かす前提を確認しよう

前回は、「NISA(少額投資非課税制度)がメリットになる投資とデメリットになる投資」について書きましたが、ここでもう一度、上場株式等や公募株式投資信託の売買や配当などから得た所得に対する2014年1月以降の税制を整理しましょう。
従来からの特定口座や一般口座は課税口座として、20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税金が課されます。
一方、新制度のNISAを利用すると年間購入金額100万円まで(元本部分のみで手数料等は含まない)ならいくら利益が出ても非課税ということになります。この基礎部分だけで考えてもNISAを利用しない手はないのですが、今回は、NISAのメリットを最大限に活用する方法を考察します。
まず、NISAで購入できる金額は、年間100万円までで最大500万円、非課税期間が最長5年間となっています。一見、利用できるのは500万円までと解釈されそうですが、そうではなく、投資可能期間は2014年から2023年までの10年間なので、2014年に始めて毎年100万円ずつ購入すれば10年間で1,000万円、非課税で投資することができます。
ただし、非課税で投資できる期間は最大で5年間なので、2014年に購入したものは2018年には終了し2019年にはその分の100万円が空くという具合で、その後も同じように繰り返され、最後は2023年に購入したものが2027年に終了します。どんなに多い年(2018年~2023年)でも非課税枠は500万円で頭打ちになるというわけです。
したがって、NISAのメリットを活かすには、まず、毎年投資に充てる資金が新規資金であることが前提になります。これまで投資経験がなく、2014年から投資をスタートする場合は、とにかく毎年100万円まではNISAをフルに活用するとよいでしょう。
すでに投資経験がある場合は、現在保有している株式や投資信託などをNISAに移管することはできませんが、売却して資金をいったん引き出してからNISAに入れることはできます。これは、同じ金融機関内でも可能なので、現在の取引金融機関でNISA口座を開設するというのは一つの手ではあります。
実際、NISA口座の予約ができるのは2013年10月からですが、すでに取引金融機関からはNISA口座の案内が届いていることが多いし、積極的に勧誘しているところもあります。
ただし、NISAは1人1口座しか設けることはできず、一度開設したNISA口座は最低でも4年間変更することができないので、金融機関選びは慎重に考えたいところです。
口座開設はどこでするのが良いの?
たとえ今は投資信託しか買う予定がなくても、銀行等金融機関では原則として株式の売買ができないので、将来、株式投資まで広げる可能性がある場合は証券会社でNISA口座の開設をお勧めします。
また、個別の株式だけではなく、株価指数などに連動するタイプの上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)も証券会社でしか購入できません。このように幅広く活用するには、投資信託の品揃え、積立型の商品の有無なども含め、利用したい金融商品やサービスなどが揃っている金融機関を選ぶとよいでしょう。
NISA向きの銘柄と向いていない銘柄
次に、どのような投資先でNISAを利用するのがよいかということですが、特定口座などの課税口座と比較した場合、最終的な損益が確定するまで結果は出ません。とはいえ、投資にリスクはつきものなので、NISAに限らず投資する時点で想定できるベターな選択を行う必要はあります。
株式では、株価が下落後に値動きが小さくなり上昇するには時間がかかりそうだが将来性が見込める銘柄、株価が割安に放置されていて配当利回りが高い銘柄などが、NISAに向いています。
反対に、旬のテーマに乗って売買が活発な銘柄や、注目されて値動きが激しくなっているような銘柄は、NISAに向いていません。
なぜなら、短期間で大きく値上がりすればいったん売却して利益を確定し、次に備えることで投資効率が上がるのですが、この場合はNISAの枠に余力がない限り次の利用ができないし、逆に値下がりしてしばらく回復の見込みがないと判断するなら一度損切りしてリセットするのがベターなのですが、この場合は損益通算ができないからです。
さらに、NISAのメリット・デメリットを意識するあまり、せっかくの売却の好機を逃しては本末転倒です。その意味でも中長期を視野に落ち着いて投資できる銘柄を選びたいところです。
NISA向きの投資信託
投資信託では、5年間非課税で受け取れる分配金の多寡が一つの基準にはなります。ただし、投資信託の分配金は、株式の配当金に対する税制と異なり、分配金支払後の基準価額が個別元本を下回る部分は、分配金そのものが元本払戻金(特別分配金)として非課税になるため、NISAのメリットが失われてしまいます。
たとえば、1万円で購入した投資信託で500円の分配金が支払われた直後の基準価額が9,500円だった場合、特定口座などの課税口座であっても500円は元本払戻金(特別分配金)として課税されません。
また、分配型の投資信託は長期で保有しても分配金が支払われた分だけ元本が目減りするので、むしろ分配金が支払われないタイプで、ファンドの運用先が幅広く安定感のあるものにじっくりと投資するほうが、NISAには向いています。NISAの枠を一部積立型投資信託で利用してゆっくり資産形成する方法も効果があります。
このようにNISAを最大限に活用するには、損益通算ができないこと、途中売却した場合に売却部分の枠での再利用ができないこと、株式の配当金と投資信託の分配金との税制の違いなどを念頭に置き、5年間という非課税期間を十分に活かせる投資先を選ぶことが大切です。